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生だけじゃないお寿司の魅力とおもてなし「都寿司」様

老舗が立ち並ぶ東京日本橋で、時代とともに新しいお寿司の形を求めながら老舗の暖簾を守り続ける都寿司様。

名物の「二重ちらし」や「にもの丼」の誕生秘話、切り絵アートとしても見事な葉蘭(ハラン、バラン)切り、海外の方へのおもてなしについてうかがいました。


歴史

-創業が明治20年という老舗ですが、寿司屋を創業された背景や、創業者(当時)のエピソード等があればお教えください

そこまで詳しく残っていませんが先代がまとめた資料によると、京都から出て来たのが、だいたい明治20年だったようです。ちゃんと調べれば、もっと前かもしれない…という感じなんですけどね(笑)。あまりものを残さず捨てる癖があるので、なかなか残っているものがない。

明治の前までは京都が都でしたから、店名の「都」は、そこから取ったのではないかと聞いています。

歴史がわかる貴重な資料

-創業当時からお寿司を握っていたのですか?

屋台で売り歩いた背景がありますから、こういう「店を構える」というのは、当時は少なかったと思います。そのまま屋台を家に仕舞っていた。昔の店構えも屋根が傾斜していたり、ちょっと屋台風な造りになっているんです。

-なるほど、最初はお店(店舗)ではなかったんですね。

時代によって変わったものもあったと思います。もともとは板前さんが目の前に座って握っていたこともありましたから。

-今ではカウンターがあって、板前さんが立って握ってもらうっていうのが一般的ですね。

そうですね。それぞれの店に歴史があるのと一緒で、お寿司の歴史はこうだっていうのはなくて、うちにはこういう歴史があって、日本橋ではこういう歴史だったと思います。

-お店の看板に『鮨は活き、料理は夢』とありますが、創業当時からのモットーでしょうか?

これは四代目である先代が考えました。寿司屋はお寿司ばかり握っているようじゃまだまだダメで、お料理も取り入れていかなきゃならないというのが、こういう語録になっています。

その前までは、寿司屋はお寿司を握っていればいいという考えがありましたが、そこにお料理、最初は天ぷらから入ったと言っていました。そういうお寿司以外のお料理を取り入れていくというのが、この言葉の意味です。

『道はいっぱいあっても歩いている道は一本、その中で何を学ぶかが人生』と、よく言っていた言葉ですね。

-こちらの皆さんは従業員の方ですか?

そうですね、弟子です。独立される方もいれば、和食、割烹の方に行きたいとか、別のお寿司屋さんに行ってみるという方もいます。もともとは独立を目的として修業しに来るんですが、最近はお寿司だけ握れれば一人前だというように、ちょっと変わってきているのかなと感じます。

-けれども、先代はお寿司だけじゃなくて?

そうですね、お料理も取り入れてという考えがありました。

切り絵アート「ハラン切り」

-SNSで拝見した葉蘭切り、切り絵アートが素晴らしいですね。始められたきっかけをお教えください。

もともと笹で切った鶴とか亀とか、そういう縁起を担いだものを出前の中に入れていました。出前が多い仕事ですから、おもてなしのひとつとして昔からそういうのがありました。

花柳界等への出前で握り寿司が届けられるようになったのは、長い歴史からみたら最近の話なんです。その前までは、ずっと折り詰めとかお弁当等が主だったんですが、そこに笹を入れるというのが昔からありました。

葉蘭(スズラン亜科ハラン属の常緑多年草、葉蘭が由来)切り、きり絵は、修業している若い子たちの包丁の技術向上のためにやっています。昔は歌舞伎とか相撲を題材にしたものをお店に飾っていたんですが、イチローさんとか他の野球選手とか、時代とともに題材が変わりつつも、今でもこうやって一つの作品として残っているということですね。

全て繋がっているとは思えない細密な切り絵アート

-こちらは笹なんですか?

笹に見立てた特殊なビニールです。元は笹とは違う、生の葉蘭を切っていましたが、大きい作品になってくると、それほどの大きさはないので。

2階にもありますし、通路にもたくさんありますよ。包丁の技術向上のための曲線と直線の練習なので、本当に上手な人はささっとやっちゃいます。

火消しから野球選手、漫画のキャラクターまで幅広い題材

-葉蘭切りは魚を切ったり、野菜を切る技術に繋がっているんですね。

包丁を動かすことに関しては、結局は全部一緒ですからね。寿司屋には細工寿司とか巻物を細工したり、刺身でちょっとお花を作ったりする仕事がありますので、そういう仕事のための包丁の練習、技術向上ですね。

名物誕生

-名物の「二重ちらし」、「にもの丼」はとても珍しいですが、誕生のきっかけをお教えください。

1990年代にO-157が流行った時に、生ものじゃなく、他に何かというので出来たのが「にもの丼」だと聞いています。全て火が通っているエビとタコ、煮穴子とホタテで丼ぶりものを作った。煮詰め(煮物の汁を煮詰めたとろみのあるタレ)で食べてもらうお寿司もありましたが、そんなにたくさん出るものでもなかったので、時代を経てこういう商品が出来たと思っています。当時から爆発的に人気だったかというとそうでもなく、SNSが流行るようになって、写真を撮って、それが拡散してというのが背景にあると思います。

マグロ一切れが大きい「二重ちらし」の上段(季節、仕入れ等の都合により内容が異なる場合あり)

-本当に珍しいと思います。

あまり見かけないですよね。寿司屋は生ものがメインで、生ものを食べてもらいたい、生ものが食べたいっていうお客様がいらっしゃる場所ですから、苦肉の策が逆にヒットした、他所にないものですね。困りごとを打開するために試してみたら、意外と人気商品になったり。長くやっているとそういうことが起こるので、そこがおもしろいですね。

