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女子サッカー/日本×北朝鮮後半を振返る/2nd.leg/パリ五輪アジア最終予選


8.後半開始

両チーム選手交代は無く後半が開始、開始早々北朝鮮の攻撃から日本は危険な場面を作られます。
特に日本の右サイドから北朝鮮の選手がペナルティエリアに長めのボールを入れると、ゴールに背を向けたままFWがボールを受けます。
FWとゴールの間には熊谷が立ちふさがっていましたが、北朝鮮のFWが素早く反転すると熊谷がバランスを崩してしまいシュートを撃たれました。
シュートは山下のほぼ正面だったためキャッチして難を逃れましたが、コースへ冷静に蹴られていたら失点していたでしょう。
北朝鮮は失点してから徐々にプレーや態度に焦りが見えるようになってきました。
シュートを止められたこの場面でも大きく声を上げて主審に何かアピールしたいのか、それとも焦りやフラストレーションで声を上げたのか分かりませんが、イライラしているように見えました。
後半の序盤を見た感じでは両チーム共にフォーメーションや戦い方に大きな変化は見られませんでしたが、点を取らないと負けてしまう北朝鮮の攻撃は、人数をかける形に変化して積極性も目立つようになっていました。
北朝鮮の猛攻を凌ぐと日本に攻撃のチャンスがやってきました。
日本は北川を中心に左サイドから攻める場面をよく作っていましたが、なかなかシュートを撃つ場面を作れずにいて、シュートを撃っても枠に飛ばすことが出来ませんでした。


9.中盤

日本リードの状況が変わらないまま後半も中盤になり、両チーム交代のカードを切り始めました。
日本は63分に上野を下げ清家を投入します。
するとすぐに得点のチャンスが訪れます。
センターサークル付近から日本が長いスルーパスを中央右寄りのラインに出すと、田中にそのボールがわたります。
田中は北朝鮮の選手2人に進路を阻まれながらも、シュートかクロスを狙ってボールを蹴ります。
しかし、北朝鮮の選手にブロックされボールが跳ね返されると、そのボールを清水が拾いクロスを上げました。
クロスはゴール前ニアに飛んで北朝鮮のGKと清家がボールに反応します。
清家とGKがほぼ同時くらいにボールに触ると接触して両者倒れました。
主審は笛を吹きGKへのファウルと判定しました。
放送局のスローリプレイを見ると清家が先にボールに触り、その後にGKに倒されたように見えたので、VARが採用されている試合なら恐らくPKの判定に変わっていたと思いますが、この試合にはVARが採用されていませんし、接触が際どくリプレイで見ないと清家が先に触ったのが分からないくらいの場面だったので、主審がGKへのファウルと判定してもしょうがないかなと思いますが、勝利へと近づく追加点のチャンスと考えれば少し残念な判定でした。
日本が先制点を取った後予想していた通り、北朝鮮が得点を奪うためラインを全体的に押し上げて攻撃していたので、北朝鮮最終ラインの背後にはスペースが生まれて、日本の長めのボールも繋がり速攻やカウンターがこの時間帯から決まりやすくなってきました。
北朝鮮がピンチを切り抜けた後66分に北朝鮮は1度に3人の選手交代をしてきました。
左ボランチの9番と6番が交代、FWワントップの7番と17番が交代、左サイドMFの12番と22番が交代しました。
北朝鮮は前線と左サイドにフレッシュな選手を入れて、運動量を上げより攻撃に出れるようにしたかったと考えられます。
しかし、すぐには選手交代の効果が出ずに日本が攻撃する時間帯が続きました。


