2022年に出会った印象深いコンテンツたち
noteを始めてからおそらくもっとも記事更新の少なかった2022年…。とはいえ、振り返ってみると、今年もまた様々なコンテンツに救われた1年でした。備忘録もかねて、今年出会った印象深いコンテンツをご紹介したいと思います。
※2021年のコンテンツ振り返りはこちら。
■本
①『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』
これはもう、年始から最高の読書体験でした。
『枕草子』といえば知らない日本人はいないほど、学校の授業で「春はあけぼの…」の暗唱テストがあるほどの名作。
そんな『枕草子』や清少納言、時代背景についてこれほどまでに愉快に詳細に、そして愛に満ちて描かれた作品を久々に読みました。(清少納言を主人公として描いたマンガ『姫のためなら死ねる』もコミカルで大好きです)
本当なら1日で読み切りたいくらいでしたが、約500ページはさすがに難しかった…。海外ではおそらくそれほど知られていない1000年以上前の書き手の足跡をたどって、はるばるフィンランドから日本へ、はたまた別の国へ…「推し」の存在がいかに人を動かすかを実感した一冊。
原著のフィンランド語は読めないけれど、いつか英語版が出たらぜひ読んでみたい。「京都で読む」のもまた楽しそうです。
(感激のあまり、著者のMiaさんをインスタで発見し、無礼とは思いながらもDMで感想と御礼をお伝えしたところ、なんとお返事をくださいました…。Miaさんおやさしい…そして、インターネット時代すごい…)
②『春にして君を離れ』
こちらは以前友人にオススメされた作品。
アガサ作品を読むのは小中学校以来…?
あらすじには「女の愛の迷い」「ロマンチック・サスペンス」とありますが、彼女の夫や子供たちの視点も織り交ぜながら、人間というものの内面について的確に活写されている小説。
アガサ・クリスティー作品ながら推理小説ではないものの、思わず続きが読みたくなるスリリングさは、さすがアガサ作品…。おそらく誰もが身に覚えのある感覚を追体験させるようなゾクゾク感。
個人的には辻村美月さんの『傲慢と善良』を彷彿とさせました。自分の内面を見透かされているようで、心臓の裏側がすうすうする感じ。
1944年の作品ですが、現代版として登場人物たちや舞台を置き換えても全く古くならない内容。たとえば現代日本を舞台に映像化しても十分に成り立つと思います。
③『月とカラス』
絵の下地に海の砂を用いた独特の質感の作品をはじめとする、画家・絵本作家のたなかしんさん。
元々絵本は手に取ったことがあったものの、砂の質感や色の重ね具合などは原画ならではのもの。
「その質感を絵本で再現できたら素敵だなぁ」と思っていたら、すでにありました…!
台湾の出版社さんがお作りになったという『月とカラス』。表紙はもちろんのこと、中のページも独特の手触り。ずっと触っていたくなります。「美術編集」の担当者さんもいらっしゃるようで、本当にため息が出るくらい美しい一冊。
デジタルでいろいろなものが楽しめる時代だからこそ、触感も含めた「総合体験」の価値が際立つ気がしました。
■映画
①『コンフィデンスマンJP 英雄編』
ドラマシリーズから大好きな『コンフィデンスマンJP』。コロナの影響もあり、閉塞感を感じずにはいられない中の公開で、いつもながらの、そして予想を超える豪華かつ痛快なストーリーにたくさん笑わせてもらいました。
(パンフレットも買った上、2回も映画館に足を運んでしまうレベル。)
なかなか行きづらくなった海外が舞台というのもよかったかも。ネタバレになりそうなので詳細は伏せますが、瀬戸康史さん演じるマルセル真梨邑が本当にかっこよかった…!赤星(江口洋介さん)も、五十嵐(小手伸也さん)も大好きです。
②『あの子は貴族』
実はこの映画は、今まで見るのを意図的に避けていました。
登場するのは、東京育ちの華子(門脇麦さん)と地方出身・上京組の美紀(水原希子さん)。かくいう私自身、「地方出身・上京組」で、映画の中で紡がれる会話が痛いほどわかる気がしました。ハタチの頃の自分なら余計にグサグサと刺さったでしょう。
