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2021年10月26日 小松庵総本家 銀座 ≡ 森の時間 ≡ 講師 株式会社ゴープレミア 小松圭子さん

収穫したばかりのオリーブの実を絞ってそのまま瓶詰めしたオリーブオイルを「ノヴェッロ」といいます。フィルターを通しておらず、オリも全て入っているので濁ったオイルです。
株式会社ゴープレミアの小松圭子さんは、そのノヴェッロを入荷しました。ノヴェッロの試飲を兼ねながら、3回目の今日はオリーブオイルの輸入事情をお話していただきました。

小松圭子さん(以下、小松さん)
みなさん、お待たせ致しました。待望の「ノヴェッロオリーブオイル」が無事届きましたので
そのフレッシュな味わいをお楽しみ頂きながら、お話したいと思います。

お手元にノヴェッロの入った容器をお持ちになっていますか?まずは匂いを嗅ぎましょう。
どうですか、フレッシュでしょう?

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ノヴェッロの色は濁っているのでだんだんとオリが沈澱していきます。瓶を振らずにそのまま使用します。普段はフィルターで濾してしまうような部分も入っているので、搾りたてのフレッシュさをまるごとが楽しめます。
そのまま飲むと、喉がピリピリっとします。それはポリフェノールの味わいです。本日は、スティック野菜などを準備していただいたので、食材ごとの味わいの違いをお試しください。
味が濃いものを合わせるよりは、ノヴェッロならではの味わいがいかせる物と一緒に食べるとおいしいです。

お蕎麦もおいしいですが、うどんもおいしいです。
太麺のうどんにノヴェッロを掛けて、フレッシュなチーズと胡椒を振るだけで十分においしいです。お豆腐にも合います。お豆腐は水分があるのでしっかり水切ります。まずお豆腐の表面にだけ塩を振って、キッチンペーパーで包んで一晩置くと、水気が抜けてモッツァレラチーズみたいなモチっとした食感になります。その上にサッとノヴェッロをかけるとおいしいです。クリームチーズでもいいのですが、お豆腐の方があっさりしているので合うと思います。
今回の試飲会では、ノヴェッロとのマリアージュを楽しめるように、きゅうり、豆腐、柿、そばバケットを準備して頂きました。バケットが一番、味がわかりやすいと思います。

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このバケットにオイルをヒタヒタに浸してしばらく置いておきます。そうすると硬いバケットでもオイルが染みて柔らかく食べやすくなるので、オイルを吸うように食べて欲しいです。
おススメの調味料の組み合わせとして、味噌とオリーブオイルを合わせるのもおいしいです。

(蕎麦アイスの提供)蕎麦アイスにかけるのはめちゃくちゃおいしいですね。アイスが溶けていくのでその味わいの変化もおもしろいです。

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ではここで、すでにノヴェッロを入手した人のコメントを披露します。
「豊洲市場で大政のタコを入手したので、スライスして万能ネギを散らして、伊勢の山椒パウダーを散らしてノヴェッロをたっぷりかけました。仰天しました!」

参加者
ノヴェッロは、デパートでも買えますか?

小松さん
デパートでは買えないと思います。そもそもノヴェッロは予約注文にするケースが多いので、予約数と予備分くらいしか入らないので、市場に出回らないのです。11月過ぎると、フィルターを通した「新油」が入ってきます。
ノヴェッロは消費期間が短いので、イタリアに在庫があっても日本への輸送の事情でその辺も考えると安易に沢山の数を輸入する事はできないものです。
ノヴェッロは、本当にデリケートなものなので、いつもより扱いが難しく、生産者も基本的に予約数しか製造しないと聞いています。デパートでは催事の時期と輸入のタイミングが合えば販売しているところもあるかもしれませんが、今季は催事も少ないのでなかなか難しいと思います。
ノヴェッロは搾ったままのオリーブオイルとして出荷されますが、通常はフィルターを通してからステンレスタンクで寝かします。すると濁りが落ち着くので、その上澄みを瓶詰めすると濁りのないクリアなオリーブオイルになります。澱などの成分が除去されているので賞味期限が長くなります。そのようなオイルは、11月以降は新油として市場に出始めます。