10.追加点

北朝鮮が選手交代後に日本の攻撃する時間帯が続くと、76分に日本が追加点を取ります。
右サイドで藤野から長野へボールを下げると、長野がボールをワンタッチで右サイドに展開します。
すると右サイドを駆け上がっていた清水にエンドラインギリギリのところでボールがわたり、清水の対応に出てきた相手の左CBと一対一になりました。
清水は相手の股下からボールを通して簡単に抜くと、ペナルティエリアに侵入してクロスを上げました。
ゴール前には清家と長野にパスを出した後に足を止めず、ペナルティエリアへ走り込んでいた藤野がいました。
クロスは清家に出されていたようにも見えましたが、清家に届く前に藤野が走り込みジャンプヘッドで合わせヘディングシュートを撃つと、ゴール右サイドに突き刺さり待望の追加点を取ることに成功しました。
得点の内容をみると長野のワンタッチパスと清水のオーバーラップが、とてもいいタイミングで決まっていて連携で相手を崩したことと、清水が個で相手を抜いたことで北朝鮮の選手と日本の選手がゴール前で一時的に同数になっていたなかでチャンスを作り、北朝鮮の選手が清水へディフェンスに行くのか近くにいる選手のマークに付くのか、それともシュートブロックに入るのか迷わせたと思います。
そんな中、清水は正確なクロスを上げると長野にパスを出した後に、足を止めずにペナルティエリアに侵入しゴール前の数的同数を作り出した藤野が、最後まで足を止めなかったことでクロスに対していい形で反応することが出来て得点できました。
連携での崩し、個での打開、ペナルティエリアに侵入する意識の3点が北朝鮮の守備を崩し攻撃に厚みをもたせた要因だったと思います。
日本は76分に待望の追加点を取れたことで、より優位に試合を進めることが出来るようになったと思います。


11.失点

日本が追加点を取り勝利に近づいたと思っていた矢先、81分に北朝鮮が1点奪い返しました。
北朝鮮が日本の左サイドから攻め込むと、日本の選手が相手のボールホルダーを3人で囲み左サイドラインへ追いやります。
そこでボールを奪うことに成功した選手達の1人が左CBの南にパスしてボールを下げると、南は前線へパスかクリアのどちらを選んだのか分かりませんが前方へ蹴りました。
するとボールは低い弾道で相手の正面に飛んでしまい、北朝鮮の網に引っかかるような形でボールを奪われてしまいます。
北朝鮮の選手は自分に飛んできたボールをしっかりとトラップして受け止めると、すぐに日本最終ラインの裏へ浮き球を蹴りました。
蹴ったボールは日本ペナルティエリアの中央から左よりのところに飛んでいき、ペナルティエリアの手前中央にいた22番がいち早く反応しボールへ斜めに走り込むと、右CBの高橋が22番に並走する形でついていきました。
22番がボールに追いつくとGKの山下も相手のシュートコースを狭めるように飛び出しますが、22番は落ち着いてボールが跳ねているのを利用して浮き球でシュートしました。
すると誰もいないゴールへボールが吸い込まれて北朝鮮のゴールになりました。
この場面は、まず南の蹴ったボールが相手に直接わたったところから始まり、22番をマークする高橋の対応も少し遅れていたりディフェンスが軽い感じもありました。
そして、山下の飛び出すタイミングと簡単に倒れて浮き球だと決まりやすい形にしてしまったところに問題があったのかもしれません。
南のキックミス、高橋の対応の遅れと軽い守備、そして山下の判断と3点のミスや状況判断の遅れ、選択ミスが北朝鮮に付け入るスキを与えてしまい失点してしまいました。
もちろん北朝鮮の選手達が蹴ったボールやシュートが素晴らしかったですが、キックミスという単純なミスやディフェンダーとして激しく守備をしなくてはいけない場面だったことと、山下も相手の位置から考えてシュートを撃つ角度が厳しかったことを考えれば、飛び出す必要はなかったかもしれませんし、飛び出しても倒れ込まなければ防げる確率が上がっていたかもと考えると、追加点を取った直後の失点としてはもったいないものだったと思います。
恐らく追加点を取り気が緩みこのようなことになったのでしょう。
この得点は北朝鮮にとって見ればもう1点取れば延長戦を含め、まだ自分達にも勝つ可能性があるという可能性を残した得点になる為、 北朝鮮が勢いづくものになりました。
出来れば2点差のまま時間を進めて北朝鮮の戦意を徐々に削いで行きたかったところですが、逆に得点を許して勢いづかせてしまいました。
サッカーでは2点差が逆転される試合がよくありますが、リードしているチームの油断と気の緩みが、対戦相手に付け入るスキを与えてしまい、1点取り返されるとリードしているチームが浮足立ち逆に対戦相手は勢いづくため、その後一方的に責められ同点に追いつかれると、リードしていたチームが混乱して落ち着きがなくなり、最後には逆転されるということが結構あります。
なので、日本は勢いづく北朝鮮に対して残り時間しっかりとした守備をして、相手の勢いを跳ね返す必要があります。
簡単なことではありませんが勝つためには避けられないことです。


