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20年前のROCKIN'ON JAPANが捨てられないからもう少し生きよう

クリスマスイブに体調を崩した。
同僚の家でクリスマス会をやろうと誘われ、クールに構えつつ内心ワクワクしながらプレゼントを選んで夜な夜なラッピングをしていたのに前日に寝込んでしまった。
私は本当にこういうところがある。その度に布団の中で不甲斐なさを数えてしまう。

YouTubeでロシアン佐藤さんがおいしそうに食べていたセブンイレブンの冷凍食品がずっと気になっていた。いつもは母がご飯を作ってくれるので、家族が出かけて1人の日に食べてみようと決めていた。
イブは家族が出かけたのでセブンイレブンチャンスだった。実はここ数日体調がよくなかったが、脳の難病の父が問題を起こして今後のことを考えて落ち込んでいたこともあり、気分を上げようとセブンに赴き冷凍食品をしこたま買った。鳥のつくね、ピザ、つけ麺、お好み焼き。つけ麺は2人前あった。これを全部1人で食べていいんだとワクワクした。全部をチンしてモリモリ食べた。絶好調とは言いがたい体にテンションだけでモリモリと詰め込まれる油と糖。その日の夜、割れるような頭痛と気持ち悪さで布団の中でリアルに頭を抱えた。

体調が悪い時に考えることはたいがいろくでもない。
この体調不良がずっと続いたらどうしよう。病気を抱えている方はこんな気持ちでずっと入院をしてるのだろうか。なんてことだ。今この瞬間に入院している人々へ思いを巡らせて途方に暮れた後、将来の不安や過去の自分の不甲斐なさを数えたりして「早く楽になりたいよう」と数時間唸っていたらいつの間にか寝ていた。

クリスマス会は不参加にしたが、プレゼントはどうしても届けたくてノーメイクパジャマのまま届けに行った。
玄関口で受け取った同僚は「なんで来たんや」という表情をしていた。私が逆の立場でもそうなるわと思った。渡した後すぐ帰った私に、メンバーがめちゃくちゃ労いのLINEをくれた。逆に気を遣わせとるやないか。でも夜な夜なラッピングしたプレゼントが無事に届いて私はホッとしていた。底抜けに明るいLINEを返した。

自分の体調不良を自覚して、1日ゆっくり休んだら体が楽になった。気づくと「クリスマス会に行ってみんなを
楽しませなければ」「あの話は避けて全員が楽しめる話をしなければ」「みんなが食べ残したらチキンを食べなければ」という勝手な緊張から解き放たれて気持ちも楽になっていた。誰にもそんなこと頼まれていないので、セルフで背負っている緊張である。このセルフ緊張は自覚がなくて毎回終わってからから気づく。これももう自分の性分だと三十路を過ぎてから笑えるようになった。

体も楽になったので、おずおず部屋の片付けを進める。
服はいる・いらないをすぐ分別できるのに、本はいる・いらないの分別がとても難しい。中でも難しいのは過去の音楽雑誌だった。
音楽好きの姉の影響で小学生からおこづかいで集め始めた音楽雑誌。好きなアーティストがどんな気持ちでこの曲を書き演奏して歌っているのかを知れるのが嬉しくて、歴代刺さった言葉をノートに移したり友達と熱く語語り合って生きてきた。

社会人になってからは音楽雑誌も買わなくなった。手元に残っているのは2000年から2014年辺りのもので、発行年月日順に並んで本棚を占めている。

2000年のROCKIN'ON JAPANを開いた。
本編に入る前にジュディマリのアルバム発売広告が目に入る。椎名林檎さんはホクロがあり、勝訴ストリップについて話している。語り口調はまだタメ口でやさぐれている。BUMPはTHE LIVING DEADについて話している。「何があっても続・くだらない唄を書いたような俺がいるんですから大丈夫です!」と藤井さんが今では使わない言葉を使っている。4人の写真はテンションが高すぎる。
インザスープが風の子を発売した広告が載っている。くるりに森さんがいる。GO!GO!7188がいる。175Rが、レミオロメンが、ELLEGARDENが、100sがいる。書ききれない。書ききれないほどあまりに私の人生の出来事とリンクし過ぎていて、「捨てれるわけないな」という確信だけが残った。

「あの頃はよかったなぁ」みたいな感情ではない。「あの頃のこのアーティストはよかったな」とか、「あの頃に戻りたい」とか「これを読んでまた思い出したい」とかではなくて、なんと言えばいいのかわからないけれどあまりにも「私の人生を辿る行為」で、自分の過去の写真を見返すよりもずっと自分の足跡を見ているようで、唯一無二の感情だった。

2000年のROCKIN'ON JAPANを開いてこの感覚を覚えるのは自分だけだ。似た気持ちを抱く人がいたとしても、自分の心の中と同じ色と形をしている人はいない。最近よくそう思う。

来年も、5年後も、10年後も、私は2000年のROCKIN'ON JAPANを開いてそう思うだろうか。

なんだか、もう少し生きてみようと思った。


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