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SIGMA fp 1ヶ月使用レビュー 後編


※ ここまではただの言い訳でした



かくかくしかじか

SIGMA fpを購入し、手に持ったわたくしの第一印象は「意外と重い」だった。筐体には密度があり、ぶん投げたら地面にめり込んでしまうような重さで人に当たったら大けがしてしまうような感じがした。サイズ感はちょっと小さな弁当箱で、レンズを付けると大乱闘ゲームで見るようなトンカチのような感じだった。左手だけでレンズとボディを握って支えてちょうどいいサイズ感で、自分は首から下げていても5時間くらいは問題なさそうな重量感だということは分かった。

一通り初期設定を済ませ写真を撮ってみた。
写真を撮った時の印象としては「背面液晶が大きくてきれい」ということだ。ミラーレスなのでレリーズ前に画面に映る画像の美しさも去ることながら、撮った写真を拡大してみたりするとその美しさや解像感がよく分かる。デフォルトだと液晶表示の色が若干こってりと出てくるので調整は必要かもしれないが、まずはその美しさに驚いた。

写真を見返してみるととにかく色や線やグラデーションや明暗様々の情報が豊かな感じがして、でも等倍にしてみてもバリバリ解像しているわけでもなく、程よいというと都合がいいが13インチのラップトップで見るには十分な感じがした。ただちょっと全体的に硬めな印象で発色も寒色が得意な気がした。ここはJPEG設定や現像でこねくり回せるポイントではあるだろうか。

購入前に気になっていた操作感、レスポンス、AF速度は確かに最新機に比べれば見劣りはするものの、特段使いこなせない範囲ではなかった。個人的にはもう少し水準器がすっきりしてくれたらありがたいかなくらいなもので、ボタンの数やダイアルの操作感など、撮っていて困るということはなかった。
ただ初期起動が、電源を入れてから撮影可能になるまでの待機時間は少し長めに感じた。個人的には「待たされる」という時間ではなく「静かに構図を脳内で作りながら構える」までの時間とも捉えられた。
撮りたいものが目の前に現れた時に即座に撮るようなまるで西部のガンマンみたいな感じではなく、じっくり目標を見ながらゆっくりと銃口を向けるスナイパーのような感覚だ。ある意味ここに時間がかかるおかげでZ30よりも丁寧に写真を撮っているような気がする。あれ、丁寧に写真を撮りたかったんだ自分…、と顧みたりもしている。

フォントが良い上に、文字の太さや大きさまでうっとりする


細かいところ


ストラップ


ストラップホールはなく、本体左右に三脚穴があり、そこにストラップ取付金具を付けることでストラップを付けることができる。襷掛けをしたときにレンズが下を向き、専有面積がなるべく少なくなるようにしたかったため、右側にはその金具を取り付けピークデザインのアンカーを結び、左側には後述の縦吊り用金具を付けてからアンカーを結んでいる。こうすることでレンズが下を向き個人的には取り回しがしやすくなっている。カメラを構えた時に左手の手のひらにストラップが来るため時によってはわずらわしさもあるが、全然許容範囲だ。

黒の質感が独特


持ち心地・グリップ感


弁当箱スタイルのため右手でしっかりグリップしてというスタイルでは手が疲れてしまう。そのため自分は左手全体で下からレンズを支え握り、全体の構図とレンズの絞りリングとフォーカスリングの操作は左手で操作し、右手はシャッターボタンとその他絞りや露出補正の操作に徹することにしたらかなり扱いやすいオペレーションとなった。

35mm F2 DG DN

また、右手主体でグリップをするようにしていた時はとにかく右手が余計なボタンに触れてしまうことが多発した。外付けのグリップもかなり持ち心地が良くなるし本当は付けたいのだが、付けてしまうと右手主体のグリップとなりボタントラブルが多発する。そのため前述のように左手主体のグリップに変更した経緯がある。

キットレンズの使用感

キットレンズの45mm F2.8 DG DNを一緒に購入し1週間ちょっと使っていた。レンズ全長も長すぎずfpのボディにちょうどいいサイズ感にまとまり、冬のコートのポケットに入るくらいだ。富士フイルムのレンズでおなじみの絞りリングもあり、フォーカスリングが若干重いと感じるがこちらも許容範囲内。レンズの描写も非常にちょうどいい。遠景で絞ればNikonで感じていたくらいの細いシャープな映り。SIGMAらしく色は白や青が濃く、赤や緑はもしかしたら不得意かもしれない。全体的には渋く目を細く睨んだような写りをする。
最短撮影距離付近ではピント位置でやや緩くなり柔らかくふんわりとした描写になる。覚えているものではFUJINON 23mm F2 R WRでの写りに似たような描写に近づく。
また、45mmという画角はD750を使っていた時にAI Nikkor 45mm F2.8Pで多少経験があった。だが、D750にはファインダーがあるということがfpでの体験と異なるところだ。

