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【連載】家族会議『意味のない代替案』

「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。その様子を、録音記録をもとに書き記しています。

前回の記事はこちら。

【家族構成】
父:自己愛性パーソナリティ障害。頭に血が上ると大声で威圧する。
母:自己肯定感が低い。自分の意見を言えない。
姉:うつサバイバー。心理カウンセラーをしている。
わたし:性犯罪サバイバー。家族会議を主導する。
※遠方に住む姉は家族会議には参加していない。
※家族会議の目的は、夫婦仲の改善と、うつを抱える姉の気持ちをわかってあげられるようになることである。

家族会議7日目#5|意味のない代替案

――仕事ではフットワークの軽さが重宝がられ、「うちに来ませんか」との誘いを受けたりもしたという父。



フットワーク軽いのはね、俺の長所。

わたし
そうなんだね。家では全く、フットワークが軽いように見えないんだけど。


会社ですごいよ。

わたし
仕事でちょっと動きすぎちゃって、家で疲れちゃったのかな?でも買い物とかはポンっていくもんね、家でも。

だから気持ちなんだね。フットワークの軽さも。気持ちがあれば、自分がやりたいとさえ思えば


そうだね。やっぱ気持ちだよね。気持ちがやりたいと思えば何でもやる。気持ちがやりたくないとやらないよってことだね。

確かに気持ちが先だよね。体ってひとりで動かないもんね。行こうって思うから動くんだもんね。

わたし
運動とか、そういうのだとちょっと重くなっちゃったりするっていうのは、かもう本当気持ちなんだね、やっぱって感じ。


だと思います。

わたし
吹き矢の話もさ、なんか自分の気持ち出してこうってことでやめたんだって言ってたし。


――市の講座で『吹き矢体験』というのがあった。母が広報で見つけ、父を誘って数回参加ししていた。

父は正直、行きたくなかった。母に誘われて行っていたものの、「気持ちに正直になろうということで辞めた」と私に話していた。

だけど肝心の母には、何も伝えていないのだ。



言ってたんだ?そう言われなかったけど。ま、そうなのかなと思いつつ。

わたし
うんそうか。気持ち出してくって言われてなかったのね。


うん。

わたし
なんかわたしもね、お父さんの話聞いて、行きたくないものを嫌々行って、つまらなそうにやってるぐらいだったら行かない方がいいって思った。自分の気持ち、正直に出してくことはいいんじゃないって。

でもそれだとお母さんが納得いかないと思うから、代替案として公園を歩くのと、図書館に行くっていうのをやるって出したって。


あっそう。言われてはいない。図書館に行ってくるっていうのは聞くけど、そういう気持ちっていうのは聞いてなくて、歩くのも。


今みたいに論理的に説明してないからね。ただそのときから行き出したんだよ。公園に行くとか言ってさ。図書館行くとか言って。


――なにも論理的に説明しなくてもいい。父の場合、こっちの気持ちを無視して勝手に代替案をやり始めるのが問題なのだ。

代替案も、提示しなければなんの意味もないだろう。


わたし
それも説明してなかったんだぁって今思ったけど。それ、言った方がいいよね?


そうですか。

わたし
自分の中で代替案って思ってても意味ないよね。

それに、別に代替案なくてもいいっていうか。ある意味では。

お父さんは、代替案を言って納得させようって、納得させようとまでは言ってないけど、ある意味そういうことなわけでしょ?

だけど本来であれば、お母さんに納得してもらうためには、代替案を用意するよりも、お母さんの気持ちに寄り添えばいいだけのことっていう感じ。


その場合どう寄り添ってどういうことするの?

わたし
お母さんが何で吹き矢にお父さんを誘ったのか。まずそれを考える必要があって。もちろん体のことがひとつなんだけど。
それ以外にも、人と関われるっていうこともあるし。とにかく、健康のためプラス、お父さんを心配してるんだよね。ただ体力をつけるためっていうだけじゃなくて。

あとどんな気持ち?


