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【短編小説集】日々の欠片

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オチはないけど、それでいい。 日常にあったりなかったりするような、あったらいいなと思えるような、2000字以内の一話完結ショートストーリー集。 ※一部、過去に公開した作品に加…
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2023年6月の記事一覧

【短編小説】6/30『おやすみ、アインシュタイン。』

【短編小説】6/30『おやすみ、アインシュタイン。』

 アルベルト・アインシュタインの脳は、彼の死後7時間半後に摘出され、46の切片にされた。
 その脳は世界各国の脳学者のもとへ送られ研究素材とされたが、いまでは所在不明な切片もあるらしい。
 そしてその内の1片が、いまここにある。
 本物かどうかは定かじゃないけれど……試してみる価値はありそうだ。
 私は目の前に置かれたマシンに、切片入りの試験管を設置した。うまくシナプスに接続できれば、この脳片に刻

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【短編小説】6/29『小さな星の、一輪の薔薇。』

【短編小説】6/29『小さな星の、一輪の薔薇。』

 小さな星に咲くたった一輪のバラ。ほかの星ではありふれた花でも、その小さな星ではとても貴重なもの。
 ボクにとってのキミもそう。
 なんで私? って言うけど、ボクにはキミがかけがえのない存在なんだ。それをキミに伝えるには、ボクの言葉じゃ足らなくて。
 知りうる言葉のすべてをもってしても、ボクの気持ちを全部伝えることはできない。
 キミはいつも楽しいおしゃべりをしてくれる。うるさいなんて思ったことは

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【短編小説】6/28『パフェ専門店 懐想-KAISOU-』

【短編小説】6/28『パフェ専門店 懐想-KAISOU-』

 パフェってあんまり食べないなー。って考えながら歩いていたら、ちょうどいいところに喫茶店があった。半地下の物件だから見つけにくいけど、そこがいい。
 階段上の道路に置かれた看板には“パフェ専門店”の文字。なんておあつらえ向き。
 こないだ給料も出たし、たまにはいいかと入店する。
 席についてメニューを広げて、(しまった)と入店を後悔した。外観からはわからなかったが、“メニュー名が凝ってる店”だった

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【短編小説】6/27『うちの味』

【短編小説】6/27『うちの味』

 お祝いごとがある日、ウチでは決まってちらし寿司が出てきた。
 酢飯の上に乗る食材は季節によって変わる。
 あるときは海鮮、あるときは野菜。その季節の旬の物を使って、父が作ってくれた。
 父は創作料理店の店主兼料理長で、家庭内で好評だったものをお店のメニューにしていた。新作の試食をさせてもらえることもあって、私と弟はそのたびにいっぱしの評論家気取りで感想を述べていた。
 父と母はそんな私たちを微笑

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【短編小説】6/26『暗雲立ち込めたその後に』

【短編小説】6/26『暗雲立ち込めたその後に』

 真っ黒な雲が急に頭上に迫ってきた。やばいやばい。絶対すごい雨になる。
 けれどここは田んぼの中の道っぱた。隠れられるような建物もなく、服の中にバッグを隠して家路を急ぐ。
 自分や服は濡れてもいいけど、バッグの中には濡れると困るものだらけ。特に電子機器。あれらが壊れたらすごい修理代かかる。ましてや蓄積されたデータが飛んだ日には世界が終わる。
 小走りに急いでいたのに雲の速さに負けてしまい、生ぬるい

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【短編小説】6/25『無駄にしない努力』

【短編小説】6/25『無駄にしない努力』

 詰め替えられる日用品が好きだ。
 まだまだ使える丈夫な容器を捨てるのが勿体ないと思っていたけど、中身だけ売ってることが少なくて、なかなかのジレンマだった。
 最近の【資源を無駄にしない】という風潮により、詰め替え製品が豊富になってきて、待ち望んでいたよと諸手を挙げて祝福した。
 無駄にしないで済むのに加えて、選択肢が増えて嬉しかったのだ。
 本当は量り売りをしてほしいくらいだけど、洗剤なんかの日

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【短編小説】6/24『未確認だと確認したい!』

【短編小説】6/24『未確認だと確認したい!』

 夜空をゆっくりと移動する光の粒を見つけ「お、飛行機」と呟いた次の瞬間、その光が眼前に現れ『ブブー! 不正解!』と頭の中に言って、正解を言わぬまま夜空へ戻りゆっくりと消えた。
 その日から世界中の乗り物を研究し早幾年。ついに【未確認飛行物体】と呼ばれているであろう乗り物の開発に成功した。未確認だから確定はできない。
 あの日消えた乗り物と同じように、ゆっくりと夜空を飛ぶ。
 機体を見た人が発した言

