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第4話|鉄壁の守りが崩壊したワケ

※紺野うみのエッセイマガジン『心の中に6人の住人がいたので、自己分析ができた話』の第4話です。この連載は、一度購入するとシリーズで続編が読めます。単話ごとの購入も可能ですが、継続して読む場合はマガジンの購入がお得です。

無料導入編➤はじめに|私の中に誰がいる?
登場住人紹介
第1話|自己否定だらけの私を変えたもの
第2話|心の扉を開く旅の始まり
第3話|隠す者と隠される者
第4話|鉄壁の守りが崩壊したワケ
第5話|6つの扉が明かされて
第6話|住人チームコンサルティング
第7話|自分という世界の外交と内政


➤八方美人の代償

それからというもの、私は日常過ごしているときも、ふとした瞬間に自分が今まさに「委員長」として気を張っている……と気がつくようになります。
これは、まさしく「客観視」のはじまりでした。

私の場合、その臨戦態勢のような状態がいつしか通常モードになってしまって、それが「普通の状態」だと勘違いしていたのです。

いつでも笑顔でいることは自分の取柄だとばかり思っていたのですが、委員長として「八方美人」のために出し続けなくてはならないとなると「消耗」してしまうらしく、人と関わることに対してひどく疲れている自分がいました。

人と話しながら笑っている瞬間に、頭のどこかで別の冷静な自分が「あ、今私心から笑ってないな……」などと、余計なことを考えてしまって。笑
これを自覚してしまうと、なおさら寂しくて辛いものがありますよね。

とにかく相手の顔色を必死に見て、何が相手を喜ばせるのか、嫌がらせるのか……それに合わせて自分をコントロールし続ける日々。
素直な自分を出そうだなんて、少しも考えることができませんでした。

それでも私は、その時の職場や憧れの上司から、どうしても離れることができなかったのです。

「これは乗り越えなければいけない壁なんだ!」
「耐え抜いた先に、拓ける道があるに違いない!」

そんな風に言い聞かせて、踏ん張っていました。
他の選択肢を考えること自体できなかった、とも言えるかもしれません。

人に気を遣うばかりで自分に大した自信がなかったので、生き生きと仕事に取り組めず、いつも及び腰。
とにかく周囲に「迷惑をかけないこと」にばかり専念していましたから、そんなマイナス方向の意識で、力が発揮できるわけもありませんよね。

あとから冷静に考えると、私の中ではその上司を信頼し頼りきっている自分と、その人のやり方は私の思うものと少し違うな……と「無意識」ながらも違和感を感じている自分とで、矛盾と落差が生じていったのだと思います。

そして、それは時を重ねるごとに深い溝となり、私の心に強固な壁を作り上げるまでに至ってしまったのです。

それは心の中にいる「住人」の意見の相違でもあり、そもそも私が立ち止まらざるをえなくなってしまったのは、同じ心の中にいる彼ら同士で「葛藤」が起きていたからなのでした。


➤他人の価値観に合わせる違和感

「委員長」は、絶対的に上司を信頼していました。

なにせ、彼女はずっと憧れのその人からたくさんのことを教えてもらい、地道にがんばってきましたからね……。

上司の成してきた功績や、関わる人からの感謝や称賛は数えきれないものでしたから、それを間近で眺めながら「すごいなぁ……やっていることも、考え方もすごい!」と、ただひたすら尊敬していたのです。

いつでも自分に絶対的な自信をもって、強い信念で行動している上司の背中を見ているうちに、私はごく自然に「あんな人のようになれたら」と思うようになっていました。

少なくとも委員長にとっては、上司のような考えで、上司の望んでいるように歩んでいくことが「正義」であり「正しいこと」だったのです。

ただし、私は一番当たり前で、大切なことを見落としていました……。

上司の考え方や価値観に感化されてはいたものの、自分は上司と違った人生を歩んできた、まったく別の個性を持った人間だということです。

私は上司の持っている個性を見習うことはできても、上司そのものと同じ道を進もうと考えるべきではなかったんですね。

判断の基準を、完全に自分以外の人間にゆだねてしまうことの恐ろしさは、身を持って感じました。

さて、そうやって上司の背中を必死で追いかけていく中で、私は気づかぬうちに本来押し込めるべきでない感情を閉じ込めてしまったようなのです。

それこそが、委員長が必死になって私自身から存在を隠していた「檸檬色の扉」の中にいる「アニキ」が抱えるものでした。


➤心の中の問題児!?

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