読書感想文【国境の向こう側】グレアム・グリーン
グレアムグリーンの短編集
16編もの作品が編集されています
表題にもなっている
【国境の向こう側】という作品は
この短編集の最後に収録されていますが
2013年にこの短編集が発行された時の
本邦初翻訳作品であります
しかも未完(理由は色々あるよねー)
早川書房グッジョブ!
早川書房万歳!
読書をしていると
続きが気になって
一気に読んでしまいたくなる本と
終わって欲しくなくて
わざと読み進められない本と
2種類あると思うのです
(つまらなくて進まない本は時節ではない)
グレアムグリーンの作品はいつも後者
途中で何度も本を閉じてしまいます
ため息をついたり考えたり
もう一度読んだり
全然進まないし終わりたくない本
毎日の鞄の中にずっといれておきたい短編集
常に読んでいたい作品でした
グレアムグリーン 【国境の向こう側】 早川書房
移りゆく世界と人々の心情に向けられたイギリスの巨匠の冷静な視線を味わえる傑作短編集。
<感想>
ヨーロッパ文学ではフランス文学を好む私ですが
その理由は好きな作家の数が多いという点で
フランス文学が好きなのです
だがしかし
海外の作家の中で誰が1番タイプかと言われれば
グレアムグリーンかもしれない。
だからといってイギリス文学が1位だわ!
とならないのは
他のイギリス人の作家を知らないからです
何が言いたいのかと言いますと
とにかく私はグリーンが好きなのです
どの作品も本当に素晴らしい
さらにこの短編集では全ての作品の前置きに
それぞれの訳者の見解が掲載されています
訳者の短くまとめられた解釈は
作品を読む手助けになりました
この短編集の中で特に好みだったいくつかを
ご紹介しようと思います
【最後の言葉】人と交わらず孤独に暮らしていた老人が、ある日最高権力者である将軍に呼び出されて戸惑う様子を淡々と描いた作品。
これはもう圧巻
何を食べればこんな物語が書けるのか
未来都市におけるスパイもののような始まりに
老人は一体何者なのか
どこに向かうのか
ミステリのように読み進めると
最後は世界統一戦争の収束のような話で
信仰とは何かで終わる
これが短編ですよ、奥さん
【エッフェル塔を盗んだ男】
これは比喩でもなんでもなく、エッフェル塔を物理的に盗んで元に戻すまでの話
簡単に内容を要約しましたが
凄くないですか??
「エッフェル塔を盗む」
ここにはある男のエッフェル塔に対する愛情が溢れている
別に細かい描写があるわけではないんです
大まかに時系列もずれていない
細かいツッコミなど野暮
というかそんな思いも起こらない
こんな小説の書き方もあるんだと
ため息のでる作品
【国境の向こう側】4人の男の人生が順番に登場する作品。
どの人生も続きがとても気になる話になっているのに
残念ながらまさかの未完作品のため
全員どうなったのか最後まで全然わからない。
本当に途中すぎて想像すら難しい
しかし、いつかこの作品の続きを書いてみる!
ってイベントを一人でやろうと決意しました
最後に刺さったセリフをいくつか残して終わります
・ある日の夕方、彼女は忌々しいことを言った。あなたをたまに愛するのはかまわないけど、財力も影響力もない人だから、夫とするには物足りないわ。
(「不当な理由による殺人」)
・だが始まって五分と経たないうちに文学批評の場になって、若気の至りの大胆さで大物作家をこき下ろし、いまだ名の売れていない作家のことは過剰評価するのであった。
(「モランとの夜」)
・小説は言葉と登場人物とでできている。言葉が適切に選ばれているか、登場人物が生きているかということだけが問題なのだ。その余がすべてゴシップに属する。君たちは三文記者になるために授業を受けるわけじゃないだろう?
(「モランとの夜」)
いつか、グリーンの全集欲しいと思いました!
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