個人的に一番使いやすく、写真として撮っても・見返しても好きな画角は50mmだ。45mmはそこから5mmしか変わらないはずなのに、その5mmが個人的には誤差の範囲を超える違いを感じた。fpで45mmを使っていると、そこにありもしないファインダーを覗きたくなってしまう。自分にとって45mmという画角はギリギリファインダーが欲しくなる画角ということが分かった。

45mm F2.8 DG DN 作例

近景
近景


35mm F2 DG DN の選択


fpはなるべく軽量で運用したいと考えていたため外付けファインダーは導入したくない。背面液晶を生かして、自分にとって背面液晶で撮るのに最適な画角を考えると35mmがちょうどいいという結論に至った。
SIGMA 35mm F2 DG DNを候補に考えてみる。45mmよりも一段分のF値の違い、35mmは少し全長が長くと太くなるところ、全体的な持ち心地、操作性、左手で持ち振り回せる取り回しのしやすさはもちろん45mmの方が優位だが、自分はそれでも35mmを選ぶ。
スペック的には45mmより35mmは寄れない。それはそれで好都合で35mmは主観と客観の間、だけれど若干客観寄りの画角だと感じていて、よくやる「お花」をぐっと寄って切り撮るということはかなり主観に依ることになる。ではなく一歩、正確には一歩半くらい引いた位置から写真を撮りたいようだ。図らずも背面液晶しかないという観点で、自分の撮りたい写真の一つを省みることができたのはよかったことの一つだと思う。

35mmの最短撮影距離、これくらいでいいのだ



番外編 購入したアクセサリー

ハンドグリップ


純正のハンドグリップが右側三脚穴に取り付けられる。
もちろん付けていたら握りはよくなるが、左手で支えることがメインになってからは付けていなくても正直困らない。むしろ自分は重量が増すので外している。右手で手軽に持ち歩くとなれば有用だと思う。


純正バッテリー


言わずもがな。何をしていてもバッテリー持ちは悪い。
純正バッテリーは企業努力のおかげでとってもお安いのでいくつか買うのが吉。時々動画も撮るため自分は計3つ所持。
充電器はLUMIXの方が小さくてスマートらしいので購入検討中。

縦吊りマウント


KAKTUSさんのこちら。精度が高いので着けてしばらく経っているがガタつきなく剛性も問題なさそうである。縦吊り嗜好の方にはよいでしょう。


ハンドストラップ ピークデザイン カフ


45mm F2.8 DG DNを付けて軽快に持ち歩きたいときに、自分は左手首にカフを取り付け、左手でレンズを握りながら持ち歩いていました。45mmならカフだけで支えることも十分できるのですが、早々に35mm F2.0 DG DNに乗り換えてからは1時間くらいで痛くなってきたので、ストラップ襷掛けに戻りました。


ショルダーケース PGYTECH OneGoクラウドバックS


本体にストラップを付けずに使用していた時、首からこちらのケースに入れて下げていた。fpにサイズはジャストでクッション性や取り出しやすさなども満足でとてもよかった。いまはストラップで襷掛けなので使用していないがリュックなどに入れておくバッグインバッグのような形でおすすめ。

余談


SIGMA fpには艦これで言う「近代化改修」みたいなものがある。
ボタンやダイアルをfp Lのものに換装するというものらしい。
自分が購入したfpにはすでに施されていたが、中古購入する際などはすでにされているのかどうかなど確認するのも大事かもしれない。
(そこそこに費用がかかる)



まとめ

第一に「買ってよかった」第二に「撮って楽しい」第三に「おすすめはしにくい」

とにかく小さくて持ち運びやすく、写真を撮っても写真を見ても本体を見ても気持ちがいい。とはいえ、誰にでも勧められるかといわれると第一選択はしないと思う。「fpの見た目が良くて…買おうと思うんだけれど…」と言われたら迷わずGoを出すが、最初の1台にどうかと言われると他の選択肢も検討を加速させた方が、と勧めると思う。

筐体含めやや尖ったカメラでも見た目が好みなら即買い必須。スペック、AF性能、若干のレスポンスのひっかかり、電子シャッターであることなど昨今のトレンドや一般的な必須スペックから一段外れたような尖ったデメリット的な性能を許せてそれを使いこなす気概があれば。
カメラに合わせながらゆっくり写真を撮る、被写体とカメラを交互に見ながら、色々迷いはある中で、選ぶのではなくなにかを見定めるように、でもおだやかな感覚と撮った後に見返す背面液晶の明瞭さに感動することを、たまにでも楽しめるのであれば心からおすすめしたい。

自分にとって、fpで撮れる写真が自分らしい写真(かもしれない)と感じられると共振(狂信)できたらぜひ試してみたら、と思う。

個人的には、本当に買ってよかったカメラになっている。

夏はアイス、秋は焼き芋、冬はおでん、春はさくらもちを食べます