観終わってみると、淡々とした描写がクセになりそうなくらい。もっと若い時に観ていたら、おもしろさよりも苦しさを感じて辛かったかもしれません。歳を重ねて、ある程度、東京の中に居場所を見つけた今だからこそ、平常心で観られるのかも。
全体を通じて雨のシーンが割と多めで、それが静かで淡々とした印象を与えるのかな?とも思ったり。流れる音楽もボリューム抑えめで、特別ドラマチックなことは起きないのですが、だからこそまた観たくなる映画でした。
③『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』
ジョアンナ・ラコフの自叙伝『サリンジャーと過ごした日々』をベースにした映画。サリンジャー担当のベテランエージェントと新人アシスタントの<知られざる実話>。
『ライ麦畑でつかまえて(The Catcher in the Rye)』で知られるサリンジャー…ではなく、彼の出版エージェントが物語の主軸です。
1980年にジョン・レノンが殺害された事件で、警察が現場に駆けつけるまで、犯人が『ライ麦畑でつかまえて』を読んでいたというエピソードは初めて知りました。その後、サリンジャーのエージェントはファンレターの扱いに慎重になったそう。
登場人物の心情が細かく描かれているように見える一方で、各自の背景や関係性については多くは語られないところもあった印象。その「余白」こそが、観客がそれぞれ想像する幅を持たせてくれるのかもしれません。
原題の『My Salinger Year』に「ニューヨーク」は入っていないけれど、舞台がニューヨークだけに邦題でそれが入るのは、やはりニューヨークへの憧れが掻き立てられるからでしょうか。柳美里さんの小説『JR上野駅公園口』も海外のタイトルは『TOKYO UENO STATION』と「TOKYO」が入っているのもおもしろい。
個人的には音楽が印象的だったので、サントラがあればまた聴きたいところ。
■ドラマ
①『39歳』
30を少し過ぎたばかりの私にはもう刺さりまくる内容でした。女友達3人それぞれが抱える事情とか、友達だからこその喧嘩とか。はたまた、「オトナ」になることで直面するいろんな人生の壁とか…。これもまた観たいと思える名作でした。
②『その年、私たちは』
『39歳』と比べると甘酸っぱい作品。主人公2人の意地の張り合いが微笑ましくてたまりません。作中に登場する、おばあちゃんの孫への愛にもぐっと込み上げるものがありました。
『梨泰院クラス』でイソ役を演じていた時からキム・ダミちゃんには好感を持っていたのですが、この作品を通じてますます好きに…。
どの登場人物も魅力的だと感じたのは、それぞれの「欠点」や「ギャップ」も含めて。むしろそこが愛おしかったのかもしれません。
恋愛ものではありますが、家族の話でもあり、また人の孤独や経済的問題を描いたものでもあります。たくさん笑ってたまにしみじみできる。そんな作品です。
③『シュルプ』
途中まで観て止めていたものを、友人のススメで再開。友人の言葉を借りるなら、まさに「感情をもっていかれる」作品。
骨太な時代劇でありながら、コミカルな描写も随所に散りばめられており、飽きのこないテンポ。
タイトルの『シュルプ(슈룹)』は「傘」を意味し、英語のタイトルは『Under the Queen's Umbrella』。
「母」や「父」として、また「子」として生きること。現時点ではまだ最終回まで観ていないのですが、回を追うごとに、自分の幼少期と重ね合わせながら涙を流してしまうこともありました。
「感情を持っていかれること」、間違いなしです。
■展覧会
①ちはやふる展
青春漫画の金字塔、『ちはやふる』。名言・名シーンの刻まれた原画をたっぷり見れる上に撮影もできて、アニメ化版の声優さんの声で解説を聞ける…展示内容が贅沢すぎてもはや目眩。欲を言えば映画版の衣装なんかも見たかった…!!
どのキャラクターも素敵ですが、机くん(駒野くん)、詩暢ちゃんが特に好きです。作中で太一と机くんがぶつかるシーンは特に印象的。
『ちはやふる』の影響で学生時代、競技かるたをかじるくらいにはミーハーでした。古文の勉強がしんどい学生さんにぜひ息抜きに読んでほしい漫画です。
②ハリー・ポッターと魔法の歴史展
大英図書館企画の展示会が、ロンドン、ニューヨークを経てついに日本へ!待ってました、ハリー・ポッター!!
