中国スタートアップ 資金調達Weekly Report_2021/01/08-2021/01/14_2w
こんにちは。
中国大好きな竹内雄登です。
現在は、SPEEDAというデータベース向けに中国産業調査をしていますが、
前職は、ソフトバンクでベンチャー投資などのM&A業務をしていました。
今年の2021年から、ITjuziというデータベースの情報をもとに、
Weeklyで中国スタートアップの資金調達状況について発信することにしました。
まずは事実を整理し、定期的に投稿することを目的としていますので、投資傾向や特定企業の分析が薄くなることは予めご了承ください。
※本noteにおける中国スタートアップは、中国を拠点とする非上場企業を指します
※本noteは速報の位置付けとしています
※投資件数・金額およびその他データは本note投稿時点にITjuzi上で集計できたものを反映していますので、後日ITjuziのデータが修正・削除された場合、Weekly Reportの前後で数値のずれが発生する可能性があります。ずれが発生した場合、遡及して過去分を修正しませんので、ご了承ください
このWeekly Reportでは、主に以下3点についてまとめていきますので、
お時間がない方は気になる箇所だけでも、ぜひご覧ください。
・各週の資金調達案件まとめ
- 資金調達件数(日別、業界別、都市別、ラウンド別)
- 投資金額(日別、業界別、都市別、ラウンド別)
- 資金調達実施企業リスト
・上記資金調達により、新たにユニコーンになった企業
・投資案件数上位10の投資家
2020年までの投資動向の概況は以下をご覧ください。
では、早速本題に入りたいと思います。
1. 日別 資金調達件数・金額
2021年の第2週目である1月8日〜1月14日における、
日別の資金調達状況を見ていきます。
[資金調達件数]
1月8日〜1月14日の週では、毎日資金調達が行われており、
合計91件となりました。
また、1月1日からの資金調達件数の累計は184件となりました。
[調達金額]
非公開や曖昧な情報を除き、公開されている情報のみを集計したため、
あくまで参考としてのデータですが、1月8日〜1月14日の週では、
公開金額合計で158.6億元の資金調達が行われました。
また、1月1日からの調達金額の累計は267.2億元となりました。
なお、91件のうち46件が金額非公開のため、単純計算すると、集計できた金額の2倍以上の規模になると考えられます。
2. 業界別 資金調達件数・金額
では、業界別に見ると、どうなっているのでしょうか。
[業界別 資金調達件数]
今週の91件の内訳を見ていきます。
業界別に見ると、先週に引き続き、法人向けサービス企業による資金調達が最も多く、19件となりました。
次いで、新工業、医療・健康、ローカルライフサービスが上位に入り、上位4業界だけで今週の件数全体のうち65.9%以上を占める結果になりました。なお、上位4業界の順位は先週と全く同じでした。
withコロナ時代で新たなビジネスチャンスのある業界には、投資家の注目が集まっていることがわかりました。
1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、
上位4業界の法人向けサービス、新工業、医療・健康、ローカルライフサービスだけで、全体の63.6%を占めています。
[業界別 調達金額]
公開されているものだけのため、あくまで参考程度のデータですが、医療・健康、物流、スポーツ関連、ローカルライフサービスに多くの金額が投資されており、上位4業界で全体の67.5%を占めています。
1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、
良い具合に各業界に分散されているように見受けられます。
このことから、資金調達件数としては特定の業界に偏っていますが、件数が少ない業界にも資金が流れていることがわかりました。
3. 都市別 資金調達件数・金額
続いて、都市別の内訳を見ていきましょう。
[都市別 資金調達件数]
今週の91件を都市別に見ると、今週もいわゆる北上深杭(北京、上海、深圳、杭州)での資金調達が多いことがわかりました。
今週注目すべきは、蘇州が4位にランクインしたことです。
蘇州は上海や杭州からすぐ行けるところにあり、高速鉄道という新幹線のような移動手段だと上海間で30-40分、杭州間だと1時間半くらいで行けます。
あまり蘇州には馴染みがないかもしれませんが、立地の関係や政府の後押しにより、蘇州ではスタートアップが多く設立されています。
今週、資金調達を行った蘇州スタートアップは医療・健康領域が多かったですが、その他、半導体関連、自動運転用センサ関連、音声認識・音声合成などの企業も資金調達に成功しています。
1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、
北上深杭(北京、上海、深圳、杭州)だけで66%以上を占めています。
[都市別 調達金額]
公開されているものだけのため、あくまで参考程度にご覧いただきたいのですが、北京、上海、深圳が上位3位を占めました。
注目すべきは、4位に鄭州(河南省)がランクインしたことです。
鄭州と言えば、日産自動車さんの工場があることで有名です。
あと、少林寺へ行けるバスが鄭州から出ていることでも有名です。
今回、鄭州が上位にランクインした理由は、後述の通り、蜜雪冰城という飲食関連スタートアップが20億元調達したことにあります。なお、同社は今回の資金調達を経て、企業価値が200億元に達し、ユニコーン企業になりました。
