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【中途書評】はじめてのアメリカ音楽史

【過去の投稿です】


https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480071934/


ジェームス・M・バーダマン、里中哲彦両氏による対談形式の著書『はじめてのアメリカ音楽史』<ちくま新書>。完読はしていないが、アメリカの歴史と音楽の成り立ちを細かく説明してあり興味深い。


「ミンストレル・ショウ」で演じられていた"ジム・クロウ"に話が及んだ章。後に人種差別を公然の事実にした悪しき体制の総称でもある"ジム・クロウ"は、白人が顔を黒く塗り黒人を侮蔑した言動で話題を呼んだキャラクターが元となる。今年のグラミー賞を受賞したMV「ディス・イズ・アメリカ」でチャイルディッシュ・ガンビーノが、滑稽とも取れる表情や動きを見せているのが"ジム・クロウ"を模したものだとバーダマン氏が指摘する。あの時代から何も変わっちゃいないんだという表現だろうか。

「ミンストレル・ショウ」自体も、黒人の役者が後に登場し、顔を黒塗りにする。「差別する側が作り出したキャラクターを、差別される側が演じる事で差別の非公正さ・醜悪さを浮き彫りにする」姿勢が見える。エンターテインメントの隠れ蓑を、うわ手のエンターテインメントではがす。チャイルディッシュ・ガンビーノの熱演まで続く歴史でもある。

人種差別が間違った考えだという事は我々日本人にも判るが、体感には至らない。しかし、本書で「ミンストレル・ショウ」から「ディス・イズ・アメリカ」まで丁寧に説明されると理論的に腑に落ちる。すると、何年か前にダウンタウンの浜ちゃんが顔を黒塗りにして笑いを取ろうとした事の過ちが理解できるのだ。

事はアメリカに限った話ではない。地域性や歴史の問題もあるだろうが、人種差別に疑いを持たない連中は即ち人間性を喪失していると思う。自分の娘を虐待死させて、普通に生活を送っているヤツや、バイクを車で撥ねながら得意げにしているヤツなど日本にも人間性を喪失している輩がいる。"ジム・クロウ"は人間の醜さを露呈した存在であり、必ずしも昔話ではないのだ。

Childish Gambino - This Is America


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