パピルスに記された古代ギリシャの魔法の手引き書、レオナルド・ダ・ヴィンチの天体に関する手稿、河童や人魚のミイラ、原作者J.K.ローリングの直筆原稿やスケッチ…………大英図書館や世界各地の秘宝がこれでもかというくらいに楽しめる展示会。(何の気なしに見ていたら突如ダ・ヴィンチの手稿があらわれる豪華さ)
しかも会場は赤レンガがふんだんに使われた、東京ステーションギャラリー。「ここはダイアゴン横丁…?ホグワーツ…?」と錯覚しそうになりました。会場と展示がここまでマッチしたイベントもそうそうないのでは…。
一番印象に残っているのは、日本語版翻訳者の松岡佑子さんへのJ.K.ローリングからのメッセージ。松岡さんによって隅々まで読み込まれ、ぼろぼろになった原著にあったのは…
というメッセージ。
「人生において、情熱ほど重要なものはない」。J.K.ローリングをしてそういわしめた松岡さん。
人生で幸運だったことの一つは、ハリー・ポッターの物語をリアルタイムで楽しめたこと。ニュースで英語版が先に出て世界が熱狂するのを見ては、日本語版の発売を心待ちにし、日本語版が手に入った時は徹夜の勢いで読み、映画館で見る魔法の世界にもワクワクし……。個人的にはアズカバンと炎のゴブレットが好きです。
またシリーズを読み直してみたい。そう思える展示会でした。
③画家・絵本作家たなかしんの世界展
前述の「本編」でも紹介した、たなか・しんさんの『月とカラス』にはこの展示会で出会いました。
たなかさんの作品は、絵の下地に海の砂を用いた独特の質感のものも多く、原画を見る醍醐味とはまさにこのこと。原画のサイズも作品によってさまざまなので、「この作品はこんなに大きかったのか!」と新たな発見も。
会場にはたまたま、たなかさんご本人もいらっしゃり、直接お話を伺うとともに、サインをいただけたのもうれしかった…!!サイン入りのポストカードを今でも折りに触れて見返しています。
■ライブ・コンサート
①BTS PTD ON STAGE in Seoul ライブ・ビューイング
ファンになってから一度も行けていないBTSのライブ。そのライブが全世界の映画館で同時上映されるとなったら行くしかありません…!
エンタメやスポーツの世界で、もともとこういうライブ・ビューイングの動きはあったと思うのですが、コロナで一気に加速しましたね。経済効果もかなりあるのでは…。
BTS最年長のジンくんの兵役開始に伴い、7人全員がまた揃うのはしばらく先になりそうですが、その間の活動も応援し続けたいと思います。
②東京フィルハーモニー交響楽団によるオペラ『ファルスタッフ』
先輩のお誘いでお邪魔したコンサート。演奏メインかと思ったら、意外にも演技要素もたっぷりなひと時でした。歌手の方々の豊かな声量と表現力といったらもう…。
ラストを飾る一曲で、皆が高らかに「この世はすべて冗談、最後に笑った者こそが本当に笑うのだ」と歌い上げるさまはまさに圧巻です。
③NEWS LIVE TOUR 2022 音楽
今年でデビュー20年のNEWS。今回のアルバムのナレーションは松たか子さんだったのですが、入った公演にたまたま松さんがいらっしゃり、会場は騒然。
今回の全国ツアーのほとんどでは、声出しNGだったのですが、終盤では声出しがOKになり、会場全体で合唱することもできました。ライブの醍醐味はやはりそういうところですよね。
アーティストさんたちもさることながら、ライブを心から楽しんでいる観客の方々を見て、うれしくなりました。
■番外編
①プラネタリウム『銀河鉄道の夜』
前々から気になっていたプラネタリウムのプログラム。プラネタリウムはやはり没入感がすごいですよね。
観終わったあとは、しばらくぼーっとしていました。プログラムBGMのアルバムもあったので、夜寝る前などに聴きながら今でも癒されています。
②皆既月食
今年は皆既月食もありました。
仕事帰り、ふと立ち止まって空を見上げたらちょうど月食。カメラを向けていると、道ゆく人がなんだなんだと同じように空を見上げ、「あ、月食じゃん!」「おー、きれい!」と口々につぶやいていたのが懐かしいです。
全国各地の友人たちと、各地での見え具合を写真で送りあったのもよい思い出。
③チームラボプラネッツ TOKYO
前から気になっていた「水に入るミュージアム」チームラボプラネッツ。館内を素足でめぐるのですが、それぞれのブースに工夫がこらしてあり、中にはだいぶ足腰の筋肉を使うものも。笑
「わー、きれいー!」と思うより、「この展示、どういうテクノロジー使ってるんだろう?他に何に応用できるかなー?」なんて思ってました。
感知センサーを使った展示が多かった印象。小さくてもいいから、自分でこういう作品を作ってみたいなぁ…。
以上、2022年印象深かったコンテンツでした!
2023年もどんなコンテンツと出会えるのか今から楽しみです。皆さま、良いお年を!
ありがとうございます。いつかの帰り道に花束かポストカードでも買って帰りたいと思います。