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ネコと子ブタの文通

 私には歳の離れた姉がいる。子どものときはよくケンカしていた。小学生と高校生、中学生と大学生、高校生と社会人では、見えている世界も話の話題も噛み合わず、お互い子どもだったこともあって、なかなか分かり合えなかった。

 距離がぐんと縮まったなと思うのは、私が大学に進学してから。地元を離れ一人暮らしを始めた私に、姉はよく連絡をくれた。

「ちゃんと食べてる?」
「実家の猫たちはこんな感じだよ〜。」
「バイトがんばってね。」

 姉は時折私の家に遊びに来てくれた。二人で存分におしゃべりしたあと、姉が帰ってしまった一人暮らしの部屋は、ひどくさみしく感じたものだ。そんな私に、姉は決まって小さなサプライズを残していった。それは知らぬ間に壁に貼られたポストイットだったり、ポストに投函されていたポストカードだったりした。

「元気そうで安心したよ。また来るね。」
「一人暮らしがんばってるね。さみしくて泣くんじゃないぞ〜。」

 離れ離れに暮らすようになってから、姉と私はメールももちろんだが、よく手紙のやりとりをするようになった。例えば姉は私が帰省した後、一人暮らしの自宅に戻るタイミングに合わせて手紙が届くようにしてくれている。私は旅行するたび、旅先から姉に宛てて手紙を送っている。

 姉と私には、それぞれが好きな動物というものがある。姉は子ブタ、私はネコだ。お互い、手紙を送るときは、それぞれの動物をモチーフにしたポストカードやシールを使うことが多い。姉からの手紙は束になって私の部屋に置いてある。直近の手紙は、お守りみたいに手帳に入れて持ち歩いている。

 姉妹。親や友人には話さない(もしくは話せない?)ことも共有できる不思議な関係。最近はLINEばっかりだったけれど、また久々に直筆の手紙を送ってみようか。

 ネコと子ブタの文通はまだまだ続く。

ありがとうございます。いつかの帰り道に花束かポストカードでも買って帰りたいと思います。