そうだね、あと人と接しないで1人の時間が長いことは、お父さんの脳にも関係してくるしとか。あとはもちろん健康だね。いろんなとこ痛い痛いっていうのも、すごく気になってるし。そういうのも筋肉なんだよなって思って。とにかく筋肉つけることだよなっていうこと。だから体のことだね。

わたし
体の健康維持のために、いろいろ提案してみる…


そうだね。

わたし
つまりお父さんに健康でいてほしい。


うん、そうだね。健康で、お父さんがどっか行きたいってときに行けるような感じ。もう動けなくなってどこにも行けないじゃなくて。そのほうがいいなって。

もちろん私のためかも知れないな。お父さんが寝たきりになったり、ボケちゃったりしたら…。

わたし
不安ね?


不安だね。で、今やれば、もうちょっと健康で暮らせるのに、今やらないことで悪くなっていくと、どんどん駄目な方向に進んじゃうみたいな。その説明が足りなかったのかなっていう気もするんだけど。お父さんを誘うとき。

わたし
足りてるんじゃない?何回も聞いてる気がするし。この話。1回でいいよって思うぐらい。


足りないからその気にならないのかなっていう

わたし
それも、そういうことではないよね?


違う。


そういうことではないんだ。それはわかってるんだ。わかってるけどそれはやりたくないよって。

わたし
うん、わたかった上で、吹き矢が違うってことなわけ。

でも、お母さんはいろいろ心配なわけよね。だからお父さんが興味が持ちそうなものを見つけて誘ってる。

だけどお母さんの説明が、お父さんを納得させようとして、今みたいに「ああだこうだ」言うからお父さんも、より拒否感が出るのかな、とは思う。

でもさ、最初は、吹き矢を見つけたときは純粋に、簡単そうだし、お父さんと一緒にできそうだし、健康にもよさそうだし、コミュニケーションも取れるし!みたいな、もっと楽しい気持ちだったんじゃないかなと思うんだけど。

つまりはその気持ち。お母さんが、お父さんのことを考えて誘ってくれて、一緒に行ってくれてた。その気持ちに配慮すると、「いろいろ考えてくれたのに、どうしても吹き矢が苦手で」って。「だからやめたいんだ」って言えばいいのにって感じ。

もちろん、お母さんが健康を心配している気持ちを思えば、代替案を用意するのは必要だけど。代替案の前に、「いろいろ考えてくれてたのにごめんね」って言うだけでも、だいぶお母さんは怒らないと思うわけよ。


ま、そういうことですわ。


――「こいつなめてんな」と思う。父だけど。


わたし
うん。だから代替案をやるっていうのも、そうならそう言わないとわかんないよね。自分でちゃんと考えてるんだなっていうのが伝わってないと、お母さん、延々と新しいの見つけて提案してくると思うよ。


一番いいのは、お父さんが自分から何かやりたいことを見つけて、外に出ていったり、筋肉をつける。そういうことをやればいいんだけど、なんかあんまり興味なさそうだなって。私から見ると。

わたし
でもそれもさ、お父さんは苦手なわけじゃん?外に出て何かやるっていうのが。あんまり好きじゃないんだよね?おそらく。好きじゃないんでしょう?みんなでワイワイ運動するみたいなやつが。

社交の場に出ていかないことはちょっと心配にはなる部分ではあるんだけど、やっぱ苦手な人っているよね。そこをお母さんの感覚で誘うと、お父さんにはちょっと負担っていうか、苦しいっていうことはあるかな、とは思う。

お父さんは性格的にも疲れやすいんじゃない?気遣うからさ。


――母は不安なのだ。それは父の老後を、妻が責任を持たなければならないと、どこかで思っているからだと思う。

だけど父はどうだろう。母の老後の責任が、自分にあるなどと考えたこともないと思う。

自分が老後の世話をしてもらうことしか考えていない父に、母はモヤモヤしているのである。


- 今日はここまで -


相手の求めに応じられないとき、自分にできるせめてもの代替案を提示する。それは大事なことだろう。(父の場合、提示すらしていないけど)

ただこのとき、『相手の求め』が何かを知らなければ、代替案を提示しても提示しても、相手が納得することはない。

相手の真の欲求を知ろうとせず、安易に代替案を提示すれば、相手を怒らせることもある。

つまりは相手の求め、その真の望みを知ることが先。

結局は気持ちなのだと、この上手くいかない夫婦を見ていればよくわかる。

<次回に続く>


これまでの家族会議記事はマガジンにまとめています。お時間あればぜひ、わが家の会議をのぞきに来てください!

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