見出し画像

2021年9月6日 小松庵総本家 銀座 ≡ 森の時間 ≡ 講師 株式会社ゴープレミア 小松圭子さん

小松庵のせいろは、蕎麦つゆの他にオリーブオイルをご用意しています。つゆにオリーブオイルを混ぜたり、オリーブオイルに塩をかけたりします。今回はそのオリーブオイルを輸入している株式会社ゴープレミアの小松圭子さんのお話の2回目です。前回8月23日のお話を振り返りながらお話いただきます。

小松庵店主
今回は8/23に続きまして、2回目、上級編になります。

小松圭子さん(以下、小松さん)
今年でオリーブオイルを輸入するようになって10年目になります。
今回が初めての人もいるので、復習を含めてお話をしたいと思います。

今回は、①前回の振り返り、②地中海式食事法、③テイスティング、の3本立てです。②の「地中海式食事法」とオリーブオイルは関連が深いので覚えていてください。

<「エクストラバージンオイル」の基準>

画像1

小松さん
オリーブオイルの基礎知識のおさらいをします。
オリーブオイルの品質は、EUの国際オリーブ協議会(IOC協会)による世界基準があることをお話ししました。品質は、オリーブの実の発酵度合いを示す「酸度」で表現します。
オリーブオイルの瓶には酸度が書いてある商品が少ないですが、オリーブオイルの業界では、その酸度が基準になっているので、商品のホームページには書いてあります。いいオリーブオイルを買いたいときには、ホームページを見て酸度を目安にお買い求めいただくのもいいと思います。

最高品質のエクストラバージンオイル は0.8%以下です。
酸度が0.1〜0.3%あたりのオリーブオイルは、そのまま食べても風味もよく、香りもいいので、ぜひ生で使っていただきたいと思います。
ポリフェノールやオレイン酸も豊富に入っています。

その次の0.8%〜2%のものは、「バージンオイル」です。

「ピュアオイル」という名称を見かけますが、これはエクストラバージンオイル以外のオイルを、溶剤を使って無味無臭に精製したものにエクストラバージンオイルを数パーセント混ぜたものです。

精製されることでエクストラバージンオイルに比べて成分は薄まってしまいますが、体に悪いものではないので、大量に油を使うような料理で使うといいと思います。お料理の目的によって使い分けするといいでしょう。

<オリーブオイルの保管方法>

小松さん
保管方法の復習です。
オリーブオイルは、光に弱いので遮光性の瓶のものを選んでください。太陽光だけでなくスポットライトにも弱いのです。
オリーブオイルの色を見せるために、あえて窓側に陳列されていることもありますが、購入するときには避けてください。光に当たることで劣化してしまいます。
中のオイルの色を見せたくて透明の瓶に入っていることもあります。その場合は、箱に入っていれば遮光性がありますので大丈夫です。
また、缶に入っている場合も密閉されているので品質は安心です。

画像2

ペットボトルは材質がプラスチックで、目に見えない小さな気泡が開いています。これにオイルを入れると酸化しますので、品質保持をするという点では向いていないと思います。

エクストラバージンオイルは揚げ物としても使えますが、量を使うので、高価なオイルではもったいなくて使えないといういう話はよく聞きます。大量の油で揚げるときにはピュアオリーブオイルを使うといいと思います。例えばお肉などの素材の厚みを薄くすれば、オイルの量も少なく済むのでエクストラバージのオイルで揚げてもいいと思います。私はグレープシードオイルとエクストラバージンオイルを半分ずつにしています。これはカラッと揚がります。混ぜるオイルには、米油もいいですね。揚げ物は衣がカリッとしているからおいしいですよね。それであれば、肉などの素材にパン粉をつけて、ハケで油を塗ってからオーブンで焼くのもカリッとした食感を楽しめる調理方法の1つです。
いい調味料を賢く使うために、調理法を変えるのも1つの手です。

<オリーブオイルの最新の製造方法>

小松さん
前回、オリーブオイルの製造方法のお話をしましたが、数十年前とは製造の仕方が変わっています。
今は、できるだけ短時間で空気に触れず瓶詰めをする工程が、良質なエクストラバージンオイルを作るポイントです。
実を採ったら、洗浄し、ペーストにして、遠心分離機に入れて、水と油に分けます。油はフィルターを通して、澱を取り除いて、大きなステンレスタンクに入れて寝かせます。ここまでが、一貫式のラインで行われています。
すぐに瓶詰めせず、タンクの中で寝かせて澱を沈めて、上澄みを瓶詰めします。
収穫時期は国や地域によって異なりますが、9月から収穫が始まり、新しいオイルは12月頃から入荷されます。

