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女子サッカー/日本×北朝鮮前半を振返る/2nd.leg/パリ五輪アジア最終予選


1.試合前情報

2/24にサウジアラビアでおこなわれた1試合目は、0−0のスコアレスドローで試合が終わり、私としては北朝鮮優勢の展開でしたが、プレー内容が良くない日本は無失点でよく持ちこたえたと思いました。
そこから中3日の期間中に長距離移動やコンディション調整、チームとしての連携や確認をして、休む暇もなく2/28に日本ホームの2試合目が開催されました。
両チーム共に疲れや時差ボケもあるなか、1試合目を受けての反省、対策、課題をどれだけこなしてきたのかが問われる試合であり、勝てばオリンピックの出場権が獲得できて、負ければそこで終わりです。
リオデジャネイロオリンピックの予選では、前年の2015年にカナダのW杯で準優勝した後、約半年後にリオデジャネイロオリンピックのアジア最終予選で敗退したという苦い記憶があるオリンピックアジア最終予選で、12年ぶりに予選からのオリンピック出場を勝ち取ることが出来るのか、日本代表のこれまでやってきたことが試される大事な試合です。
日本中でこの2試合目がどのくらい重要な意味を持つのか、メディアで大きく取り上げられることも無かったと思うので、分かっている人は少ないと思いますが、少なくともサッカー関係者やサポーターはその重要性を知っていたはずです。
選手達はオリンピックに出場してメダルを取ることで、また以前のように女子サッカーに注目してもらいたいという気持ちがあると思いますし、リオオリンピックの予選後に女子サッカーに対する注目が薄れていった事実も見てきたと思うので、未来の女子サッカーを良くするために選手達は試合に臨んだと思います。
では、試合前の注目ポイントについて話したいと思います。
まず1試合目から選手が2人変更されました。1人目は左SBのポジションが古賀から北川になり、2人目は左FWのポジションが植木から上野になりました。
古賀は1試合目の最後の方で、足がつったのか怪我をしたのか分かりませんが、プレーが切れた後に足を痛がるような素振りを見せていたので、恐らくそれが理由で北川に変わったと思います。
植木から上野に変わったのは選手の特徴が違うことが理由にあると思います。
植木はスピードのある選手で上野はパワーのある選手なので、1試合目はセンターFWの田中にボールを預けることができず、前線でタメを作れなかったので、左で上野にタメを作る役割をしてほしかったのではないかと思います。
あと気になる点は1試合目に上手くいかなかった4−3−3で2試合目もいくのかというところが注目するポイントになります。
1試合目は北朝鮮に良く研究されていたこともあり、日本はチームとしてあまり機能していませんでした。
機能していなかったところを、では何をして良くするのかとなりますがまず選手を変えました。
選手を変えただけで終わるのか、それともフォーメーションや配置を変えて臨むのかで、相手にしてみればだいぶ違いのあることですし、北朝鮮はそれに対処する必要がでてくるので、若干のアドバンテージを得られる可能性もあり注目すべきポイントになると考えられます。
どちらにしてもチームが機能すれば問題無いですが、こればかりはやってみないとわからないことでもあります。
試合を振り返りながらどうだったのか考えてみたいと思います。


