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【連載】家族会議『プライドが高い人の自慢話は聞くに堪えない』

「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。その様子を、録音記録をもとに書き記しています。

前回の記事はこちら。

家族会議4日目#4|プライドが高い人の自慢話は聞くに堪えない

――幼少期、親に褒めてもらえなかった悲しみを受け入れ癒していく。そんなワークをしていこうとしたら、自慢話を始めた父。

父はまだ、自分で自分を褒めてあげることができない。他人からの賞賛が必要なのだ。

父はここから、いかに自分が優秀だったかをプレゼンし始めた。

(最初に断っておくが、父はプライドが高い。そのプライドはある界隈で、”ゴキブリプライド”などと言われていたりする。)


:結構頭よかったんだ。一高(一関一高)にはね、最初から入るつもりなかったから。親父が工業高校に行けっていうんで。


――当時、家から通える工業高校はできたばかり。相当な倍率だったらしい。が、父の中では一高のほうがステータスが高かったようだ。

一高に行けなかったのではなく、行こうと思えば行けたのだと言いたい。


:どこに入りたいかって希望を聞きとるんだわ、中学校でね。そしたら競争率が4.何倍になった。普通は1.何倍とかさ、2倍はいかない。1.9倍ぐらいまで。いいところでね。

わたし:うんうん。それで?

:実際、入試始まったときに2.1倍くらい。がくんと下がったんだ。それで受かったのかな。


――高い倍率を勝ち抜いた優秀さアピールしつつも謙遜を忘れない父。「自慢話は品がない」という教えが頭をよぎるのかもしれない。


:それで一高だったらどうだかっていうと、受かってるよっていうラインな。だからまあまあの成績。

わたし:まあまあっていうか、結構すごかったってことでしょ。

:うん。結構すごかった。


――わたしは父の自慢話を聞いていると、ついイライラしてしまう。明らかに自慢話なのに、「大したことないんだ」という結論に持っていこうとするからだ。

そこは突っ込まないであげるのがマナーかもしれない。でも、賞賛するよう仕向けられた側の気持ちにもなってほしい。父だって、他人の自慢話は大嫌いだ。


わたし:ふふふ。今みたいな話ってさ、お父さんからたまに聞くなぁって思うのね。いわゆる自慢話。だけど自慢っぽく言ってこないんだよね。

お父さんの場合はさ、もう、思い切って自慢しちゃいないよって感じ。なんていうか、すごい遠くから自慢話を持ってこられると反応しづらい。今の話も最初、自慢話だって思わなかったから。

だからなんかもう、それを1回思い切って「ちょっと自慢させて」とか言って自慢しようよ。

:それ言われると気持ち良く聞けるかも。自慢なのねって最初からわかってれば、こっちも気持ちの準備ができるんだけど

わたし:それを察してっていう方向から来るんだよね。遠慮なんだろうけど。それによってうちらの反応がいまいちなわけよ。だから満足できなくて、何回も同じ自慢話するんだと思うの。

:そうだね

わたし:だから「めっちゃ邪魔したくて仕方なかったんだよね。昔から」みたいに言って、1回思い切って自慢してみる。そうするとこっちも一緒にワーッてなると思うんだよね。反応が。

:そうだね、はっきり自慢したいって言われるのと、なんかわかりづらく言われるのだと・・・。でも自慢っぽくは感じるわけじゃん?感じるとすごく嫌な感じっていうか。

わたしも自慢ってあんまり良くないことだって言われて育ってるから、自慢は恥ずかしいことだとか。

だから自慢じゃないように自慢してるお父さんの話を聞いて、なんかすごくイライラするというか。あんまりいい気持ちでは聞けてなかったんだけど、最初から自慢だって言われたら、なんかもうさっぱりするっていうか、そういう感じする。

:今の自慢だよ。

わたし:そうだよね。でもなんか自慢ぽくない冷静な感じで話してくるから最初わからなかったの。

:豆腐屋さんの話に乗っかった自慢話です。


――豆腐屋さんの話というのは、ほとんど関わりのない豆腐屋さんが、父が頭がいいことを知っていたという話である。


わたし:その方が聞いてるほうも潔い。
そうだ!自慢しちゃおうよ!これから1個、自慢したいことを言っていくみたいな。

:わたしも聞きたいな。お父さん自身のこと、あんまり知らないことも多いし。お父さんが自慢したいと思ってることがどんなのか聞くのは、自慢だよって言われたら嫌な感じはしない。1個じゃなくても今言うことがあったら

わたし:豆腐屋さん以外にもあれだよね。高校入試のときに、いかにレベルが高かったかっていう。

:自分は受かったんだぞって、すごいでしょって。

わたし:なんでそんな複雑な表情するの?お父さん。なんか恥ずかしいって感じ?

