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トーキョー・クロスロード 著・濱野京子 読書感想文

「別人に変装して、ダーツに当たった、山手線の駅で降りてみる」

粗筋の一文を読んで、あ、私の好きな感じかもと購入し読んでみたものの、想像していたものとは違いました。

主人公の森下栞は高校一年生。栞の趣味は、休日にダサい格好をしてダーツに当たった山手線の駅で降り街を散策すること。
ある日、栞は散策中に一人の少年と出会います。二人は偽名を名乗りあいますが、実は中学のクラスメイト同士。

月島耕也というその少年と栞は中学時代に何となくキスを交わした過去がありました。
久しぶりに再会した二人は、時々会うように。
常に誰かと付き合っているものの、その時に発情した想いをそのまま栞にぶつけてくる耕也。
栞は距離を取ったり、可愛い友達を紹介したりして、耕也をかわそうとしますが、心身ともに侵食されていきます。

最後まで読めば、耕也の良さや厚かましさの理由を知れるのかなと思っていたのですが、結局わかりませんでした。
この本はいわゆるローティーンを対象にしたヤングアダルトといわれるジャンルの小説です。
同級生に大人の世界へ足を突っ込んだ者がいたり、表面上は仲良しだけど実はそうではない人間関係が絡みあっていたり、母親の隠された事情を垣間見たりとヤングアダルトあるあるな設定が盛りだくさんでそこは大満足。
ただ、やはり耕也の性的にだらしないところをかき集めたような人物設定には嫌悪感しかありませんでした。
大人の本ならいいんです。だけど、これはヤングアダルトでやらなあかんことかいな。

人があまりやっていないことをして奇を衒う方法は悪くないと思うのですが、主人公が恋する相手としては良さがわからなさすぎました。石田純一よりたちが悪い、あ、石田純一さんすみません。

また、別人に変装して知らない街を歩く相手がいつも知り合いで、しかも、主人公のファッションがジャージにメガネとか、出だしから残念過ぎて。行き先が歴史的名所とか。肩透かしくらいました。唯一救いだったのはジャズの店があったことでしょうか。

この設定なら、ダサい格好を取り入れつつもメイクで変化を出したり、可愛い系でまとめる日もあったりして、その姿で色んな街に降り立ち種類の違う人たちと出会ってほしかったです。
それで別々に出会った人たちが繋がっていくみたいな話が良かったですね、私は。

ただ、久しぶりにヤングアダルト小説を読み、その魅力を再確認できたのは良かったです。また、ほかにも読んでみるつもりです。




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