画像3

ただ、旬にしか楽しめない「ノヴェッロ」というオリーブオイルがあります。ワインだとボジョレーヌーボーですね。それと同じで、摘みたて搾りたてです。ノヴェッロはあえて澱がそのまま入っています。風味と香りを楽しむ1年に1度、その時期にしか出回らない貴重なオイルです。
買ったらすぐに使い切ってください。フィルターを通してないので、沈殿物がありますので油を酸化させる原因になります。
できれば1カ月、最長でも2カ月以内で使い切った方が味を楽しめます。

<オリーブオイルの昔の製造方法>

小松さん
オリーブオイルの昔の作り方は、石臼みたいなもので実を潰していました。その潰してペースト状になったものをマットに塗り込みます。マットとペーストを何層にも重ねて、上からマットをギューっと押すと、横から油が染み出すので、それを瓶壺に入れて保管します。これが数十年前は主流で、今でもほんのわずかな人たちがやっている方法です。

その方法では、時間がかかるのと、空気に触れる時間が長いので、いくら採りたてで鮮度の高い実を使っても、マットに前回の搾りカスやオイルが残っていると劣化の原因になります。また、カメ壺に入れた後に床下に保管しますが、床下のカビ臭さがオイルに移ってしまうこともあります。いくらいい原料を使っても品質が落ちてしまう原因となります。

そこで、最近では最新鋭の設備として、収穫したばかりの実から瓶詰めするまで空気に触れさせずに全自動でできるシステムを導入をしているところが多いです。

<庭で実ったオリーブから自家製のオリーブオイルを作りたい>

小松さん
みなさん、自家製のものが好きですよね。よく相談されるのが、「庭のオリーブの木に実がなったので食べたい」という内容です。
オリーブの木は植えてから3年目くらいで実を付け始めて、20年くらいはよく実を付けます。
6月くらいに小さな白い花が咲いて、20−30輪咲いても実ができるのは2−3粒です。
オリーブは風受粉です。だから風通しがいいのがポイントです。実の付け方は、風通しや日照条件が影響します。風が思うように吹かないときには、自分で筆などで受粉させるといいようです。

自分で作ったオリーブで油を作りたいという人もいますが、製造方法を知ると大変なのがお分かりになると思います。
オイルに比べて、実を塩漬けにするのは比較的手軽です。塩漬けなら緑色の状態の実が向いています。ただ、そのままでは渋くて食べられません。タネを抜いて洗ったら、重曹水で毎日洗って、渋みを抜いてから、塩漬けします。

熟して黒くなったものは渋くないので、そのままメープルシロップや蜂蜜、塩漬けにしたり、サラダにトッピングにします。ただ、塾しきっているので実が落ちやすいので収穫のタイミングを見て楽しんでください。

<地中海式食事法とオリーブオイルの関係>

小松さん
1960年代にアメリカのミネソタ大学のキッス教授という人が、世界7ヵ国を対象に食生活の研究をしました。
アメリカ、オランダ、フィンランド、イタリア、ギリシア、旧ユーゴスラビア、日本の各国の食生活を調査したところ、地中海沿岸のクレタ島の人たちが、高脂肪のものを食べているのに、心疾患による死亡率が非常に少なかったそうです。その理由は、魚や植物性オイルを取り入れて、動物性の脂質をあまり取らないことが影響したという研究がありました。

地中海式食事には、「フードピラミッド」と言われるものがあります。
「毎日たくさん食べましょう」という食材がピラミッドの下の段で、全粒粉の穀物、上質なセモリナ粉のパスタ、ナッツ、豆、果物、芋、野菜、きのこ、オリーブオイル。砂糖は使わず、甘味は果物か蜂蜜です。

「週に数回食べましょう」と言われているのが、ピラミッドの中段で、魚介類、卵、鶏肉、フレッシュなチーズ。これは乳酸菌が豊富です。バターもあまり取りません。
「ほとんど食べない」のは、赤身肉や、お菓子です。
赤ワインはポリフェノールが入っているので、いいワインなら適量はOKです。

