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中国スタートアップ 資金調達Weekly Report_2021/01/15-2021/01/21_3w

こんにちは。
中国大好きな竹内雄登です。
現在は、SPEEDAというデータベース向けに中国産業調査をしていますが、
前職は、ソフトバンクでベンチャー投資などのM&A業務をしていました。

今年の2021年から、ITjuziというデータベースの情報をもとに、
Weeklyで中国スタートアップの資金調達状況について発信
することにしました。
まずは事実を整理し、定期的に投稿することを目的としていますので、投資傾向や特定企業の分析が薄くなることは予めご了承ください。
※本noteにおける中国スタートアップは、中国を拠点とする非上場企業を指します
※本noteは速報の位置付けとしています
※投資件数・金額およびその他データは本note投稿時点にITjuzi上で集計できたものを反映していますので、後日ITjuziのデータが修正・削除された場合、Weekly Reportの前後で数値のずれが発生する可能性があります。ずれが発生した場合、遡及して過去分を修正しませんので、ご了承ください

このWeekly Reportでは、主に以下3点についてまとめていきますので、
お時間がない方は気になる箇所だけでも、ぜひご覧ください。

・各週の資金調達案件まとめ
 - 資金調達件数(日別、業界別、都市別、ラウンド別)
 - 投資金額(日別、業界別、都市別、ラウンド別)
 - 資金調達実施企業リスト
・上記資金調達により、新たにユニコーンになった企業
・投資案件数上位10の投資家


2020年までの投資動向の概況は以下をご覧ください。


では、早速本題に入りたいと思います。

1. 日別 資金調達件数・金額

[資金調達件数]
1月15日〜1月21日の週では、1月17日を除き、毎日資金調達が行われており、
合計97件となりました。
また、1月1日からの資金調達件数の累計は283件となりました。

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[調達金額]
非公開や曖昧な情報を除き、公開されている情報のみを集計したため、
あくまで参考としてのデータですが、1月15日〜1月21日の週では、
公開金額合計で150.3億元の資金調達が行われました。
なお、97件のうち62件が金額非公開のため、単純計算すると、
集計できた金額の約3倍の規模になると考えられます。

また、1月1日からの調達金額の累計は404.2億元となりました。

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2. 業界別 資金調達件数・金額

では、業界別に見ると、どうなっているのでしょうか。

[業界別 資金調達件数]
今週の97件の内訳を見ていきます。
業界別に見ると、新工業による資金調達が最も多く、24件となりました。
次いで、法人向けサービス、医療・健康、自動車・交通が上位に入り、
上位4業界だけで今週の件数全体のうち67.0%を占める結果になりました。

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1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、
上位4業界は新工業、法人向けサービス、医療・健康、自動車・交通の順になっており、それら4業界だけで全体の63.6%を占めています。

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[業界別 調達金額]
公開されているものだけのため、あくまで参考程度のデータですが、
今週は物流、医療・健康、新工業、教育の順に多く
上位4業界で全体の88.9%を占めています。

物流の調達金額が圧倒的に多い理由は、
货拉拉(英語名:Lalamove)という物流関連のユニコーン企業が、
15億米ドル(約97.5億元, 1米ドル=6.5元で換算)という大型資金調達を行ったことにあります。
同社については、以下6.にて簡単に解説します。

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1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、
上述の通り、物流が多くなっているものの、
先週に引き続き、良い具合に各業界へ分散されているように見受けられます。
このことから、資金調達件数としては特定の業界に偏っていますが、
件数が少ない業界にも資金が流れていることがわかりました。

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3. 都市別 資金調達件数・金額

続いて、都市別の内訳を見ていきましょう。

[都市別 資金調達件数]
今週の97件を都市別に見ると、
今週もいわゆる北上深杭(北京、上海、深圳、杭州)での資金調達が多いことがわかりました。

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1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、
北上深杭(北京、上海、深圳、杭州)の順に多くなっており、
北上深杭だけで68%以上を占めています。

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[都市別 調達金額]
公開されているものだけのため、あくまで参考程度にご覧いただきたいのですが、深圳、北京、杭州、上海の順に多い結果となりました。

深圳は、上述の货拉拉(英語名:Lalamove)による資金調達を受け、
2位と大きく差を離し、1位にランクインしました。

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1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、
今週の結果を受け、深圳が1位になりました。
次いで、上海、北京、広州に集中しています。
注目すべきは、先週もお伝えした、鄭州と蘇州の躍進です。
今後も両都市の動向はウォッチしていきたいと思います。