2.試合開始

試合が始まりまず最初に目についたのは日本のフォーメーションが、熊谷をCBの真ん中においた3−4−3の形だったことです。
やはり1試合目で上手くいかなかった4−3−3ではなく、W杯で機能していた3−4−3にすることで、守備のとき個々の選手が北朝鮮のどの選手をマークすればいいのか分かりやすくなりますので、守りやすくなることが考えられます。
ただ、守りやすくなるといっても対峙する相手との一対一で負けてしまうとこの作戦は機能しないので、相手と互角以上に上回る必要がありサッカーにおいて目の前の相手に勝つというのは基本的なことですが、そのシンプルで基本的なことが個々の能力を試されることになるのは間違いないでしょう。
個々の選手が相手に勝てれば守備の安定に繋がり、それが攻撃にもいい影響をもたらすのがサッカーという競技なので、この変更が重要な鍵を握っていることは間違いないと思います。
そして、攻撃面でもWBがサイドの高いポジションをとれるので、前線の3枚と合わせてより攻撃に人数をかけることができ、相手ゴール前で迫力をもたせることが出来るという狙いがあるのだと思います。
対して北朝鮮は1試合目と変わらず5−4−1のフォーメーションで試合に臨んできました。
守備のときは5−4−1にして攻撃で厚みをもたせたいときは、SBとSMFがそれぞれ1つ前にポジションを取り、3−4−3の形になることで勝たなくてはいけない試合で得点を取りに行く狙いがあるのだと思います。
そして、1試合目でも効果的だった5−4−1の状態でロングボールを使い、速攻やカウンターといった早い攻撃も展開出来るのが、個々の選手があたり負けしない北朝鮮の強みを活かせる作戦なのだと思います。
1試合目で有利に試合を進めた形でもあるので、自信を持ってこの形を継続させてきたのでしょう。
前半序盤から両チーム球際の激しさがあり、この試合にかける気持ちが全面に押し出される攻防が繰り広げられ、日本は1試合目とは違うチームかと思われるほど、1つ1つのプレーに気持ちが入っていて動きが違うのが分かりました。
両チーム攻守の切り替えが早くボールの奪い合いが繰り返されるなか、日本は中、外どちらにも縦パスが入りリズムの良いパス回しから、中央攻撃やサイド攻撃を展開して主導権を握ろうとし、北朝鮮は体の強さを生かしたプレーからボールを繋ぎ、多少遠いと思われる位置からでもロングシュートやミドルシュートを撃って、流れを呼び込もうとしている感じがわかりました。


3.序盤から中盤へ

序盤激しいボールの奪い合いから始まった試合は、中盤に差し掛かると徐々に日本の攻撃時間が長くなり主導権を取り始めました。
日本が相手のバイタルエリアまで押し込む形が多くなると、北朝鮮は最終ラインと2列目を合わせた9人で、壁を作るような状態が続き守る時間が長くなりました。
日本が最終ラインでボールを回しても、北朝鮮はそこにプレッシャーをかけることができず、ただ引いて守ることしかできないように見え、ボールを奪いに行くことができていませんでした。
この状況は守備面で見るとかなり後手の状況で、チームとしてボールの奪いどころを決められなかったのだと思います。
それでも北朝鮮は守備力の高いチームなので、日本はペナルティエリアへ侵入できず苦労していました。
北朝鮮は攻撃のときシンプルに1、2本のパスで前線にボールを繋いで速攻を仕掛けますが、熊谷を中心とした最終ラインが安定した守備を見せ危なげなくボールを奪っていました。


4.日本の先制点

日本が比較的押していましたが、両チーム共に決定機を作り出せていない状況で、北朝鮮の前線に繋ごうとしたボールをセンターサークル中央で熊谷が競り合い奪うと、日本は中央左寄りのラインから2本の縦パスを繋ぎます。
少し下がり受けに来た田中にボールがわたると、田中をマークしていた相手のCBが後ろから激しいチャージをかけてきました。
すると田中が倒れファウルになり23分日本のFKになります。
FKの距離はハーフコートの半分くらいの距離からで、位置的にはゴールを正面に見たときに中央やや左よりの場所からになりました。
直接蹴るには遠い距離のためペナルティエリアの横ライン辺りに、両チーム横並びになりゴール前での空中戦が予想される形になりました。
キッカーは右足の長谷川と左足の北川で、まず長谷川が蹴る素振りを見せボールに向かい走ると、蹴らずに通過して北川が蹴りました。
北川の蹴ったボールはペナルティエリア中央に飛んで、熊谷と北朝鮮の選手が競り合い熊谷がヘディングしますが、上手く当てることが出来ずボールはペナルティエリアの左サイドに弧を描くように飛んでいきました。
するとボールは上野に向かい飛んできて、上野がヘディングでゴール前のニアにいた田中に折り返すと、田中がバックヘッドのような形でシュートしました。
シュートはゴールの左上に向かい飛んでいき、北朝鮮のGKが手を伸ばすとなんとかボールに触れ軌道を変えますが、軌道を変えたボールはゴールバーに当たりゴール前に落ちると、足を止めずにいち早く反応した高橋が落下地点に入り、ボールに合わせるようにしっかりと足を出しゴールにパスをするような感じで押し込み25分先制点を奪いました。
これは綺麗な形での得点ではありませんでしたが、上野が向かってくるボールを判断良く田中に繋いだことと、それを苦しい体制でもシュートした田中の積極性が相手GKの予想を上回ったため、ボールを外に掻き出すことが出来ずにバーに当たり跳ね返ると、相手の選手が足を止めるなか高橋がいち早く反応し得点できました。
これは選手が自分にできることをして繋いでいったゴールだったと思いました。
2試合通じて初めての得点が日本に入り、これで北朝鮮は何としても得点を取らなくてはいけなくなりました。
今までよりも前に出てボールを奪いに来たり、ラインを押し上げて攻撃に出る必要がある為、北朝鮮の背後にスペースが生まれる可能性があり、日本は失点に気をつけながらも速攻やカウンターを仕掛けやすくなりました。
そして日本のビルドアップからの攻撃でも、北朝鮮は待ち構えていてはボールを奪えないので、ブロックを崩して奪いに来る可能性があり、攻めやすくなる確率が上がります。
先制したことで日本は有利に試合を進められるのは間違いないことだと思います。


