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アキタヒデキ
evylockのフルアルバム「profunda bluo」。
ジャケットのアートはこちら。
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/19085142/picture_pc_41cd571303d264bda9cb9f9f47872909.jpg?width=1200)
担当しているのは、アキタヒデキくんです。
今回、アルバムを制作するにあたって、アート・ディレクションは、彼しかいないと最初から考えていました。
超多忙な彼に、アルバムのコンセプトを説明し、頼み込みました。
evylock×宮澤賢治を表現できるのは、
君しかいない、と笑
アルバムのタイトルは、
「profunda bluo(深青)」
このタイトルに結びついた、彼の作品があります。
彼が2015年に企画した写真展「こころ」のメインビジュアルとなった作品です。
宇宙空間のような深青の大地を、人がその先の闇に向かって進んでいく、そんな作品です。
2013年3月に彼が書いた文章が、この写真展のフライヤーに添えてありました。
「またの名を望郷魚わがてのひらの生命線を今夜ものぼる
いつも石狩川を渡っていた。幼い頃母とプラネタリウムを見に行く時も、小中学生の頃、友人と市街地に遊びに行くときにも川を渡った。あまり行きたくもない高校へ向かう時も川を渡ったし、生まれ育った旭川の街を出るときにもやはり川を渡った。
幼い私が母に手を引かれ小さな橋の上を歩く時、川の向こうに得体の知れない大きな何かを感じていた。自分の意思の及ばない絶対的な力。川の向こうの世界はどこまでも果てがなく、永遠に続いているようだった。対岸に途方もなく大きななにかを感じながら川を渡る時、うらぶれた橋を歩いて渡っている自分たち親子があまりにも小さく思えて、世界から家族を守らなければというような、使命感のようなものを感じながら手を引かれていた事を今でもよく覚えている。川の向こうに何かを見ながら、いつしか石狩川は私の心の中にひとつの境界線として存在していた。
家という小さな世界から外へ出るようになり、そして橋を渡った。旭川、北海道、日本という境界を越える中で、地球をも意識できるようになっていき、ベトナムの山奥では宇宙さえも意識した。現実の距離の中で存在している境界線だけではなく、概念の中で存在しているたくさんの曖昧な境界線についても、少しずつ意識できるようになっていった。様々な境界線を越えて、大きなものの見方、陰と陽の入り交じった世界の事を少しずつ考えるようになっていたけれど、石狩川という境界線は特別だった。
私は今、小さな頃に見た境界線のむこう、果てしなく続いていた世界で生活している。小さな頃に比べれば随分遠い所へ行けるようになった。様々なものに限りや果てがある事も知った。そうしてたくさんの時間が流れ、幼かった頃に母と渡った小さな橋も、今はもうなくなってしまった。同じ名前の別の橋になった。走り回って遊んでいた家の近所の景色も随分変わった。いつもお菓子を買いに通った商店もなくなったし、記憶の中で黄金色に輝いていた場所も雑草に覆い隠されてしまった。生活の中で、悩みも驚くほど増えた。現実にうちのめされ、処理しきれない気持ちを抱えたまま、ときに恐ろしさを感じるほどの早さで時間が流れ、毎日が指の間からすり抜けてゆく。
悲しみでいっぱいになった真夜中、私は目をつぶる。対岸、果てのない世界から、今はもう無くなってしまったあの橋を渡り、黄金色に輝く世界へ帰ってゆく。あたたかい光の中、大切なものを想い、対話し、悲しみを溶かす。そしてまた、小さな橋を渡るのだ。
アキタヒデキ」
彼の作品に”ことば”は無くとも、そこに”ことば”は確実に存在しています。
私の脳裏には、この作品の残像がずっと消えずにいました。
彼に、そのことを伝えると
「この作品は、賢治の世界観をイメージしている」
と教えてくれました。
※後日アキタくんからは、「宮沢賢治の世界観をイメージしているのではなく、先を歩く何者かに賢治を感じていた。それは生きている人でもあり、死者でもあり、友人でもあり、賢治でもある」との正式な解釈をいただきました。上記した私の曖昧な記憶を、正してもらいました。ありがとう。
札幌の喫茶店で、2人で色々話し込むうちに、やはり今回のメインアートは、この作品を使おう!という話になりました。
満場一致です(2人だけですが)。
さて、アキタくんと私が揃うと、なんとも話が尽きません。
お互い、星野道夫さんが好きなこともあり、道夫トークもひとしきり。
なかなか、話が前に進みません。
そして、お互い凝り性です。
アートワークに入れる文字をどうするか、という話になったときのこと。
せっかくだから、
曲目だけ私が所蔵している、
初版の「宮澤賢治全集」、
賢治さんの親友、藤原嘉藤治が持っていた大正時代の音楽本、
から文字を引っ張ってこようという話になりました。
「やっぱり、活版印刷の文字カッコいいよねー!」
とアキタくん。
結果、
ひと文字ずつ、本から探し出し、スキャンする途方もない作業に。
めちゃくちゃ時間がかかりました、笑。
今は、活版印刷風のフォントなんて、いくらでもあります。
でも、彼はあくまで本物にこだわってくれます。
その姿勢こそ、私がアキタヒデキを愛してやまない理由です。
印刷され、CDという製品になるからこそ、とことん細部までこだわりたい。
サブスク配信では、ここまで伝えることはできません。
全曲、彼はアルバムの楽曲に合う写真を選んでくれました。
物語があります。
ぜひ、総合芸術としての製品盤を手に取り、私たちの世界観を感じてほしいです。
リリース後にまた、
こんな細かい解説いらんわ!
というアキタくんの魅力をお伝えできれば。
マジ、アキタヒデキに出会えてよかった。
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