この地中海式の食事は油としてオリーブオイルが欠かせないもので、この食事療法は健康の維持に効果があると期待されています。
地中海式食事法は、アスリートにもピッタリな食事スタイルだそうです。
アスリートにとってエネルギー源となるパスタや米、豆、果物が取りやすい食事のバランスです。また、マラソンのような持久系アスリートは、そのような食事内容だと上気道感染症、いわゆる風邪を引かなくなるそうです。
また、食品を皮ごと食べるので食材のロスを減らすのに効果的です。

<テイスティングの時間です>

小松さん
いろんな品種を味わって、味覚を訓練していただきたいと思い、個性的なイタリアのものを持ってきました。今日は、アブルッツォ州のオイルが3種類とトスカーナ州のオイルが1種類です。

アブルッツォ州のは3種類で、いずれもアブルッツォ特有の品種のイントッソ種、トルティリオーネ種、そしてこの2種類にドリッター種をブレンドしたものです。

画像5

イタリアのトスカーナ州は「ピンツィモニオ」という商品名のオイルです。
この生産者は、トスカーナの山間でワイン作りもしています。その土壌がミネラル豊富なので個性的な味わいのオイルです。
塩とオリーブオイルとお好みで胡椒やバルサミコを加えてスティック野菜を食べる食べ方が「ピンツィモニオ」と言われます。そのような食べ方のときに野菜のうまみを引き出すような、味の濃いオイルです。

オリーブオイルは採れた地域の食べ物と合うような味わいをしています。
海沿いの地域のオイルは魚介類を合わせるのがおいしく、山間で採れたオイルは個性的で鹿やウサギのようなジビエ系の赤身肉に合わせるのがいいと思います。
どこの産地のものか調べられるようでしたら、その日の食事の材料に合わせて選ばれるのもいいと思います。
イタリアは470種類の品種がありますから、選びがいがあります。

いずれも個性的でスパイシーな味なので、いきなり飲むとむせるかもしれません。ゆっくりと舐めるようにしてテイスティングしてください。
では、テイスティングを始めましょう。

まずはイントッソの品種です。

質問
「品種」というのは、ワインでいうところの「カベルネソーヴィニヨン」とか「シャルドネ」などのようなことでしょうか?

小松さん
その通りです。

テイスティングは、オリーブオイルを入れた容器を両手のひらで温めて、手の隙間から香りを嗅ぎ、それから口に含みます。

アブルッツォ州は平地がなくて、丘陵地帯に段々畑が広がって、海からの潮風がうまいこと均等にあたるような場所です。ですから、魚介に合うオイルです。アオリイカやエビなどがいいでしょうか。または豆にも合います。

イタリアのオリーブオイルは、フラントイオ種、マウリーノ種、レッチーノ種などが主流で、いまテイスティングしているイントッソ種は稀です。

次は、トルティリオーネ種です。イントッソ種と比べてどうですか?こうやって比べると味の違いが分かりますね。

画像6


このオイルに合う料理は豆料理です。味が濃いので、ルッコラやブルーチーズのような味の濃いものにも合いますし、味が淡白なカッテージチーズなどにかけても合います。

次は、缶入りのオリーブオイルで、イントッソ種、トルティリオーネ種に、ドリッター種も加えた3種類のオリーブオイルの実をブレンドしたタイプです。

全部が辛い味わいの種類のブレンドなのでどうでしょうか。
炒め物などに使うと苦味が強くなるかもしれません。
鶏肉を使うときに、先にオリーブオイルで揉み込んでおくと、肉も柔らかくなって、焼くと外側はカリッと中はジューシーな味わいになります。

画像7

イタリアの真ん中より北のエリアは、料理も独特で、個性的なオイルがあるので、そのまま飲むと刺激が強すぎて咽せてしまうことがあります。

最後はトスカーナ州です。
イタリアでは、オリーブオイルを作っている人たちはみんな自分のところのオイルが1番おいしいと思っていますが、トスカーナはとくにプライドが高いです。
どうでしょう。パンチのある味わいだと思います。セロリのスティックなど合います。

画像8

オリーブオイルを飲んでむせたときには、お水を飲むより、ヨーグルトやリンゴ、バケットを食べるといいです。

こうして比べてテイスティングをしてみると、オリーブオイルの味わいの違いを堪能していただけると思います。
今回はどうもありがとうございました。

ゴープレミア オンラインショップ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?