DSC00815のコピー

2011.1.2

一晩でたくさん夢を見た。

どんな夢かは覚えていない。

でも、どれも不思議な夢だったことだけは覚えている。


標高4,410mのディンボチェでの朝を迎えた。

昨夜、ラクパさんから処方されたダイアモックスのせいで、夜中は二時間おきに尿意で目が覚めた。

どうしてこんな薬を飲むことになったかというと、この薬は初期の高山病に効くとされているからだ。

昨夜までの私のコンディションを見て、ラクパさんは必要だと判断し、一錠を半分に割ったブツをくれた。

ダイアモックス錠は、一般的には緑内障の治療に使用されている薬で、体内の余分な水分を取る働きがある。

それで、オシッコがよく出るのだ。

だから、水分もたくさん摂らなければならず、ラクパさんからは2リットルは絶対に飲めと言われていた。

しょうがないので、夜通し水分を摂り続け、本当に2リットルのペットボトルを空にした。

実際にこの利尿作用が高山病に効くわけではなく、酸素の薄いところにいくと機能しづらくなる延髄の呼吸の中枢を、この薬で刺激するらしい。

これが、初期の高山病には効果があるとされているのだ。

中にはダイアモックスをドーピングのように扱い嫌う人たちもいるみたいだが、私はドーピング云々よりも、本の中の登山家たちの間に頻繁に登場する噂の薬を、単純に飲んでみたかった。

実際に、どんなものなのかと。

ダイアモックスのおかげかは分からないが、コンディションは昨夜よりも随分と良くなっていた。

これまで感じていた息苦しさも、いつしか消えていた。

人生初の4,000m越えでの一泊。

自分が今、富士山よりも標高の高いところにいるという感覚が、不思議だった。

今日、本当だったらポカルデのベースキャンプ地まで行く予定であったが、ラクパさんの判断で高度順化の一日となった。

と、いうわけでロッジの裏山に登ることに。

息は切れるが、これまでの体調不良が嘘のごとくすこぶる快調!

黒いヤクが山の斜面でのんびり昼寝をしていた。

全身に戻ってきた感覚に喜びを噛みしめながら、ヒマラヤの絶景群に胸をときめかせる。

画像1

ニマ・コウキピークと勝手に名付けた無名峰を4,800mまで登ったところで、下山。

無理は禁物。

ロッジに戻り、お湯で顔と足の汚れを洗い流す。


ふと、故郷十勝の温泉を思い出した。

茶褐色に濁り、冬には白い湯気がまるで生き物のように蠢くあのモール温泉を。

この汗と埃と垢でガビガビになった体でダイブしたい。

やっぱり、温泉っていいもんだなぁ。

温泉がある日本って最高だなぁ。

あーーーーー恋しい・・・。


ダル(豆のスープ)、ピリ辛の大根の漬物を食べ、夜は外でこぼれ落ちそうな星を写真に収めた。

無限に広がる闇に包まれながら、瞬く白光を気の向くままにしばらく眺めていた。


つづく

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