ヘアアイロンの変
ヘアアイロン。今までわたしの人生とは無縁だったもの。
わたしは直毛で、毛量もものすごく多い。長めに伸ばしていた10代の頃、結婚式やイベントごとで髪をセットしてもらうときは、決まって美容師さん泣かせだった。
「ピンが押し戻される…!」
「髪がまっすぐすぎて、すべって結えない…!」
そんなわたしは、成人式の翌日から今日この日まで、ずっと短い髪をしている。ツーブロックにしたこともある。元来ずぼらなので、朝はぎりぎりまで寝ていたいし、ヘアセットに時間がかかるのは耐え難い。
懇意にしている美容師さんにもいつも「ワックスとか使わなくてもいい感じになるようにしてください!」とお願いしている。
ところが。この美容師さん、カットが終わると腕によりをかけてセットしてくれるのだ。ヘアアイロンやワックスを駆使しながら。
「自分じゃ絶対やらないなあ…」
と思いつつも、プロの手によるスタイリングでいつもと違う自分になるのは気持ちが良い。なので、魔が差した。ひょんなことからわたしはヘアアイロンを手に入れてしまったのだ。だが。
「え、熱くなるまで何分待てばいいの?」
「一回でどのくらい髪の毛をはさめばいいの?」
「巻き具合ってどのくらい…?」
ネットやYouTubeで調べてみるも、やっぱりよくわからない。折角手に入れたヘアアイロンもしばらく洗面台のすみっこに追いやられていた。
でも。先日、美容室に行く機会があり、思い切って担当の美容師さんに相談してみた。
「ヘアアイロン、全然うまくできないんです…」
しょんぼりする私に、美容師さんは笑いながら言った。
「大丈夫です!コンタクトだって最初は鏡見なきゃ入れられないかもしれないけど、今は鏡なくてもできるでしょう?それと一緒です!慣れますよ!」
まさに目からウロコ。そうか!コンタクトなら今のわたしはさっとできる!でも最初は悪戦苦闘していた。ヘアアイロンもいつかさっとできるようになるはず!
美容師さんは丁寧にヘアセットのやり方を教えてくれた。細かく動きをつけたい場合は、少量ずつアイロンをあてるとよいこと。アイロンは3段くらいに分けて徐々に形を作っていけばよいこと。髪の内側は、髪の途中から、外側は根元からアイロンをあてると綺麗に見えること。スプレーを根元や内側からあてることで、長時間髪型がキープできること。
そんなこんなでここ数日はひたすら練習していた。もちろん時間がないときは髪をいじらずに化粧だけで済ますのだけれど、髪も化粧もキマっていると、やはり気分が違う。ヘアアイロン、やるじゃない。仮に自分史を作るとしたら、今年の出来事にはきっと「ヘアアイロンの変」と刻まれることだろう。
ありがとうございます。いつかの帰り道に花束かポストカードでも買って帰りたいと思います。