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季節とともに営むカフェ店主の夏

9月に入り、台風も過ぎ去り、秋の訪れを感じる今日。

風が時折冷たく感じ、いつの間にか空が高くなったような気がする。

日は徐々に短くなり、気がつけば外は真っ暗になっている。

夏が終わる。

そんな気持ちになり、ちょっと今年の夏を振り返ってみたくなった。

季節と暮らす、夏。

季節に寄り添って暮らせていたか。

写真とともに振り返り、次の季節に繋げていきたい思いである。

初夏の6月は、ブルーベリー農家さんの農園へ。

2つほど山を越えたところに、能生谷にある村の山を上ったところにある。

この辺りでは、6月〜7月にかけてブルーベリーが旬を迎える。

今思うと、見ず知らずの自分をよく家に上げ、農園に通してくれたなと感謝しかない。

僕にとって仕入れは、ただモノを仕入れるだけの作業ではない。

農家さんと心を通わせる、人と人としてのお付き合いがある。

モノの良さ以上に人の良さ。

それは品質を蔑ろにしたり、軽視したりしているというわけではない。

むしろ品質を大事にするからこそ、その作り手である "人" が大事だと思っている。

その人の思想や価値観、世界観が暮らしに表れ、そして農作物の育て方、ひいては品質に表れる。

愛情を持たない親が育てた子は、捻くれる。

それは、農作物であっても、作品であっても、サービスであっても一緒だと思う。

だから、このときも仕入れにあたって、ブルーベリー農家さんに会いにいくことはマストだった。

今後もそのスタンスは変わらない。

旬のブルーベリーは、バスクチーズケーキ、クリームソーダ、かき氷になった。

かき氷は紙面の都合上、割愛する。

嘘だ。

noteにフィジカル的な制限のある紙面なんてものは存在しない。

単純にフォルダを探すのが面倒だっただけだ。

7月はスイカだ。

スイカは、とくにメニューにはなっていない。

ただただおいしく頂いた。

やっぱりこの爽やかな夏空には、スイカの赤が似つかわしい。

何だか子供の頃にあった、3Dメガネみたいな配色だ。

ちなみに、メニュー化を試みた足跡を。

本当は季節限定のかき氷にしようと思ったのだが、なかなか味が決まらず断念した。

夏の風物詩、スイカ。

来年は何かしらの形でメニューに取り入れたいと思っている。

日々勉強である。

8月は、とうもろこしの季節だった。

こちらの農家さんは、山を一つ越えた谷の早川谷というところに農園を持っている。

ちなみにメインは米農家で、僕が使っているコシヒカリもこの農家さんから仕入れている。

つまり、以前から付き合いがある。

農園にも行かせて頂いたことがあるし、直営のレストランも利用させて頂いたことがある。

とにかく米がうまい。

レストランで食べた土鍋炊きのきらきらのご飯は、忘れられない。

そんな農家さんから、難題が降りかかったのが7月末だった。

「とうもろこしが余りそうだから、今野さんのところで使ってくれないか」

こういうお願い事をされると燃えてしまう。

やってやるぞという気になる。

試行錯誤ののちに生まれたのが、"焼きとうもろこしのみたらしプリン" だ。

夏野菜を使った、夏らしいアレンジにまとめた。

かなりイロモノっぽくなるんじゃないかと思ったが、お客さんの反応はとてもよかった。

「よくこんなの思いついたね」

と言われるが、農家さんからLINEをもらった瞬間に、直感がこれしかないと言っていた。

あとはビジュアルと味を詰める作業だった。

直感が形になり、誰かに共有し共感される瞬間は、何にも勝る喜びだ。

ちなみに、農家さん御一行(4人)が食べに来たときは、内心びくびくしていた。

とうもろこしの芯まで食べていただくほど気に入っていただき安堵したのは、ここだけの話だ。

(喉に詰まると危ないので芯は食べないでね。)

最後に、8月下旬。

8月下旬は、この地域ではメロンの季節だ。

お盆目掛けて主に贈答用にメロンが栽培、収穫され、市場に出回る。

そして、そこから1〜2週間追熟させると、8月下旬頃に熟れて食べ頃を迎える。

メロンの品種は、タカミメロンという。

糖度16%を超える甘さと、噛んだ瞬間にじゅわっと溢れる瑞々しさが特徴だ。

タカミメロンは、この地域の農業法人が栽培をしている。

その農業法人の社員の子(男性)と付き合いがあり、タカミメロンの仕入れに至った。

その子との出会いがなかったら、こんな美味しいメロンに出会っていなかったかもしれない。

つくづく農家さんとの繋がりは大事だなと思わされる。

タカミメロンは、メロンクリームソーダとメロンプリンになった。

余計な手は加えず、そのままフレッシュで。

ちなみに、メロンシロップに加工して、かき氷にするのも試みた。

が、やっぱり旬のメロンはそのまま生で使うのが一番おいしいという結論に至った。

素材の活かし方。

これが非常に大事である。

基本的に、僕は素材である果物や野菜のことを知ってほしいし、もっと言えば農家さんのことを知ってほしい。

だから、見た目にもこだわる。

そして、もっとも素材の良さが出る形で勝負したいと思っている。

その結果、野菜や果物そのものを買ってみよう、ということになれば僕の目論みは成功である。

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