新村公輝

1992年生まれ。 SEICHOTSU magazine (https://seich…

新村公輝

1992年生まれ。 SEICHOTSU magazine (https://seichotsumagazine.com/)運営、 ゲイ当事者として感じたことを発信しています。 コーヒーとフットサルが好き。 同棲中。

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  • 男二人暮らし

    パートナーとの日常生活をまとめていきます!

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「ゲイ」という檻に囚われた人生を語る

「俺、実はゲイなんだよね」 そう打ち明ける時、僕はどんな表情をしているのだろう。 なるべく重たくならない様に、さぞ重大な話題では無いかの様に、震える心を静め、取り繕ってみせる。 ちゃんと狙い通りに笑えているだろうか。 自分が勝手に決めたカミングアウトに勝手にドキドキするなんて、これじゃまるで観客のいない一人芝居の様である。 それでも、どれだけこの一人芝居が滑稽だったとしても、「誰かに打ち明ける」という舞台に立てる様になっただけ大きな成長なんだ、と今では思う。 というのも

    • 僕が母へのカミングアウトを決意した理由

      先日とある夢を見た。 母親の夢だ。 僕が小学生の頃くらいの、若くて綺麗だった母親がそこにはいる。 元気そうに見えるが病気に侵されている様で、会話が出来るのはどうやらこれで最後という設定らしい。 母親が語りかけてくる。 「彼氏さんは元気? ちゃんと二人で仲良くやるんだよ」と。 まるで兄に夫婦仲を伺うのと同じ調子で。 もうこれで最期か、という寂しさで胸は一杯である。 それと同時に、秋の柔らかい風と一緒に金木犀の香りを吸い込んだ時の様な、何とも言えぬ安心感がふいにこみあげてき

      • 結婚は友情を掻っ攫っていく「敵」だと思っていた。

        なんとなく、それが全員で集まれる最後の年である予感がしていた。 コロナ禍前の2019年。 毎年恒例の様になっていた、学生時代から続く友人たちとのキャンプ。 そして恐らく、この予感はここにいる全員が抱いている。 それを裏付けるかの様に、「来年はどこに行こうか」なんて話を切り出す奴はいない。 30歳を目前に控えた結婚適齢期ど真ん中。 「カチッ、カチッ、カチッ」と、人生の選択が迫ってくる音がハッキリと聞こえていた。 「みんな結婚して、子供が大きくなったら家族ぐるみの付き合いを

        • 僕と彼の男二人暮らし~誕プレどうしてる? 編~

          「プレゼント用ですか? それともご自身用ですか?」 定型化されたこの質問に、僕の体は一瞬こわばり、身構えてしまう。 あとは支払いさえ済ませてしまえば、任務完了だというのに。 出来ることなら、自分用だと言ってしまいたい。 しかし、そう言い切ってしまうには、今店員さんが手にしているメンズ服は僕にはオーバーサイズすぎる。 何より、そうするとせっかくの誕生日プレゼントが少しばかり質素に映ってしまうだろう。 「……プレゼント用でお願いします」 気まずさを抱えながら、店員さんの目

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          俺がゲイだってこと、恐らく父は気づいてる

          バレている。 恐らく父は、息子がゲイだと気づいてる。 初めてその予感を抱いたのは、昨年実家に帰省した時のこと。 約半年ぶりの帰省ということもあってか、お客様待遇の豪勢な晩御飯を頂き、さて帰ろうかと家を出ようとした時に玄関先で父はこう言った。 「次は彼女連れてこいよー! 彼氏はあかんぞー!!」と。 ……今までも、彼女のことや結婚のことは何かにつけて言われてきた。 社会人となり実家を出て、年に1.2回しか顔を見せないとなりゃ、それも仕方ないと思える。 恐らく、結婚適齢期を4

          俺がゲイだってこと、恐らく父は気づいてる

          「俺、実は付き合ってた」〜初めて出来た同性パートナーについて〜

          数年前、初めてまともに付き合ったと言える同性の恋人と別れた。 交際期間、4年。 一緒に色んなところへ行き、海外旅行だってしたが、週の半分以上はどちらかの家で過ごしていたこともあってか日常の些細な風景の方が懐かしく感じられる。 晩飯を豪勢にする為に横並びで打ったパチンコ。 言い合いになりながらも二人でどうにかクリアまで漕ぎつけたバイオハザード。 毎年の恒例行事みたくなっていたフェス。 夜中に目を覚ますと、神経質な僕を気遣って彼が一人、音量8くらいでひっそりと映画を見ながら

          「俺、実は付き合ってた」〜初めて出来た同性パートナーについて〜

          僕と彼の男二人暮らしの家に母を入れた。

          「今、同棲しています。 ですが、相手は女性ではなく男です」  数ヶ月に一度くらいの頻度で送られてくる「元気にしてる?」という母からのラインに、ずっとチャンスを伺っていた僕は今しかないと思い、脈絡もない言葉を返信に添えてカミングアウトを実行した。 そして、今日が母の日であるということに気が付いたのはメッセージの送信ボタンを押した後だった。 よりによって母の日に僕は、花を贈るでも日頃の感謝を伝えるでもなく、ずっと自分が背負ってきた十字架を勝手極まりないタイミングと方法で押し付

