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読書感想文〜舟を編む〜

とても大好きな作品
再読本ですが
2020読んだベスト9に入れたいレベル
小説家を目指している人には
本当に勉強になる作品
物語の構成から視点の推移
クライマックスの手紙戦法
素晴らしい
昨日の記事で書いたように
ただ読むだけではなく
こうして読み解く「写し」でインプットしたので
さらに色々解体できました↓

三浦しをん 「舟を編む」 光文社文庫

<あらすじ>

出版社の営業部員・馬締(まじめ)光也は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部み引き抜かれた。新しい辞書『大渡海』の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。定年間近のベテラン編集者の荒木、日本語研究に人生を捧げる老学者の松本先生、辞書づくりに情熱を持ち始める同僚たち。そして馬締がついに出会った運命の女性。不器用な人々の思いが胸を打つ本屋大賞受賞作。

<感想>

何度読んでも良いものは良い
人生において『辞書』の成り立ちなど
考えた事もなかった
小説は色んな人生を垣間見ることができる
たまたま手にしたこの小説で
世の中の『辞書』は出版社で作られていることを
改めて知り、考える
もちろんその「辞書づくり」の細かい過程なども
知らない手順ばかりで読んでいて面白い
さらに著者はこの物語の会話の中で
他国の辞書の成り立ちを
サラッと乗せている部分がある

「まじめさん。『オックスフォード英語大辞典』や『康熙字典』を例に挙げるまでもなく、海外では自国語の辞書を、国王の勅許で設立された大学や、ときの権力者が主導して編纂することが多いです。つまり、編纂に公のお金が投入される」

この後に
「なぜ日本は公金が投入されないのか」

「公金が投入されれば、内容に口出しされる」

「国家の威信をかけるからこそ権威づけの道具として利用される」
といった出版社辞書編集部員とのやりとりが続き
次のように締められる

「言葉とは、言葉を扱う辞書とは、個人と権力、内的自由と公的支配のはざまという、常に危うい場所に存在する」
「ですから、たとえ資金に乏しくとも、国家ではなく出版社が、私人であるあなたやわたしが、こつこつと辞書を編纂する現状に誇りを持とう。半生という言葉ではたりない年月、辞書づくりに取り組んできましたが、いま改めてそう思うのです」

泣いてまうやろー!
「辞書」の成り立ちを知るだけで
その国の政策意図や民主性まで
知る事ができる
生き物である「言葉」の一瞬を捉えて
今を生きる時代の「辞書」という作品に
長い時間をかけて収録していく
業界では辞書は「編む」と
表現されているのも良い!

なんでもそうだけど
「モノ」には全て制作している人がいて
その工程や歴史を説明しながら
与えられたら素晴らしい人生になる

世の中、本当に様々な仕事がある
その全てを10代の時に勉強できる
授業があったら良かったなと思う
中学の授業で「職業」のコマを作るべきだ

「辞書」を作るという話に
色々なテーマと
小説の基礎基本のテクニックが詰まっている
三浦しをん恐るべし
そしてこの作品をまだ読まれてない方は
ぜひとも読んで頂きたい
日本人として日本語を大事にするという
根本的な理由が
この作品にはあるのです




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