急遽餃子パーティー
突然町中華を食べたくなり、友人を誘って行くことにした。
そもそも町中華ってどこからが町中華なんだ?と思ったら、
明確な定義はなく、強いていえば、『昔から続いている町の中華料理店』『個人営業やのれん分けでやっている店』であるが、店によっても味は異なるらしい。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/町中華
『町中華』という響きは何故こんなに魅力的なのだろう。
安くて美味しいというのは勿論ではあるが、決して綺麗とはいえない雰囲気(偏見だが)こそが、我々が気軽に訪れやすく、また居心地良くさせているような気もする。
あまりにも高級な雰囲気だと、仕事終わりのボロボロな格好で行けないかもしれないもの。
友達を誘ったは良いものの、私たちの合流地点はいつもであればお洒落目なお店をチョイスするような少し都会であった。
そんな場所に町中華はあるのか?と思いながらも町中華しか受け付けない気持ちになっていた為血眼になって探すと、その土地に一件、町中華と呼ばれる店があることを知った。
町から離れると一件しか無いなんて、流石町中華という名前に一貫性があるなと思った。
その土地に一件しか出てこないのに、スムーズに入ることは出来るのか…?
と、心配になったものの、町中華が行列になっているのをあまり見たことが無かったので、予約もせず突撃することにした。
そのお店は結構有名且つ特徴的なので知る人ぞ知る店かもしれない。そんな店は裏道とか細路地裏にありそうなものだが、意外にも大変分かりやすい場所にあった。
一点、お店の雰囲気があまりにもノスタルジック過ぎると足を踏み入れるのに躊躇するという懸念点はあったものの、ちらほらと女性客も居てその問題をクリアした。どうしても中年男性が多くなりがちなジャンルであるに関わらずちょうど良い町中華、この時点で最高である。
わかりやすく有名な筈なのに、やっぱり並んでいなかった。
町中華の店内とは時空もしくは空間が歪んでいるのかもしれない。
人が無限に入る可能性もある。
お腹ペコペコ、略しておなぺこだった私たちは座るや否やメニュー表を開いた。
やっぱり期待を裏切らない安さに恐れ慄いた私たちだが、胃袋の許容を超えて食べたいものが多く、こんな幸せな理由で頭を悩ませることになってしまった。
とりあえず焼き餃子は決まっている。町中華に行けば焼き餃子は絶対に頼むのだ。
余談だが、私は人よりも餃子が好きな方らしい。無性に食べたくなる頻度が多く、1人でも包んで食べるくらい餃子熱がある。他の人はここまでの熱は少ないらしい、というのを大人になって知った。
あとは麺類も食べたかった。
麺類はそれ一杯でお腹いっぱいになるトラップがあるものの、今回私たちは『シェア』という強い武器を所持していた為、強気の選択でラーメンを選ぶことにした。
友人の酒と、私が頼んだ烏龍茶が届く。烏龍茶は缶のまま出てきた。
「食べ物はどうする?決めた?」
店員おばあちゃんの一言で、私たちは「まだ決めてないです」と返事をした。
店員おばあちゃん。さも特徴的な言い方をしたが、店内を見回すと店員はおばあちゃんしか居なかった。
店員おばあちゃん1.2.3といったところである。
おばあちゃんたちはそれぞれをあだ名で呼び合っていた。最高ポイント2である。
もう一品を麻婆豆腐にするか棒棒鶏にするかお互いが悩んでいたところで、私はひとつ名案を浮かべてしまった。
「今日、餃子パーティーにせんか…?」
どうやらこの店は餃子が結構有名らしく、その中でも焼き餃子・揚げ餃子・水餃子の3種類が鎮座していた。普段は焼き餃子のみ一択で頼むところだが、第3の選択肢こそが私たちの求めていた一本の道だった気がして、私たちは急遽餃子パーティーを開催することになった。
パーティーが、こんなに突然やってくるなんて、とんだサプライズである。
町中華に行ったことが無い人にひとつ注意しておきたいことがある。
安いのに結構な量でくる。
正直本当に黒字なのかも定かでは無い。
初めて行ったお店では慎重に頼むことをお勧めする。
案の定、餃子は充分すぎるボリュームで届いた。
「後でラーメン持ってくるからねぇ〜」
おばあちゃん店員2は穏やかな口調でラーメンの説明をする。遠い親戚に居た、気がする、、?という錯覚すら覚える落ち着きぶりである。
もう味は説明するほどでもなく美味しかった。ラーメンに至っては麺が美味しかった。スープが〜とかはよく聞くが、麺が感動するレベルで美味しかったのだ。
友人はでかいグラスに入った酒ロックを「これ氷もでかいから一生減らんのやけど。最高すぎる」と言いながら呑んでいた。友人は生粋の酒豪である。酒豪は酒を前にするとシラフにも関わらずIQが下がることが稀にある。
私たちは丁度良い騒がしさの中、ローラーシューズの話題に花を咲かせ(この話もいずれしたいと思っている)
全ての餃子を平らげた頃、おばあちゃん店員1が「もう食べ物はいらん?お腹いっぱいやね??」と、まるで血縁関係があるおばあちゃんかと錯覚するような心持ちで話しかけて来た。
「この辺猫おるからねぇ、猫平気?」
確かに店に入る前、外に黒猫が居て話しかけたところだったので「あ、猫好きなので大丈夫です〜」と返した。
「猫結構居るのかなぁこの辺」
など、そのまま雑談をしていたのだが、私の視界の隅に黒くて細長い影がチラついたのに気付いた。
『あ、この辺って町単位の話じゃなくて、店単位の話だ!!』
お店の入り口に先程の黒猫が座っていた。
「クロちゃんがご飯食べに来てるのよ〜」と店員おばあちゃん1が言った。
クロちゃんって名前付けてるの可愛すぎんか??
店員おばあちゃんが私たちにチュールを持って来て「あげなあげな〜」と言ってくれた。
ここ猫カフェやったか?いや、親戚の家やったか?
兎に角無類の猫好きである私たちはチュールを差し出しにクロちゃんの元へ駆け寄ったが、野良猫の賢さなのか私たちの手からはあまり食べず、店員おばあちゃん3の手からしか食べなかった。
友人が「チュール食べんのか?お姉さんが食べちゃうぞ〜〜」と言っていたのが後からジワジワきた。
話を聞くに、クロちゃんは野良猫だが三年店に通っているらしい。誰よりも常連やんか。
満腹な上に猫と戯れた私たちは幸せな気持ちのままお会計となった。
店員おばあちゃんの電卓手打ちは少し不安になるくらいテキトーだったので、私たちも固唾を飲んで見守った。
そしてやっぱり町中華は安かった。
採算取れてるか??
最後に店員おばあちゃん1が私たちのことを可愛いねぇと言いながら、ゆかりを出してくれた。
ゆかりとは、名古屋で有名なお煎餅である。
私は途中からお店のことを「良い家だ」と言い間違えるくらい馴染んでしまったし、友人もすっかりファンになったようである。
絶対にリピートしたいのでお店の名前を伏せておくが、心当たりがある人は是非一度行ってみてください。
最高です。
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