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病院わらし 第8話

 さようなら病院わらし 私たちはおかっぱ頭女の子を『病院わらし』という名前にしました。座敷に居れば『座敷わらし』 ここは病院だから『病院わらし』というわけです。 三人の時だけ時々話題にしましたが、それもほとんどなくなってしまいました。 でも、私はまたいつか会いたいと思っていたのです。 サトシくんと仲良く遊んでいたおかっぱ頭ちゃん。 遠藤さんのないはずの足を一生懸命にさすっていたおかっぱ頭ちゃん。 おひな様を見あげて「タエちゃん」とつぶやいていたさびしそうなおかっぱ頭ち

    • 病院わらし 第7話

       なんでも知っている椿さん 病院の仕事に戻って、またいそがしい毎日がはじまりました。 ゆうこさんやよしみさんとも会ってごはんを食べたり、遊びに行ったりできるようになりました。 二人は私が病院をお休みしていたあいだも不思議なはなしをせっせと集めていたようで、いろいろきかせてくれました。 でも、どんな話を聞いても、私の中の『タエちゃん』と『山本様』の答えにはなりませんでした。 こうなったらだれか知っていそうな人に聞くしかありません。 先輩の看護師さんに

      • 病院わらし 第6話

         母危篤 『タエちゃん』も『山本様』も気になっていましたが、もっとたいへんなことが私の身におこりました。 私の生まれて育ったところは勤務先の病院のある大きな町からとても遠い地方の町です。 私には弟と妹がいます。 妹は私と同じように故郷を出て都会で就職して、そこで知り合った人と結婚をして家庭を作りました。 弟だけが実家からあまり遠くない街で仕事をしながら一人暮らしをしています。 父はずっと前に亡くなったのですが、母は私が育った町で一人で元気に暮らしています。

        • 病院わらし 第5話

          おかっぱ頭の女の子 新しい年になって、二月の半ばになると小児科病棟の前には大人の背丈くらいの立派なおひな様の段飾りがかざられました。 一番上の段のひときわ大きいお内裏さまはやさしいお顔立ちです。 三人官女や五人囃子、おともの家来。黒漆塗りにきれいな金の絵が付いたおままごとのようなお道具もたくさんあります。 プレイルームに来た子どもたちはおひな様を見て、看護師さんたちとひな祭りの歌を歌ったりしていました。 その日、私は夜勤でした。 見回りのためにろうかを歩いていると

        病院わらし 第8話

          病院わらし 第4話

          病院の中は不思議がいっぱい ゆうこさんと私がそれぞれ病棟内で不思議な経験をしてから私たちは不思議な話を探すことに夢中になっていきました。 ある看護師さんが話してくれたことです。 ガンになって手術をうけることになった五十代の女性の患者さんがいました。 その人は癌になったことがショックで手術もこわくてたまらず夜寝られなかったそうです。 お医者様が何を言っても 「もう、自分は助からない。 死んでしまうのだ」と思い込んで一人でメソメソないているばかりだったそうです。 その人は若

          病院わらし 第4話

          病院わらし 第3話

          切断したはずの足が痛い? (外科病棟で起きたこと) 私にはこの病院の看護師仲間で親しい友達が二人います。 外科病棟でお仕事をしているゆうこさんとふだんは眼科の外来にいるよしみさんです。 お休みの日にはショッピングに行ったり、三人の予定を合わせて旅行に行ったりしています。 たまたま食堂で顔を合わせていっしょにお昼ご飯を食べていたとき、外科病棟で仕事をしているゆうこさんが 「ねえ、聞いてくれる?」と真剣な顔で話し出しました。 外科病棟はケガをした人が入院するところ

          病院わらし 第3話

          病院わらし 第2話

          第二話  トモキくんにしか見えない?      (小児科病棟で起きたこと) 現代 私は都会の大病院で看護師をしています。 大病院には毎日たくさんの病気の人や、ケガをした人がやってきますし、病院なのに中にレストランやコンビニ、美容室、銀行の窓口もありますから働いている人も大勢います。 大病院の看護師にはたくさんの種類の仕事があります。 毎日外来にやってくる患者さんのお世話をする人。 注射やきずの手当てをする人。 手術の時お医者さんのお手伝いをする人。 入院して

          病院わらし 第2話

          病院わらし 第一話

          あらすじ 昭和の始め頃の山深い村。小学校の低学年くらいの少女が突然の病気で都会の大病院に入院するものの亡くなってしまう。 現代。大病院の小児科病棟の看護師として勤務している私は病棟でときどき小さな女の子の幻覚を見るようになる。少女はいつも誰かを探しているようだった。そして少女を見た時はいつも不思議な事がおきた。 私の母が危篤になり、郷里に帰って弟妹と苦しむ母を看病していると、ある晩三人の夢の中で幻覚の少女が亡くなった父を連れてきて母を安らかに逝かせてくれた。病院に戻った私は

          病院わらし 第一話

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          性別は女     いつもジャンルを問わず     何かを作っていたい。     特に布関係       パッチワーク       洋裁       刺しゅう       バッグ               時々小説もどきを書く     そんなことをしながらお金をかけずに     「一人遊び」を楽しんでいる。 創作する時のモットーは「なるべくお金をかけない」です。そのために、お金を出して教室に入ったりはせず、何か作ろうとする時は自分の今まで習得してきた技術や知識を総動員してそ

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