今度は、ノヴェッロが日本に届くまでのお話をします。
このノヴェッロはイタリアから「空輸便」で届きました。イタリアからの空輸便は、1日おきに直行便が出ています。ですから、イタリアの生産者から現地空港にはいれば、輸入手続きも含めて1週間くらいで日本に届きます。たいていの空輸貨物は、旅客機の客席の下のスペースに乗せるスタイルです。旅客機の下のスペースは、乗客がいる場所よりはかなり温度は低くなっています。ただ、荷物のサイズや重さに制限があります。今はコロナ禍なので人の行き来がまだ少ないので、飛行機の便が少ない状況です。ですが、物流の量は多いのです。これから年末年始、クリスマスもありますから食材の輸送合戦になります。飛んでいる飛行機は少ないにもかかわらず、貨物が多いので少ない便の中でのスペースの確保が大変です。弊社も、生産者から空港に荷物が届いてからスペース合戦にあいまして、到着が1週間ほど遅れました。

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いまお話した空輸便と言う手段は、オリーブオイルを一番フレッシュな状態で手に入れる方法です。
もう1つ、輸入方法としては「船便」という方法があります。これはおおよそ到着まで3ヵ月かかりますが沢山の量や大きな物を運ぶ事ができます。
その中でも種類が2つあり一つは「ドライコンテナ」と言って、エアコンの効いていないコンテナです。
世界地図を思い浮かべてください。イタリアから日本までの船の航路は赤道を2回通過します。赤道付近を通過する時は庫内温度が40度から50度になることもあると聞いているので高温多湿に弱い商品は運び方も考えなければなりません
もう一つが「リーファコンテナ」と言って。エアコン付きで庫内がだいたい15度くらいに設定されて運ばれます。ワインやお菓子などで温度管理が必要なものはこの方法を利用します。

先程お話した、ドライコンテナと言う方法は、輸送方法の中では料金が一番安いと言われています。庫内の温度を考えると温度管理が必要な食品を運ぶには、適しているとはいいがたいですね。現地とはかなり風味が変わったものが届いているのでは?と思われます。高温多湿を繰り返す事で発生するカビなどの問題もあります。食品の輸送には「温度管理」が命です。

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通常だと船便は3ヵ月かかります。今年は、コロナの影響でコンテナが不足し、在庫が切れたら大変だという業者の人たちが普段より多く商品を運ぼうとしました。港での人手不足もあり、港では大量のコンテナが滞留していると言う現状もあります。これからクリスマス商戦で、通常だと船便は9月から手配が始まるのが今年は前倒しされて8月から始まりました。コロナが出てから2年経ちます。コロナになってからの渋滞が解消されないまま、また渋滞が重なって、今や船便は6か月くらいかかると予想され、船便輸送料金も2-3倍に上がっていると聞いています。
一方で、飛行機便も、人の行き来はまだまだ少ないので便数は少ないままです。フライトの便を増やすということはスタッフの人員を増やさねばならないということで、いろいろな点を考えても難しい問題です。輸入の貨物も、早め早めの動きになっています。
クリスマス、お正月商戦の次は、2月に中国の旧正月に当たる春節があります。今の渋滞が解消されないと、この渋滞のまま2月に突入します。輸入業者としては、いつ落ち着くのかと心配です。これまで船便で運んでいた人たちが空輸便に変えるケースもありますし、この現状がが続けば、今後、輸入品は値上がりするかもしれません。

DHLエクスプレスはEviationという会社から電気の航空機を購入したというニュースをご存知ですか?
積荷は1800kg、航続距離は815km。目安として、北海道から九州までが約2000kmと言われているので、半分弱くらいしか飛べません。宅配便の空の便で、しかも電動化するというのです。CO2を削減する近未来の動きの一つですね。2050年くらいには、全ての輸入手段はCO2削減のために電気化を考えていると聞いています。これもまた輸入品に関係することになります。2050年は30年後。近い未来に、いろいろなものが電気化することで、品物が早く届くようになるのかどうかが気になります。