海鮮ちらしはシャリの上に直接魚が乗っているので、お客様が“掘り起こして”食べづらそうにしていたそうです。それを見た三代目が「分けたらいいんじゃないのか」って言ってシャリ用と刺身用とを分けたあの器を特注で作らせたそうです。

器を別々に誂えてもらって、重ねることでちらしになる。二重ちらしとして提供することで、掘り起こす手間もなく別々に食べられるので、当時としては最先端だったんじゃないでしょうか。

ずらりとカウンターに並んだ寿司ネタ

-実は私もちらしを食べるときは、一つ一つネタを外しちゃいます。それで、ワサビ醤油をつけて戻す…。

そうですね。逆もいらっしゃいますよ。二重ちらしの刺身をシャリの上に全部乗せて、自分で作っちゃう方も(笑)。それはそれでお客様の楽しみ方なので「違いますよ~」っていうのはないですし(笑)。

-なるほど、自分で好きなところに乗せられる楽しみもあるんですね。

刺身をつまみにして、最後はお吸い物とシャリで締めるという。色々な楽しみ方があります。

お米のこと

-おいしい寿司を握る上でのお米へのこだわりや、弊社のお米を使って頂いている理由、きっかけをお教えください。

先代から使っていたのも大きいですが、お客様においしいとおっしゃって頂いているというのが一番の理由ですね。お客様においしいって思ってもらえるのが一番だと思っていますし、それを無理に替える必要も、もっといいお米があるんじゃないかと探す気もありません!

やっぱりシャリの味、ご飯の味はお客様が一番よくわかるんじゃないでしょうか。お金を出せばいくらでもいい魚が買えますけど、お米って違うじゃないですか?

板前さんに『ネタは経済、シャリは心』と言われたことがあって、ああ、そうなんだなと思いました。そこに気持ちが入るんじゃないかなと思っています。

大潟村産あきたこまちの銀シャリ

-修業時代に何千回と炊いたお米は、独立してからも使いやすいとよく聞きます。

お酢はこうした方がいいとか、お米はこれとこれ混ぜた方がいいとか、そのお店のこだわりが出て来ますからね。それはもう自由に、うちはうちで変わることなく。

うちはガスで、三升釜に二升で炊いています。水加減は気持ち硬めで、暑い時期には氷をちょっと入れたり、新米の時期にも調整したり、工夫しながらやっています。

なにかコツは………

-お米の炊き方のポイントや、家庭でもできるおいしく酢飯を作るコツ等があればお教えください。

ん~~~~~~…………(笑)難しいと思いますよ(笑)。うちのシャリは三升炊きで二升で炊いて、シャリ切りの飯台(はんだい、寿司桶のこと)に入れて酢を打ちます。たまにシャリがちょっと足りなくなって急に炊かなきゃいけなくなった時に、二升炊いて一升分だけ酢を打つ時があるんですね。半分にすれば同じかといえばそうじゃない、おいしくないんですよ。
家庭だともっと少ない何合の単位になってくるので、同じように炊いてお酢も分量通りやっても違うんです。魚でも同じで、一定の量じゃないとおいしくならないというのはあると思います。

お店のこと、お客さんのこと

-メディア等で取り上げられることも多いかと思いますが、新しいお客様が増える中でも、やはり常連さんも足しげく通われているんでしょうね。

テレビや雑誌の影響、反響は大きいと思いますが、「常連さんを作る」というのも一つの課題だと思います。古くからの常連さんがいてくださる安心感はもちろんありますが、お客様の代替わりというか、新しく常連さんを作っていくことも必要だと思います。

ささっと切って頂いた見事な笹切り(鶴、亀、蝶)。これが入っていたら確かに嬉しい!

=インタビュアー実食!=

日本橋のお寿司屋さんという敷居の高さと、カウンター初体験の緊張感とともに悩みに悩み「二重ちらし」と「上にぎり」を注文。

(あれ、にもの丼は…)

ドキドキ。

二重ちらし、見た目がすごく美しい。

イクラやワサビがイカに巻いてあり、コハダやタコにも職人技が光る

大将 昔のお米はそんなにでんぷん質が多くなかったから、パラパラで粘り気がなくてポロポロしてかきこめなかったんです。ご飯に刻んだ海苔をのせているのは、かきこんで食べられるように。

(品種改良等で)だんだんお米自体にでんぷん質が多くなって粘り気が出てきたので、本来なら海苔はいらないんですが、昔の名残ですね。

(「ちらしはかきこむもの」という衝撃。さすがは江戸っ子)

握り寿司7カンと巻物1本の「上にぎり」(季節、仕入れ等の都合により内容が異なる場合あり)食べるのに夢中で残りを撮り逃がす

大将 良いお米は献上品だったので、庶民が食べられるものじゃなかった。ちょっと色が変わってしまったようなお米を、そのまま炊いても銀シャリにならないので、酒粕の黒いお酢「粕酢(かすず)」を使うことで、白いお米じゃなくても誤魔化せる、江戸前独特の黒いシャリになったんです。

(いわゆる赤シャリに使われる赤酢は、酒粕を醸造させたもの。香りが強くまろやかな味とされ、赤酢を粕酢と呼ぶこともあるそう)

基本、江戸前のお寿司にはお酢と塩しか使わないので、かきこむにはちょっと味が濃くなっちゃうんですが、うちのはシャリに砂糖が入っているので食べやすいと思います。

豆知識とお寿司、おいしくいただきました!

店舗情報

都寿司

東京都中央区日本橋蛎殻町1-6-5
TEL:03-3666-3851
営業時間:月~土曜日:11時〜20時
※祝日は変則的に営業
定休日:日曜日
https://r.gnavi.co.jp/g787800/

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