          僕と彼の男二人暮らしの家に母を入れた。

          市場価値もへったくれもない男が立ち向かう転職奮闘記

          「企業からのメッセージが1件届いています!」 待ちわびていた様な、きてほしくなかった様な求人サイトからの通知を見て、恐る恐るメールを開いてみる。 「———社内で慎重に協議を重ねた結果、誠に申し訳ございませんが今回は採用を見送らせて頂くことになりました。 何卒、ご理解頂けますと幸いです。 最後にはなりますが、貴殿のこれからのご活躍とご健勝を心よりお祈り申し上げます」 心の内一面に緩衝材を敷き詰める様に、「どうせ落ちてんでしょ」と事前にハードルを下げていたにも関わらず、その

          市場価値もへったくれもない男が立ち向かう転職奮闘記

          僕と彼の男二人暮らし~家事・家計編~

          仕事を終えて夕食の材料を買うために早歩きでスーパーへ向かっている途中、アイフォンを右手にワードを変えては検索を何度も繰り返していた。 「蒸し器 ない」 「蒸し器 代用」 「フライパン 蒸せる?」 思いつく限りの組み合わせで試してみたが、どの検索結果もイマイチしっくりこない。 家にココットのような耐熱皿は無かった気がするし、鍋の中にザルを逆さ向きに入れる方法なんてサイズ的に大丈夫だろうか。 そもそも家にあるザルは耐熱なのか? と悩む。(ステンレス製なのでそうだろうが)

          僕と彼の男二人暮らし~家事・家計編~

          僕と彼の男二人暮らし~初めて友人へ紹介されました編~

          「今から帰ります。一人、一緒に来るからよろしく」 テレビを見ながらソファに寝そべりグータラ過ごしていた僕は友人達との飲み会へ行っているパートナーからのラインを見た瞬間、声にならない声を鼻から漏らし、一瞬の静止を経てからさほど広くもないリビングを3周ほどしてから、トイレへと向かった。 「トイレ汚いのが一番嫌だよな」 時間的に部屋全体の掃除は無理だと悟った僕はリビングを3周している間に何を最優先すべきかと考えた結果、トイレ掃除という答えにいきついたのだ。 綺麗になった便器

          僕と彼の男二人暮らし~初めて友人へ紹介されました編~

          僕と彼の男2人暮らし~家探し編~

          同棲をすることになった。 自分は男、相手も男。 何がきっかけでそうなったのか覚えてないが、忘れてしまえる程度のことだったのだと思うし、その程度の軽いノリで僕たち二人は、「同性パートナーと同棲」というゴールの無いマラソンのスタートを切った。 「同性パートナーと同棲している」と聞くと、さぞかし自身のセクシャリティを受け止め、振り切った生き方をしていると思われるかもしれない。 実際、僕も今まで同棲経験がある人と知り合ったことがあるが、その度に「同棲なんてひっそりと始められるもの

          僕と彼の男2人暮らし~家探し編~

          僕はこれからも小説を好きでいられるだろうか〜AI社会に向けて〜

          第170回芥川賞を、『東京都同情塔』(著・九段理江)が受賞した。 昨日のニュースで受賞作が決まったということは知っていたが、今朝の通勤中にプッシュ通知されたネットニュースによると、著者である九段さん曰く全体の5%程度は生成AIが作り出した文章をそのまま使っているらしい。 AIが生み出した文章って、一体どんな感じなのだろう。気になる。 「あ、ここAIが書いた文章だな」なんて、分かったりするんだろうか。 いや、きっと分かんないんだろうな。 Chat GPTがオープンされてか

          僕はこれからも小説を好きでいられるだろうか〜AI社会に向けて〜

          辞めない方が迷惑 ってこともあると思う

          大学を卒業し晴れて社会人の仲間入りを果たしたあの頃、学生時代の仲間と飲む時の話題は専ら仕事に対することであった。 「最近仕事の方はどうよ?」 各々の不満を肴に、自らの境遇の過酷さをひけらかしあい、尿酸値のことなんか気にせずにさほど好きでもないビールを得意げに飲み続けていた22歳の自分がとても懐かしい。 それから年を重ね、友人等と会った時にかけられる言葉達は次第に「今は何の仕事してんの?」と転職していること前提のものとなり、ついには久しぶりに会っても職については何も聞かれ

          辞めない方が迷惑 ってこともあると思う

          自分が何者か考えた結果、「ゲイである」ことしか残らなかった話

          「30歳にして転職経験3回」 この言葉は一般的にどう聞こえるのだろうか。 ほとんどの人にとって、あまりよろしくはない響きであることは確かだろう。 ましてや同じ「転職3回」でも、向上心溢れるアクティブ転職モンスターと、防戦一方逃げ足の速いネガティブ転職モンスターの2つに分かれるが、僕の場合は後者であるので目も当てられない。 人生で4回目の退職届を提出した時、「もう正社員として働くのは厳しいな」と思った。 まず、まともな企業ならこんなリスキーな人間は採用しないだろう。 そして、

          自分が何者か考えた結果、「ゲイである」ことしか残らなかった話