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出し巻き卵の布団で寝たい


居酒屋に行きたい。

このご時世、なかなか足が運べないことに溜息が出る。
私は今、居酒屋に行きたくて仕方がないのだ。


言っておくが私はお酒を呑まない。
私の目当てはお酒を呑むことで無ければ騒ぐ事でも無く、美味しいご飯をたくさん食べることだ。
酒豪の方からすれば「居酒屋で酒を呑まないなんて!」という意見が飛んでくるかもしれないけれど、お酒が苦手でも居酒屋を愛している気持ちは同じだと伝えたい。
私は居酒屋に、ご飯を食べに行っているのだ…!


そもそも私が居酒屋の魅力を知ったのは、大学時代のことである。
お酒に興味が無い私には、足を踏み入れる気にもならない遠い存在だった居酒屋。
「居酒屋に行こうよ」と言ったのは、これまたお酒を全く呑まない友達だった。

私が頭に疑問符を浮かべていると、彼女もまた疑問符で打ち返してきた。
「居酒屋の良さを…知らない…??」

彼女は私の腕を引っ張る勢いで、
お世辞にもオシャレとは言えない大衆居酒屋に私を投げ入れた。

彼女は机にメニュー表を広げて、
私に見せつけた。

「居酒屋というものは、こんなにたくさんの種類の料理が食べられるのだ。
イタリアンでもラーメンでもハンバーグの口でも無いときは、迷わず居酒屋に行くべきなのだ」

実際はこんなにバカボンみたいな口調では無かったけれど、こんな感じのニュアンスで熱く語られたことは覚えている。

彼女の言い分に間違いなかった。
安く少しずつ沢山の料理が食べられる店。
しかも大衆居酒屋は私たちの味覚に寄った、
家庭に近い味が多いと来たものだ。

有難い事に、お酒が飲めなくても大丈夫な居酒屋は結構ある。

大学生の私は勿論コスパ重視のチェーン居酒屋を選ぶことも多かったけれど、
そういう所はポテトとか唐揚げとか、ヘビーでヤングな食べ物がメインを張っている。
本当に好きなのは優しい味を提供してくれる、オシャレよりも居心地重視の狭くて騒がしい居酒屋だった。

当時は大阪に居たので、
そんな雰囲気でも気軽に入りやすい店がわんさかあった。
調子が良い時はお酒を頼むこともあったけど、
ジュースだけ飲む時の方が多かった。
シラフか、ほぼシラフのどちらかでしかない私たちは、酔っ払いが騒いでるすぐ近くで、小さな小さな恋話をしていた。
時には立ち飲み居酒屋に入り、お酒を一杯だけ頼んでおでんを食べたこともあった。
そのお酒というのが電気ブランというもので、
当時森見登美彦の作品が好きすぎてわざわざ呑みに行ったのだけれど、お酒が苦手な私には良さが分からず、飲み切るのに苦労した思い出がある。
それもまた良い思い出。
それを肴に、ご飯何杯でもいけちゃう。
居酒屋じゃなくて居肴屋だったらいいのに。
そうすればお酒を呑まない私も、もっと気軽に足を運べるのになと思う。


ご時世もありあんなに好きだった居酒屋に、もう久しく行けていない。
外食が難しい昨今でご飯を作るのが面倒な時、
行けるお店は随分と限られる。
コンビニ、牛丼。
仕事終わりならこの二択だ。
誰かが作ったご飯が恋しくなる。
そういう気分の時、気軽に外食出来ないのは結構辛い。


私は今、新しい土地で新しい居酒屋を探すことを、小さな目標に掲げている。
狭くて騒がしいけれど、気軽に寄れる場所。

夫婦でやっているような小さな居酒屋で、
美味しい出し巻き卵が食べたいなぁ。



※居酒屋の中には「食事より酒を呑んでくれ!」という主義のお店もありますので、食事を楽しむ場合はご注意遊ばせ!

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