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夜の街、新宿編


夜の街、新宿に繰り出した
私が食事をするにはなかなか珍しい街だ
5年ぶりに再会する友達に誘われて
1ヶ月前に日にちを決めた
原稿提出の日で
無事に人生初の習作小説を書き上げた
出来不出来はどうあれ
原稿用紙60枚の物語を書ききれたのは
達成感で満たされたし、これで
「生涯で小説を書いたことがある」
というセリフを言えるようになった

おかげで個人的には祝い酒と称し
新宿が生息地の古い友人に
新宿を紹介された
最初に連れられたのは足を踏み入れたことのない
歌舞伎町のど真ん中の横丁にある
山小屋のような佇まいの焼き鳥屋だった

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「たった一人の女性を守れないならば日本を変えること」
誰かが書いた古ぼけた標語が
なかなか良かった
新宿にもこんな場所があったんだな

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そしてびっくりするほど美味しい
銀座や麻布の焼き鳥屋など
相手にならないほど美味しかった

友人は写真家だ
私が小説家を目指していると聞き
誘ってくれたのだ
紹介したい人がいるという
紹介されたのは
建築史学の研究者だった
写真家の彼が建築史学の研究者を
小説家の卵の私に紹介したいと思ったのは
分野は違えど文章の創作者として
共通項が見えたのだそうだ
偶然3人とも東京生まれだった

3人で新宿の街を歩く
2軒目は「筆談BAR」ということで
たくさんのノートが
カウンターに置かれている
立ち飲み屋だった

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このお店で隣り合わせた
酷く酔った若い男性に
筆談ではなく急に話しかけられた
「僕、『はいじん』なんですよ」
私は「え?」と返す
脳内で完全に「廃人」と表記していた
よくよく聞くと「俳人」だった
人を見た目で判断してはいけない
筆談で話しかけてくれたら良かったのに

彼は自作のいくつかの俳句を見せてくれたが
学のない私には
全くわからなかった
横をみると
日本最高学府出身の建築史学の新たな友人も
全くわからなそうな顔をしていたので
安心した
筆談BARなのに
筆を取るのがめんどくさくて
結局、普通に話していた

3軒目は女優の女の子が店長をしている
BARで画家の個展を兼ねていた
運良く福島に住んでいるというその画家が
在廊しており
一緒にお酒を酌み交わした
お店を出るときに
その画家が手にしていた
古い文庫本が目にとまった
小林秀雄訳の海外小説だった
帰りしなだったためか
その画家は本に興味を示した私に
あるページを破ってくれた

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結局、誰の作品かわからなかったが
目の前で本のページを破ってしまう感じが
悪くなかった
きっとその画家のお気に入りのページの
小林秀雄が訳した少しの文章を貰った

写真家の友人と焼き鳥を食べ
建築史学の学者と筆談BARに行き
俳人から俳句を聞き
画家から小林秀雄訳の本の1ページを貰った

新宿ってこんな街だったっけ
最後に行ったBARは
音楽家の店だった

若い頃過ごしていた
下北沢の雰囲気に似ているが
やはりもっと大人な街で
吉祥寺とも違うけど
創作者が集う街だった

写真家の友人は
創作者や表現者の熱という
一面を持つ
この街を紹介してくれたのだ

この年になって
前回初めていった新宿2丁目も
初体験だったが
まだまだ知らない新宿を見た気がした
ゴールデン街まで辿り着けなかったのが
心残りだった
お店を出るとしっかり朝だった
こんな深酒をしたのも久しぶりで
今日はやっぱり酷い2日酔いだが
楽しかった思い出しかない
私には新宿の水が合った

残念ながら私にとって合わないのが西麻布
この街は好きなお店もたくさんあるのに
最後はいつも悪い酒になり
悪い思い出になってしまうという
負の巡り合わせなのだ

新宿との縁が出来ていく
悪くない時節だった

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写真家の友人が隠し撮りしてた私の写真
隠し撮りさえも
さすがプロな切り取り方
いつか写真撮ってもらおう

↓新宿2丁目デビューの記事




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