1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、
北京、上海、深圳に集中していることがわかります。
次いで、広州が多く、いわゆる北上広深(北京、上海、広州、深圳)に大きく偏っており、北上広深だけで80%以上を占めています。
4. ラウンド別 資金調達件数・金額
ラウンド別に見るとどうなっているのでしょうか。
[ラウンド別 資金調達件数]
今週の91件では、シリーズAが27件で1位となり、次いで戦略投資が23件で2位になりました。また、これら上位2つのラウンドだけで全体の約55%を占めています。
1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、
シリーズA、戦略投資、シリーズBの順に多く、アーリーステージの企業による資金調達が活発であることがわかります。
[ラウンド別 調達金額]
公開情報のみをもとに集計した調達金額をラウンド別に見ると、戦略投資が最も多い38.2億元となり、全体の24.1%を占めています。次いで、シリーズBが35.0億元で2位となり、全体の22.1%を占める形となりました。この2つのラウンドで全体の約59%を占める結果となりました。
1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、
戦略投資が圧倒的に多いことがわかります。
このことから、テンセントやバイトダンスをはじめとするテックジャイアントによる戦略投資が多く行われていることがわかります。
5. 今週、新たにユニコーンになった企業
今週は3社が新たにユニコーン企業になり、
中国のユニコーン企業数は2021年1月14日時点で269社*になりました。
*ITjuziが公開しているデータのため、その他データベース等がまとめている数値と異なる可能性があります
[1社目:News Break]
業界:メディア
拠点:北京
設立時期:2015年6月
バリュエーション:10.0億米ドル/65.0億元
主要な投資家:
IDG资本, 真格基金,
Francisco Partners,
大观资本
企業HP:http://www.particlenews.com/
[2社目:和誉生物]
業界:医療・健康
拠点:上海
設立時期:2016年4月
バリュエーション:12.3億米ドル/80.0億元
主要な投資家:
建峖实业投资,上实资本,汉康资本,启明创投, 华平投资, 凯雷亚洲基,
Temasek,中金资本, OrbiMed奥博资本, GIC新加坡政府投资公司
企業HP:http://www.abbisko.com/
[3社目:蜜雪冰城]
業界:ローカルライフサービス
拠点:鄭州
設立時期:2008年4月
バリュエーション:30.8億米ドル/200.0億元
主要な投資家:
高瓴资本,
龙珠资本
(美团点评产业基金)
企業HP:http://www.mxbc.com
6. 今週、資金調達を行った企業リスト
次に、2021年1月8日〜1月14日に資金調達を行った企業リストを見ていきたいと思います。
今週のメイントピックは、
フィットネスアプリを手がけるKeepによる資金調達だと思います。
テンセント、GGV Capital、GL Venturesやソフトバンクビジョンファンドなどから3.6億米ドル(約23.5億元)調達しました。
なお、ソフトバンクビジョンファンドによるフィットネス関連企業への投資は初と見られています。
Keepは2020年5月の資金調達完了時点にはすでにユニコーン企業でしたが、今回の資金調達を経て、企業価値は20億米ドル(約130億元)に達しました。
7. 今週末時点での投資件数TOP10の投資家
2021年の投資件数TOP10の投資家は以下の通りとなりました。
※順位の矢印は先週との比較を表しています
テンセントは今週8件の投資を行い、1位にランクインしました。
投資先の業界は上述のKeep(スポーツ関連)のほか、教育、金融、ゲーミング、医療・健康、Eコマース、法人向けサービスと様々です。
セコイアチャイナは先週同様2位にランクインしました。
今週の投資案件は6件となっており、うち3件の業界は医療・健康でした。
そのほか、物流のラストワンマイルを解決しようとするユニコーン企業の「丰巢科技」への投資がありました。
今週注目する投資家は、新たに8位タイにランクインしたShunweiです。
Shunweiはシャオミ創業者・雷軍氏によって設立され、主に以下の領域で投資をしています。
<主な投資領域>
・移動通信、インターネット+
・スマートハードウェア
・スマート製造
・ディープテック
・農村のネットワーク
国内外の有望株への投資をしており、主な投資先は以下があります。
<主な投資先>
・シャオミ
・愛奇芸(iQIYI)
・NIO(蔚来汽车)
・Xpeng Motors(小鹏汽车)
・今日頭条
・快手
・Gojek
以上、今週も多くのスタートアップが資金調達をしており、各種ビッグプレイヤーが各業界へ投資していることがわかりました。
今後も毎週レポートしていきたいと思いますので、よかったらスキとフォローをお願いします。
今年もよろしくお願いします。
お問い合わせは以下にて受け付けております。
竹内 雄登(Yuto Takeuchi)
Twitter:https://twitter.com/yuto_takeuchi01
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