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第1話|自己否定だらけの私を変えたもの

※紺野うみのエッセイマガジン『心の中に6人の住人がいたので、自己分析ができた話』の第1話です。この連載は、一度購入するとシリーズで続編が読めます。単話ごとの購入も可能ですが、継続して読む場合はマガジンの購入がお得です。

無料導入編➤はじめに|私の中に誰がいる?
登場住人紹介
第1話|自己否定だらけの私を変えたもの
第2話|心の扉を開く旅の始まり
第3話|隠す者と隠される者
第4話|鉄壁の守りが崩壊したワケ
第5話|6つの扉が明かされて
第6話|住人チームコンサルティング
第7話|自分という世界の外交と内政


➤ボロボロだったあの頃

社会人になり、仕事を始めて間もない頃でした。
憧れの場所に身を置いて、憧れの人の下で働き始めた私は、めちゃめちゃ張りきってしまっていて。
等身大の自分以上に「立派な存在」でいなければ、と背伸びをしまくっていた気がします。

私は「○○でなきゃいけない」「○○であるべきだ」という自らへの強迫観念や、周囲からの期待を勝手に増幅しまくって、自分の肩だけに背負い込んでいました。
しかも「憧れ」は強くとも、本質的にはあまり向いていない世界に飛び込んでしまっていたので、そのギャップを埋めるのが大変で大変で。

自分はなんて未熟でダメな奴なんだ……ということばかり、思い知らされる毎日。
自信はどんどん無くなっていくのだけれど、そのままでいるわけにもいかないので「今の自分は駄目だから、もっとがんばらないと!」「これは成長するための、最高のスパルタ環境なんだ☆」と、空元気と思い込みによって自分を鼓舞していました。

でも、そんなに力んでいては、物事上手くいくものではありませんよね。同じ場所で3年間がんばりましたが、いま振り返ってみても、とにかく空回りばかりで辛かった思い出だらけ……。

最後の方は、自分の行く先に希望が見出せなくて、ボロボロになりながら過ごしていましたっけ。


➤自分を「客観的に知る」ということ

そんな折に、私は運よく「自分を客観的に分析してもらうキッカケ」を得ることができます。
上司の知人が紹介してくれた、臨床心理士の先生のところで「自己分析系のアセスメント(本格的な心理テストのようなもの)とカウンセリング」をやっていただくことになったんです。

そこで、数種類のテスト(有名どころで言うとロールシャッハテストとか)を行ってもらったのですが、その結果が驚くべきものでした。

自分の意識的なことを表すテストにはほぼ存在していなかった「怒り・反発」の感情が、自分の無意識的なことを表すテストでは、ものすごい数値(平均をゆうに超えるレベル)に跳ね上がっていて。

つまり、自覚していないけれど「あなた実は、内心めっちゃ怒ってて反発してますよ!」っていう結果が出てきてしまったわけなんです。
その結果を教えてもらっても、最初は「怒り……???」とポカーン状態。

……というのも、私はその頃、自分のことを「怒りの感情がほとんどない人間だ」と本気で思っていましたからね。笑
日常的に外側(何かや誰か)に対して、怒りたくなるような気持ちを自覚することがなかったんです。

しかし、それこそが「心に壁を作り、本心を隠してしまっている」という「ひとつの証」だったのです。
結果では数値で紛れもなく「ある」となっているのに「自覚がない」ということは、まさに「認識できていない」ということの裏返し。

自分の心の中に壁を作っているので、自分自身も、その壁の中にしまい込まれた感情に気がつけなくなってしまっていたのですね。

これがどういうことかと言うと、自分で自分を納得させるために本心を誤魔化し封じ込める癖がついてしまって、ついには自分ですら「本物の感情」を自覚ができないところまで追い込まれてしまっていた、ということ。

私はその場所でがんばり続けるために、そこで生まれていた怒りの感情や反発心を、すべて「なかったこと」にしてしまっていたらしいのです。

「えっ……私ってこんなに、自分のこと解ってなかったの⁉」

そのことにやっと気がついたのをきっかけに、私はそこからカウンセリングを通じて「自分を正しく知ってゆく」ための機会を得られるようになりました。
そして臨床心理士の先生に教えていただいたこの手法こそ、私が「面白い、ものすごく役に立つ!」と感動した、心の見つめ方なのです。

「自我状態療法」——というのが正式な名称なのですが、あまり耳慣れないですよね。
それもそのはず、まだこの療法は日本において、そこまで浸透していないものらしいのです。
心理学の知識なんてさらさらなかった私ですから、類に漏れずその時に初めて、そういうものの存在を知りました。

基本は「トラウマ治療」などに用いられる「療法」なのですが、これは自分の心の中を客観的に見つめなければならなかった私にとっては、本当にぴったりだったんです!
簡単に説明すると、自分の心の無意識下にある「本音」を知るために、「内なる自分に会いに行く」感覚で、催眠状態のような形で心の中を探っていくという手法でした。


➤「心の中」に降りる

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