5.中盤から終盤へ

試合再開後は北朝鮮がより激しいプレーを見せるものの、日本も落ち着いてそれに対応しチームとして良い守備ができていました。
特に熊谷が安定したプレーを見せていて相手に競り合いで負けることはほぼ無かったと思います。
そんなキャプテンである熊谷のプレー以外に、コーチングもよく声を出しまわりに指示や声かけを積極的にしていたのが印象的でした。
周りの選手も熊谷のコーチングに答えるように積極的なプレーを見せていたと思います。
試合は互いに攻守を交代しながらも、次の得点はどちらにもはいらないまま時間が進んでいき、日本はパスを回しながら攻撃を展開していきますが、追加点に繋がるような決定機は生み出せませんでした。
北朝鮮もFKやCKから日本ゴール前での空中戦や、流れの中からゴールを奪いに来ましたが得点には繋がりませんでした。


6.GKの執念

前半も終わりに差し掛かろうとしていた時間帯に、日本は北朝鮮の連続した攻撃にあいます。
その中で、44分に北朝鮮が日本の左サイドからスローインを入れると、日本の選手2人に寄せられながらもライン際から、ペナルティエリアのニアにいた選手にパスを出します。
ペナルティエリアで日本の選手を背負いながらボールを受けた北朝鮮の選手は素早く反転してボールを蹴ると、ペナルティエリア中央で待っていた選手にボールが向かっていきました。
体勢的にあまりいいボールでなかったため、中央にいた選手はヒールで無理やりシュートを撃ちました。
するとシュートは勢いがあまりありませんでしたが、GKの山下から見てゴールの右側に向かって跳ねながら転がっていきました。
山下の位置的に少し離れたコースへボールは転がっていきましたが、諦めずに反応して走り最後は飛び込んでボールを掻き出すと、味方がそのボールをクリアしました。
主審はゴールの笛を吹かなかったので、北朝鮮の選手が猛烈にゴールのアピールをしますが主審は判定を変えませんでした。
比較的長い時間北朝鮮の選手は大勢で主審にゴールを主張していましたが、主審は判定を変えること無く冷静な態度で対応していました。
この試合はVARが導入されていなかったので、映像による検証をすることは無く主審の判断が絶対です。
ゴールの有無が難しい場面ではありましたが、主審が無かったと言えばそれがこの試合の判定になるのです。
放送局のスローリプレイで見た私の判断は、ボールがラインを完全には越えていない状態で、山下が掻き出していると思いました。
ラインを完全に越えるには若干余裕すらあったように見えました。
私にはゴールが無かったことは間違いないと、判断できるスローリプレイの映像だったと思います。
日本は同点のピンチを自力で切り抜け、その後も慌てること無く落ち着いて試合を進めると、前半の終了を告げる笛の音が鳴り響きました。


7.前半のまとめ

前半の序盤から日本はプレーの内容が良く、それを45分間持続したままよく動いていたと思います。
攻守において最終ラインから前線までスリーラインの距離感が良く、選手間のサポートやパスを繋ぐ距離も良かったので、チームとして安定した試合運びが出来ていたと思いました。
それが結果で見ると攻守でゴール前のプレーにあらわれて、得点を奪い失点を防ぐ粘り強い対応に繋がったのだと思います。
前半は間違いなく日本が試合の主導権を握っていました。
内容からして後半も勝つためのいいプレーを期待させるものでしたし、間違いなく勝ってくれるだろうと思いました。

後半に続く。

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