励ましてもらった/BUMP OF CHICKEN『Stage of the ground』
こんにちは!
此島このもです。
今回は私を励ましてくれた曲を個人的な吹奏楽の部活動の思い出とともに紹介します。
目標や夢があるけれど自分の力不足が悔しくてつらくて情けない。そんな人を励ましてくれる曲
それがBUMP OF CHICKEN(バンプオブチキン)の『Stage of the ground』(ステージオブザグラウンド)です。
絶望と出会えたら
この曲に励まされたことを書くためには、まず私の当時の状況を説明する必要があります。
私は高校生で吹奏楽部に入っていました。
部員全員が高校から楽器を始めた生徒でした。楽器の経験どころか楽譜も読めない子が大半でした。私の住んでいた地域では小中学校に吹奏楽部のある学校がなかったからです。他地域からわざわざこの高校に進学してくる人もいません。
吹奏楽未経験の方にはわからないかもしれませんが、「部員全員が高校から楽器を始めた」が意味するところはつまり「下手くそ」です。
的確な練習をかなりの量こなさなければ追いつくことはできません。
(なのでこれを読んで「うちの部はみんな高校からだけど全然下手じゃねーし!」と思った方は相当な練習を積まれているのだと思います。すごいです)
吹奏楽には奇跡も運もなく、普段の練習が演奏に現れるだけだ(と私は思っている)からです。
顧問の先生は部活動に熱心で、休日を返上して私たちの指導をしてくださいました。
私たちも友達と一緒に演奏できることが楽しくて、そして少しでも上手くなりたくて、毎日練習していました。
2年生の冬まではそれで良かったです。
夏のコンクールの結果は決してよくはありませんでしたが、私たちはついこのあいだ楽器を始めたばかり。順当だと思いました。
問題は冬です。
冬にはソロとアンサンブルのコンテストがあります。
私たちは選抜試験を受け、私がソロコンテストに出場することが決まりました。
選ばれたのは嬉しかったですが不安が大きかったです。
だって同じコンテストに出場する他校の生徒は昔から楽器を演奏してきている人ばかり。夏のコンクールで私たちより下手な演奏をしていた学校があったでしょうか?
どう考えても格上の相手と同じ舞台で演奏しなければなりません。それも一人で。
私はスイスイ飛ぶように演奏の高みへ登ることなどとてもできない、一歩一歩踏みしめて歩いていくしかできない飛べない君でした。
せっかく選抜試験で選ばれたというのに、喜びのあとに大きな不安に襲われました。
私に立派な演奏ができるんだろうか?
でも逃げたり目を背けている暇はありませんでした。
選抜試験に落ちてコンテストに出られない友達が、出たかったと泣いていたからです。
私は自分が代表であることを強く自覚しました。
私たちの吹奏楽部の代表として出場するからには、今から練習して出来うる限り最高の演奏をするしかないと思いました。
そのためには自分が下手くそだという絶望から目を逸らさず受け入れることが必要です。私は絶望と手を繋ぎました。そうやって自分の下手さから目を逸らさずに分析するとわかってくることがあります。
息継ぎのとき音が乱れるとか一回ミスすると演奏をやめてしまう癖があるとか、そもそも音質が汚いとか。
私はわかった弱点一つ一つに対策を立てて練習することにしました。
つまずいた小石を丁寧に拾って歩くことにしたんです。
歩いていくその姿が正しいんだ
毎日可能な限り音楽室に通い練習をしました。
それでも、家に帰ると不安になります。
私は引っ込み思案で人見知りで、何より自分の力を信じていませんでした。
私にやれるんだろうか。部活の代表として誇れるような演奏ができるんだろうか。
演奏予定の曲は毎日何回も楽譜を見ながらCDを聴きました。
指導者の方針によってはあまり音源を聴かないこともあるようですね。似た演奏になってしまうからと。
私たちの先生はCDを聴き込めとよく言っていました。元が下手くそなのでCDを聴いただけで似せられるなら大歓迎だったのでしょう。
先生のその方針が結果的に私にイメージトレーニングをさせることに繋がっていたのだと思います。当時はイメージトレーニングの重要性は知りませんでしたが、何回も聞き込むことが私の力になりました。
そんな無意識のイメージトレーニングを終え、CDプレイヤーの電源を落とす前に必ず再生する曲がありました。
それがBUMP OF CHICKENの『Stage of the ground』です。
この歌詞に何度勇気づけられたでしょうか。
私は毎日練習して一歩一歩あるいている。だから正しい。これでいいんだ。
不安に負けそうになる心をそうやって奮い立たせました。
ここまで来たんだよ
本番当日が来ました。
心の底から立ちのぼる緊張が熱い炎のように私の平常心を舐めてきます。
でもここまで何日も練習してきたものを緊張で台無しにすることは絶対に絶対にしたくありませんでした。
私の足にはコンテストに出たくても出られなかった友達の祈りが託されています。
今の自分に出来うる最高の演奏をして、ここまで来たんだよって胸を張りたかった。
弱小吹奏楽部だけど、つまずいた小石を集めながら歩いてここまで来た。
そうすれば決して届かない月のように遠い場所にいる他出場者すら私を引き立てる照明になる。
本気でそう思っていたわけではありませんが、それくらいの気持ちで舞台に臨みました。
だって舞台に出ている間はどんなに下手だとしても私が主役なんです。
主役が私は下手だしと背中を丸めて謙虚を通り越して卑屈に振る舞う必要がどこにあるのでしょうか。
私が主役ならば演奏の腕は関係ありません。
上手くても下手でも、自分にできる最高の演奏をするだけです。
舞台上の私にできることはあとは胸を張って声を絞るだけ。
ここにいるよ。ここまで来たんだよ。
演奏は、失敗もしましたが一曲吹き通すことができました。
あれは当時の自分にできる最高の演奏だったと思っています。
卒業した先輩が見に来てくれていて「すごく成長した。こんな演奏ができるような子じゃなかった」と言っていたと人づてに聞きました。
それが何より嬉しくていまだに覚えています。
そして今も、『Stage of the ground』の星が輝く夜空のようなイントロ(あの特徴的なメロディは360度広がる星々のきらめきだと思っています)を聞くと勇気が湧いてきます。飛べなくても胸を張って舞台に立つ勇気です。
BUMP OF CHICKENはこんなふうに、思うように飛べなくて絶望と出会うしかなかった人、挫折した人、大切なものを失った人が共感できるような曲をたくさん出しています。
だから私はBUMP OF CHICKENが大好きです。
↑このアルバムに入ってるよ!