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【短編小説】6/23『夜ふけ』

【短編小説】6/23『夜ふけ』

 眠れないのはいつものことで。だから今日もまたかーって思いながらベッドをゴロゴロ。
 窓の外から街灯が少し差し込んできて、室内をぼんやりと照らす。青色の光が室内の輪郭を縁取る。
 真っ暗だと眠れない私にとって、その青は安住の光。
 深海の底ってこんな感じかな……。
 想像だけでトリップしてみる。
 扇風機の風に揺らめくレースのカーテン。その影が天井に伸びる。
 ゆらり、ゆらり……オーロラのように揺

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【短編小説】6/22『キチンと戴く』

【短編小説】6/22『キチンと戴く』

 いまほど技術が発達していなかった時代、食料として獲られる生物が幾種類もいたと授業で習った。
 人口増加で食料が足りなくなった人間たちが、糧となりうる生物を獲り尽くし絶滅危惧種が増えたため、世界共通の法律として狩猟・漁獲、畜産に厳しい制限がかけられた。
 代わりに発達したのが【代替食品】。いまの僕たちの主食だ。
 味も食感も【本物】に近いが、人工的に作っているから栄養素の増減やアレルギー物質の除去

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【短編小説】6/21『5W2H』

【短編小説】6/21『5W2H』

 神様に世界一周したいと願ったその夜、早速叶えてもらった。
 空を飛んで、ビューンって地球外周をぐるり。
 違う、そうじゃない。そうなんだけどそうじゃない。各地を旅したりして点々とさ。
 でもまぁ、一周させてもらったことにかわりはないので、お礼に行った。
(神様、今日夢でかなりリアルな世界一周を視ました。先日お願いした件かと思います。ありがとうございます。でもですね、イメージとちょっと違っていたと

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【短編小説】6/20『white on white』

【短編小説】6/20『white on white』

 カレーと同じように、ご飯にシチューをかけるって言ったら驚かれたんだけど、なんでカレーは良くてシチューはダメなのかが理解できなかった。
 どっちも同じ、とろみのついたご飯に合うおかずだと思ってる。
 シチューにはパンでしょって言われるけど、カレーだってパンと一緒に食べるじゃん。なんでそんなに否定されなきゃなんないんだ。
 色か。白いご飯にホワイトシチューがダメなのか。ブラウンシチューやビーフシチュ

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【短編小説】6/19『計画的な運命の出会い』

【短編小説】6/19『計画的な運命の出会い』

 ロマンスの神様は仰います。
「相手が違っているのだがのう」
 けれど当事者には聞こえていません。聞こえていたとしても聞く耳を持ちません。恋は盲目というやつです。
(どうか大好きな彼と、永遠に結ばれますように)
 しかし神様は不幸になるお願いを叶えるわけにはいきません。
 叶えてもらえなかったといって、参拝をやめる人もちらほら。残念ですが、それを引き留める権利は誰にもありません。
 しかしこの参拝

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【短編小説】6/18『遥か遠い星』

【短編小説】6/18『遥か遠い星』

 山を越え、海を越え、空を越えてはるばると。
 移住した先は見知らぬ土地。
 宇宙の片隅にある小さなこの星には、生き物が暮らすために必要な酸素や水や土地がある。けれど地球から離れすぎていてお互いの存在も知らないような、そんな星。
 その星の住人がどうやって知ったのかわからないけれど、どうやらわたしは“選ばれた”らしく、よくわからない乗り物に乗って、映像でしか見たことのない宇宙空間を旅して、名前もわ

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【短編小説】6/17『ニュースの時間』

【短編小説】6/17『ニュースの時間』

 バイトから帰ってきて、気力があるうちにシャワーを浴びた。一般的な時間より早くに夕食の支度をしながら点けたテレビは、どこの局もニュース番組ばかり。
 疲れてるときに凄惨な事件のニュースを聞くのはキツイ。
 いつものようにアニメか教育番組に切り替えようと思ったら、有名な男性歌手が意識不明で入院しているというニュースが流れた。
 病院前に集まる報道陣とファンの人たち。そして、入院しているという“有名歌

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