:な、なんなんだろうな。

わたし:あんまり全面的に受け入れられるのもちょっと抵抗あるみたいな?

:そんなことないんだけど

わたし:嬉しくは感じてない?今すごいんだねって言われても?

:嬉しいっちゃ嬉しい


――褒めて欲しがるのに褒められ慣れていないがゆえ、実際に褒められると反応に困る父なのだった。


わたし:例えばこれって、外で人に言うのは考えた方がいいかもしれないね。相手が受け入れられるかどうかによるから。でも家では解禁して、もう自慢しちゃおう!
1回出せば満足して、いつまでも自慢したい気持ちも少なくなるんじゃないかな。

:あとは自分でもはっきり自慢しちゃえば、自分自身でもそのことを、これは自信持っていいことなんだって思えそうな気もしてくる。

:そのニュースで続けていううならば

わたし:うん自慢ね。笑


――このあと父は、自慢話ではなく高校に入って成績が落ちたことへの弁解をしだした。ここで素直に自慢話をしないのが父なのだ。


:高校はまず、社会に行くためのステータスだと思ってたから。しかも工業高校ね。ここ行ったら、あとは何とかなるわと、いう感じでまー勉強しないわ。びっくりするくらいに。

わたし:それはもう気持ちが折れちゃったみたいなこと?勉強に対する。

:折れたっていうか安心して。あれほど変わるんだと思って。
ほんでね、工業高校に行ったら似たようなのがいっぱいいるんだわ。生徒会長やったとか何とかっていうのは。
そんな生徒会長やったようなのが来てさ、話するのもちょっと負けたりするからな。

わたし:お父さんのプライドが傷つく感じだったんだね。

:そんな感じであんまりいい感じじゃなかったな。みんなプライドたかいんだわ。


――父は小学校、中学校と成績が1番だった。さらに生徒会長を務めるなどしたことで、ずっと優越感に浸れる状況だった。

しかし高校で挫折した。とは言わないけどそうだと思う。

工業高校に集まった人たちが自分よりも優秀で、これまでのように簡単に1番をとることができなかったのだろう。プライドが傷つきそうになった父は、「勉強をしなくなったから1番をとれなくなった」という既成事実を作ったのだ。


:ほんで今思うに。一高に入ってたら違ったと思うな。そもそも勉強嫌いじゃないほうだったから。工業高校入ってから勉強しなくなった。もう安心しきって。

わたし:一高だったら安心できなかったというのは何?何が違うの?

:だって一高だとさ、普通高校じゃん。世の中行ったら、一関一高なんてそんな大したステータスでもないだろうし。だから一高入ってれば、こんなんだけじゃ駄目だなと。だから勉強したと思うんだよ。

わたし:なるほど。1高行っとけばよかったなというか。1高行きたかったなみたいな感じ?

:行きたかった。


――結局のところ父は、一関一高に行きたかったのだ。わたしには一関一高がどんなステータスなのかわからないけど、父にとってはそうだった。

それに、普通科ならさほど勉強しなくても、1番を取り続けることができたと思っているのかもしれない。

一高への憧れがありつつも、大したステータスではない。と言い放つ父に、プライドの高さが感じられる。

プライドが高い人の自慢話ほど、聞くに堪えない話はないかもしれない。


- 今日はここまで -


プライドが高いとやっかいだ。そのプライドを守るために躍起になり、人生がまるごと翻弄される。

負けるのが嫌だから話さない。1番じゃないのが嫌だから勉強しない…。

プライドとは「誇り」だ。既成事実を作って維持した自分を誇れるはずがない。だから父は、自分で自分を褒めることができない。

<次回に続く>


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