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今回はノヴェッロが届くまでの話でした。ともあれ、ノヴェッロが1ヵ月以内に届いたので、安心しました。
今後は、同じメーカーのオリーブオイルでは、フィルターに通してから一度タンクに寝かせて、クリアになったものを「新油」として輸入します。
絞ったまま、フィルターにも通さず、果肉や澱が入ったままの状態のオイルを飲めるのは今の時期だけです。開封したら、とにかく早くジャブジャブ使って食べてください。腐ることはありませんが、開封したら、日々どんどん劣化します。風味が変わっていってしまいます。
ノヴェッロをアヒージョにしても良いですか?という人もいましたが、アヒージョはお控えください。ノヴェッロではもったいないです。家にある油は一旦お休みして、ぜひノヴェッロを生で食べていただいて、アヒージョは、開封してしばらく経ったオイルを使ってください。
ノヴェッロは、今回試食したようなバケットや豆腐やきゅうり、柿、アイスなどで試してください。おいしかったですね。

参加者
ノヴェッロは3種のオイルのブレンドと言っていましたね。

小松さん
はい、今日ご紹介したものは、レッチーノ、ドリッタ、トルティリオーネの3種です。アブルッツォ州でしか採れない品種が入っています。アブルッツォ州は海と山に囲まれて、海風が吹き栽培にはいい地域です。日光条件と雨量がオリーブオイルの収穫量に影響します。オリーブの収穫は、たいていは南の方が早くて、段々と北に上がっていきます。

参加者
一般的にオリーブオイルは3種類くらいをミックスすることが多いのですか?

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小松さん
1種類のものもあります。でも、収穫量が少なくて混ぜることもありますし、1種類だと味のパンチが強いものは、混ぜた方がまろやかになるので、ブレンドすることもあります。苦味のあるもの、スパイシーなもの、まろやかなもの、フルーティなものなどがありますので、より心地良い味わいになるような配合にしています。イタリアのオリーブの品種は470種類あります。
スペインは生産量の多さ、イタリアは品種の多さが特徴的です。イタリアの北の方で収穫されるオリーブオイルは、独特でパンチの強いものが多いです。以前、こちらでお話したときは、1回目にトスカーナ地方のオリーブオイルを試食していただきましたが、とても独特でした。その土地ならではの品種もありますし、土の状態、天気、雨が味に影響します。スパイシーと同じカテゴリで括っても、種類や収穫される場所によってスパイシーさの味わいが異なります。

参加者
オリーブの実の受粉は人が筆でやるの?

小松さん
自然の風ですね。風によって受粉する風媒花です。風が通りやすいように、木と木の間隔を開けて、水捌けが良くなるように段々畑の様に植えたりするのが理想と言われています。いろんな種類を植えることで繁殖も良くなります。*苗木の本数がすくなければ筆で受粉させるところもあるようです。
地域ごとにいろいろな品種があって、味や収穫量がいい品種だからと、別の場所でも同じように育つかと言えばそうではありません。自分の土地に合った品種選びは大事になります。

スペインは広大な土地で育てられていますので、理想的です。個人差はあると思いますが、オリーブオイルも食べやすいものが多いですね。イタリア独特の個性的な味わいのものは少ない気がします。
さて、年末年始の次は、バレンタイン。チョコレートの時期です。2月の中国の旧正月に当たる春節で中国が休暇期間に入ると、その頃の貨物の動きも悪くなるので、今の輸送ラッシュが、果たして次の2月頃に解消されるのか不安です。
イタリアでも1月は雪が降る地域もあるので、イタリア国内の運送が難しくなります。輸入というのは、受け取るまで毎回ヒヤヒヤします。
海外からの荷物は、梱包も厳重にしないと破損が心配です。よくこんな簡易の梱包で届いたなとビックリするような梱包の時もありました。が生産者との交流が大事になります。
ウチの会社では、これまでオリーブオイルを約40回ほど輸入しています。1回だけ船便のリーファコンテナを使いました。それ以外はフレッシュなオイルを早くに届けられるので空輸便を利用しています。瓶ものなので、輸入ならではのいろんな問題はつきものなので、毎回輸入のたびに何事もなく無事手元に届くまで気が抜けません。
今回は、コロナと言う事情もある中無事にノヴェッロが届いて、本当にホッとしました。
どうもありがとうございました。

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小松孝至社長
輸入のお話はおもしろいですね。まだまだ話は尽きませんが、お時間となりました。
ご静聴、ありがとうございます。


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