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4. ラウンド別 資金調達件数・金額

ラウンド別に見るとどうなっているのでしょうか。

[ラウンド別 資金調達件数]
今週の97件では、シリーズAが33件で1位となり、
次いで戦略投資が26件で2位になりました。
また、これら上位2つのラウンドだけで全体の約61%を占めています。

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1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、
シリーズA、戦略投資、シリーズBの順に多く、
アーリーステージの企業による資金調達が活発であることがわかります。

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[ラウンド別 調達金額]
公開情報のみをもとに集計した調達金額をラウンド別に見ると、
シリーズFが最も多い97.5億元となり、全体の64.9%を占めています。
これは、上述の货拉拉(英語名:Lalamove)による資金調達のみの金額なのですが、こう見るとやはり大型の資金調達だったなと感じます。

次いで、シリーズAが20.3億元で2位となり、
全体の13.5%を占める形となりました。
上位2つのラウンドで全体の78%以上を占める結果となりました。

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1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、
今週の結果を受け、シリーズFが圧倒的に多い結果になりました。
次いで、戦略投資、シリーズA、シリーズBの順に多いですが、
レイターステージの資金調達は1ショットの金額が大きいことから、
1社でも資金調達を行うと、ランキング上で大どんでん返しが起こるので、
今後の動向もちゃんと見ていきたいと思います。

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5. 今週、新たにユニコーンになった企業

今週、新たにユニコーン企業となった企業はおらず、
中国のユニコーン企業数は2021年1月21日時点で268社
*です。
*ITjuziが公開しているデータのため、その他データベース等がまとめている数値と異なる可能性があります


6. 今週、資金調達を行った企業リスト

次に、2021年1月15日〜1月21日に資金調達を行った企業リストを見ていきたいと思います。

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今週のメイントピックは、
物流を手がける货拉拉(英語名:Lalamove)による資金調達だと思います。
セコイアチャイナ、Hillhouse Capital、Tiger Global Mauritius Fundなどから15億米ドル(約97.5億元, 1米ドル=6.5元で換算)を調達しました。

2013年に設立された货拉拉は、設立から6年後の2019年2月に行った資金調達を経て、すでにユニコーン企業になっていましたが、今回の資金調達を経て、企業価値は100億米ドル(約650億元)に達しました。
100億米ドル=約1兆円ですので、日本の上場企業と比較してもかなり高い値付けをされていることがわかります。
ご参考までに、1月23日15:27時点でのYahoo!ファイナンスによると、
三菱重工業、JR西日本、東京ガス、中部電力、関西電力などの時価総額と同じ規模感であることがわかります。

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货拉拉は簡単に言うと、荷物を配送して欲しい人と配送するドライバーを繋ぐ物流マッチングサービスを提供しています。

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引越しや配送などのマッチングサービスや配送車両のレンタルを展開しており、B2Cだけではなく、B2Bでも事業を行っています。
同社HPによると、2020年9月時点でカバーしている都市は352に及び、MAU(月次のアクティブユーザー数)はドライバーが48万人、配送希望者は720万人に達しているとのことです。
また、中国大陸だけではなく、香港、台湾、東南アジア、南アメリカなどにも進出しているようです。

7. 今週末時点での投資件数TOP10の投資家

2021年の投資件数TOP10の投資家は以下の通りとなりました。
※順位の矢印は先週との比較を表しています

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テンセントは今週4件の投資を行い、先週と同じく1位にランクインしました。
投資先の業界は4件中2件が教育業界でした。
(オンライン教育プラットフォーム、幼児向け英語教育)
また、SNSマーケティングプロバイダーの分子互动(Fen-z)にも出資しており、動画配信大手の哔哩哔哩(bilibili)も今回のラウンドから同社に出資しています。

今週注目する投資家は、
新たに4位タイにランクインしたQiming Venture Partnersです。
2006年に設立された同社は、投資の70%をシリーズA・シリーズBなどのアーリーステージに集中させており、主に以下の領域で投資をしています。
<主な投資領域>
・Intersumer (Internet and consumer)
・ヘルスケア(医療・健康)
・IT
・クリーンテクノロジー

国内外の有望株への投資をしており、
中国での主な投資先は以下があります。
<主な投資先>
バイトダンス(ByteDance)
シャオミ
bilibili
美図(Meitu)
Megvii
途家
马蜂窝(Mafengwo)
途虎(Tuhu)
知乎(Zhihu)


以上、今週も多くのスタートアップが資金調達をしており、各種ビッグプレイヤーが各業界へ投資していることがわかりました。
今後も毎週レポートしていきたいと思いますので、よかったらスキとフォローをお願いします。

今年もよろしくお願いします。

お問い合わせは以下にて受け付けております。
竹内 雄登(Yuto Takeuchi)
Twitter:https://twitter.com/yuto_takeuchi01

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