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ショート小説まとめ

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オリジナルのショート小説をまとめています。科学を題材にしたものから、ノンジャンルまで。
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#青春

ニュータウン[ショート小説]

ニュータウン[ショート小説]

幼いころ週末に家族で出かけると、決まってニュータウンに行った。家から車で数kmの道のり。図書館に行ったり大型スーパーに買い物を待たされたり、ファミレスでご飯を食べたり。私は後部座席の左が定位置。帰りは疲れてシートに仰向けになる。

窓の外、夜空の中で左から右へ流れていく街灯のオレンジを見るたびに、ここは未来世界なのか宇宙都市なのか、いまが現実ではない気持ちになった。

どこかの星の地球そっくりに造

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くちびるまで0.5ナノ秒[ショート小説]

今日ものんびり布団を出て、自転車で大学に向かう。まず最初に学食でお昼のサバ定食をほおばる。研究室に向かうのはお腹が満たされてから。卒業論文の実験をするためだ。

研究室に着いて、お気に入りのマグカップで紅茶を淹れる。居室の自分の席に座り、背後に座る同期と背中越しにパソコンガジェットについて語り合う。あ、新しいキーボードが出てる、買うか買うまいか。アニメ新番組の情報をチェックして、どれを観るか選ぶ。

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わたしの日常が揺らいだ日[ショート小説]

わたしの日常が揺らいだ日[ショート小説]

高校2年の夏休みに出会った漫画は、救いのない道に進んでしまう姉と弟の話で、私は退廃的な世界観にのめり込んだ。周りに追い詰められていく姉と弟の展開に心を締め付けられながら、エアコンが無い自室で1ページずつ味わう私の顎と胸には汗があふれた。

秋の土曜深夜、眠れないことに諦めて布団から出る。昼寝しすぎたようだ。同じ漫画家の初期短編集を古本屋で見つけて買ったが、まだ読んでいない。

短編の1つめは、見た

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赤帽タッチ![ショート小説]

赤帽タッチ![ショート小説]

異質なものが出現すると、人はそれを「穢れ(けがれ)」とみなす。異質なもの自体を排除しようとすることもあれば、見たり触れたりして穢れを受けてしまった(と感じる)自分を清めようとすることもある。

風邪は誰かにうつせば治る、みたいな昔からの考えも同じものなんだろう。

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小学生の頃、県道の大通り沿いで時折小さなトラックを見かけることがあった。それは白地に

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