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君がいただけで02

19歳

まだ、大人ではなかった。

でも、完全に子供だったわけでもなかった。

19歳は、そんな時期だったかも。

そんな時期だったから、きらきらの思い出になってしまったのかも。

瞬きも出来ないくらい、君が好きだった。
君といられて幸せだった。

でも、「好き」なんて言えなくて。言えないのに、「好き」で、溢れていた。言葉や態度で表現するのは、苦手で出来なかったけど、本当は、誰かをあんなに好きになったことなんてなかったよ。一生分の思いで、君のことだけを思っていたんだよ。

2人でいる時、友達からの誘いがあって、それが久しぶりだったこと、私は、そろそろ帰らなくちゃいけない時間だったこと。私を送り届けて、友達と遊びに行っていいかと、君が私に聞いた。

3秒くらい、黙った。

「わかった。何も言わないのは、俺と一緒にいたいってことだよね。今度にする。」って。

言わなくても、わかってくれたこと。少しの間を、ちゃんと感じてくれていたこと。そんな君が、やっぱり好き。

そんな頃、私が長女だったこともあって、父親が厳しくて、私達は過剰に反応された。あるあるな話だけど、帰りが遅いとか、出掛け過ぎとか、家の手伝いをしないとかって。
「連れてこい!」って、怒鳴られたり。
結婚するのか?19歳だよ、私達。
正直、こんなめんどくさい女、君は嫌になるでしょ?申し訳ないような、恥ずかしいような気持ちになった。それでも、来るって言ってくれた。お供も武器もない、19歳の男の子が鬼ヶ島に乗り込むようなもの。命までは、とられないだろうけど、どんな気分だったんだろう。そこまでする価値が、私にある?って思うと、頑張らなくていいよ、来ないでいいって言ってあげた方がいいような気もしてきて。
そして、尋問は、なんとかクリア。
帰宅時間等のルールの遵守。20時か21時だったような気がする。19歳だったけど、私は会社勤めしていた。にもかかわらず、その時間の帰宅って、相当な箱入り娘か?
「緊張したけど、よかったね。」って。
ほんとに、よかったの?
こんなことにつきあわすのが、苦しかったから
大好きだったけど、続けていくのが疲れちゃって
「やめてもいいよ。」って、言った。
そしたら、君が
「今、ここで別れちゃったら、そんな簡単だったんだな…って思われちゃうよ。ちゃんと認めてもらおうよ。」って、言ってくれた。
私でいいの?
泣いちゃいそうだったよ。

あの頃、本気で好きでいてくれてありがとう。そんな、君のお陰で、今も強くなれるんだよ。誰かに大切に思われたという記憶は、生きる力にもなる。


30年以上も経ってしまったけど。

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