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見返したくない写真があるので

成人式に写真を撮った人、今は割と多いのだろうか。
当時の私は写真で思い出を残すことについて、どうでも良いと思っていた。

本当は成人の日にエッセイを書こうと思っていたのだが、
なんやかんやタイミングを逃し、下書きとして熟成してしまっていたので
ちょっと思い出話として、『写真』について書こうと思う。

私は断然、成人式を適当にやり過ごした側の人間である。
行かないという選択肢も無いけど、これといって楽しみでも無い。
記念に参加するだけするか、という気持ちだったので、いわゆる前撮り撮影も当日の式前に行った。

怠惰の権化なので美容院の予約もギリギリにおこない、
当日は5時だとか6時とか、とにかく朝が激!早かったのを覚えている。
折角前撮りも行うということで、化粧を当時碌にしていなかった私は
親の意向もあって美容院に全てをお願いすることにした。

美容師さんは凄い。
朝早くからテキパキと着付けをおこない、ヘアセットもおこない、また次の着付けをおこなっていた。

そういえば余談だが、
中学くらいの頃に担当してくれていた美容師さんがめちゃくちゃ男前だった。
彼はいつしか転勤してしまい残念に思っていたのだが、
成人式にたまたまヘルプで来ていて再会したのを思い出した。
本当にどうでも良い話である。
多分、今記事にしていなかったら二度と思い出さなかった。

まあそんなことはさておき、
私もぐるぐると帯を締めせかせかとヘアセットをして貰えたのは良かったが、
化粧をしてくれた美容師さんがまあまあ上の世代の人で
「写真撮るなら濃いめにしておいた方が良いよ!」と言いながらコテコテに化粧をされてしまったのだった。
その時は抽象的に「なんか嫌だなあ」と思ったが、今だったら絶対に断っていた。
成人式にも友達に「化粧濃すぎん??」と言われた覚えがある。
童顔なのに、不自然に濃い化粧が似合うはずなかった。
当時はプロに任せておけば大丈夫だと思っていたのだ。
好みや不信感は面に出すべきだった。

結果、私はまるで七五三のように
おませな化粧で写真を撮ってもらった。
いまだにそのアルバムを開かずにいる。

ところでもうひとつ、
成人式に並ぶ着物関連のイベントは大学の卒業式だと思うが、
大学の卒業式に撮ったスタジオ写真がこれまたブスである。
どれくらいブスかというと、公開してみんなに笑ってもらわないと採算が取れないくらいのブスだ。

あれは化粧とかメイクとかそういうせいじゃない。
今回に限っては、自分の顔の素質を卑下しているわけでもない。
緊張と、カメラマンの腕だと思う。
笑顔は引き攣っているし、めちゃくちゃ二重顎だった。

卒業式の写真も大学の着付けプランで流れ作業的な撮影だったので、
今思えば仕方がない。

それで終われば良かったのだが、奇しくも私はその後ブライダルの仕事に就き、
今はお客様の思い出を残す為に日々働いている。
あのスタジオ写真はダメだった。
流れ作業的な人数を撮る必要があっても、
ちょっと顎を引いて肩も引いて、せめて二重顎くらいは見せずに撮るべきだった。
幾ら私でも、まだ可愛い20代前半だったのだ。
貰ったアルバムが二重顎だったらショックに決まっているだろ。

私たちの仕事では、皆が美しくかっこよくその日を過ごせるように、そしてその姿が思い出に残るように日々努めている。
思い出に残せることって素敵だ。
そのイベントが終わった後もアルバムを開いて「この時の私、良いじゃん」って思えることは本望だ。

正直、成人式や卒業式の写真を蔑ろにしてしまったことを後悔している。
私みたいに適当に写真を撮って、結局見返す気にもならないのは非常に残念である。

あの時に熱意がなかったのだから仕方がない。
だけど私は『今』興味が無いことしか考えていなかったのだ。
撮っていて後悔すれば捨てるなり燃やすなり出来るけど、
撮っていないものはどうにも出来ないんだよ。

しかも今の成人式や卒業式の写真、
スタジオだけでなくてロケーションも出来るらしい。
今撮るんだったら絶対に楽しい。ノリノリでやりたい。

勿論、中には自分の写真が嫌いで絶対に撮りたくない人もいるだろう。
今の仕事をしていても、そういう人は一定数いる。
その分思い出以外にお金を掛ける。
それも選択肢だ。

しかし悩んでいる人がいるなら、一旦撮っておいて欲しい。
出来る限りの範囲で良いので、妥協もして欲しくない。
あの頃の自分が、いつか人生の自信に繋がったら最高だと思うし、
あの頃に戻りたいなあと思った時、
その写真を見ることでしか、戻れない時もある。

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