12.終盤の攻防

北朝鮮の得点後残り時間は9分とアディショナルタイムを残すだけとなりました。
北朝鮮は前線へロングボールを蹴りパワープレイで攻撃してきましたが、日本は最終ラインを中心にロングボールを跳ね返します。
そんな展開の中で日本の前線にボールが繋がれば、前線の選手達は北朝鮮の陣地深くに侵入してコーナーポスト付近で時間を使いました。
パワープレイとそれを跳ね返す日本の守備や時間稼ぎの中、両チーム選手交代も行いました。
87分には北朝鮮が右サイドのMF14番と11番を交代して、89分には日本が左WBの北川と古賀を交代、FWの田中と植木を交代しました。
選手交代後にアディショナルタイムが5分と発表されました。
試合展開はパワープレイとそれを跳ね返す日本の守備という流れが、その後も変わることなく続き最後まで日本が1点を守りきると、主審の試合終了を知らせる笛の音が鳴り響きました。
試合が終わると日本の控え選手達が、プレーを終えた選手達の元へ集まり、共にオリンピック出場権獲得を喜び分かち合っていました。


13.後半まとめ

日本は後半も前半同様にいいプレーを継続して、試合を優位に進められていたと感じました。
しかし、追加点を取った後すぐに自分達のミスから失点してしまったことは、今後の反省点と言えるでしょう。
あの失点がなければ終盤に北朝鮮が息を吹き返し、勢いを取り戻すこともなかったと考えれば、避けたい失点ですしオリンピックに出場するチームは北朝鮮よりも強いと考えると、同じような展開から同点にされて更に逆転される可能性も高くなります。
一瞬の油断や気の緩みが勝敗を分けることに繋がると考えると、今後は繰り返さないよう
に選手達に忘れないで欲しいプレーだったと思います。


14.試合全体のまとめ

試合に勝利したことでオリンピック出場の権利を獲得して、ロンドンオリンピック以来12年ぶりに予選からの出場を、2024年夏に果たすことになった日本代表ですが、その難しさと大変さはキャプテンである熊谷の試合後に見せた喜びと安堵の表情が、全て物語っていたと感じました。
恐らく大きなプレッシャーや責任と戦いながら試合でプレーしていたと思いますが、観ている人にそれを感じさせることもなく、チームで1番安定したプレーを見せていました。
リオデジャネイロオリンピックの予選後に常にチームの中心であり続けた熊谷は、間違いなくチームの精神的支柱であり仲間を引っ張る存在です。
いつも冷静で落ち着いた雰囲気を見せる熊谷の喜びと安堵の表情は、日本代表が1つ目標を叶えたという表情でもあり、パリオリンピックで金メダルを目指し戦えるという証でもあります。
そのためには約半年後に開催されるパリオリンピックの為に、今回機能しなかった4−3−3をもう一度鍛え直し改善する必要があります。
3−4−3が機能しているから必要ないのではと思う人もいると思いますが、そもそも去年のW杯準々決勝スウェーデン戦で3−4−3が研究されスウェーデンの形にハマってしまい、対応できなかったことから戦術や対応力に幅を持たせる為、W杯後に4−3−3の並びを使用して連携を深めてきました。
熊谷を1ボランチにおいた4−3−3は相手の出方次第では、熊谷がディフェンスラインに下がりCBの間に吸収されることと、両SBが1つ前にポジションを取ることで3−4−3にフォーメーションを変化させることが出来るので、試合中に戦い方を変化する事ができ相手の攻撃にうまく対応できないときは、並びを変えることで守りやすくする効果があります。
オリンピックで勝ち抜くためには4−3−3を完成させて、チームに幅をもたせ柔軟に戦えるチーム作りが必要不可欠でしょう。
約半年という期間が長いのか短いのか分かりませんし、オリンピックまで後何試合日本代表として試合が出来るのかもわかりませんが、選手達が目標を叶えるため精一杯チャレンジしチームを強化してほしいと思います。


終わり。

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