「ゴブリンでもわかるゲームプログラミング」第37話 ~読むだけでゲームプログラミングがなんとなくわかるようになる謎のファンタジー小説~

本作は連載作品です。第1話は下記です。
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「ハハ、オモロ……ムシミタイダナ」

 ゴブリンは嘲るように笑いながらも、その手のひらに魔力を込め、その力をスパに向けて解き放たんとする。

 と……

「〝瞬く炎よ―― はしれ 瞬炎フラッシュ・フレイム〟」

「ゴ……? グワッ!?」

 閃光のような炎の筋がスパとゴブリンの間を駆け、ゴブリンは炎を受け、一歩、後退する。

「〝力水よ―― 押し流せ 搬水流リフト・スプラッシュ〟」

「お? おぉおおおお……うわぁあああ」

 更に、オーエスが発生させた水流により、スパが流されていく。

 ルビィとオーエスにより、荒療治ではあるが、ひとまずゴブリンとスパを引きはがすことに成功した。

「まさかルビィ嬢がこんな正義感があるとは思わなかったよ」

「別に……私は私の矜持きょうじを守りたいだけ」

「ルビィ嬢、世間ではそれを正義感と言うのだよ」

「……」

 オーエスの言葉にルビィは返答の言葉に詰まる。

 だが、やがて……

「フリー、あなた回復魔法が使えたわよね?」

「あ、あぁ……たしなむ程度だが……」

「十分よ……倒れている二人を頼むわ」

「……わかった」

 そうして、オーエスは倒れている男子生徒と女子生徒の元へと向かい、安全なところへ移動させ始める。

 と……

「〝ウガツトゲ〟ェ」

「っ……!?」

 激しいとげの嵐がルビィを襲う。

「っ……〝炎壁フレイム・ウォール〟!」

 ルビィはなんとか炎の壁を発生させて、棘を防ぐ。

「ホォ……ヤルナ……コムスメ」

「っ……」

 ゴブリンが不敵な笑みを浮かべる。

 ……

 ルビィとゴブリンの激しい戦いは続いていた。

 ルビィはすごかった。

 とても初めての実戦演習とは思えない程に、強力な炎魔法を連発し、ゴブリンを食い止めていた。

 ルビィがすごいのは確かであった。

 だが、それ以上に……

「〝マタタクタマ〟ァ」

 ゴブリンが無数の石球をまき散らす。

「くっ……!」

 ルビィは歯を食いしばりながらも、なんとかそれに対処している。

 正直、その光景には、ユキも驚きを隠せなかった。

(なんなんだ、このゴブリン……俺の知ってるゴブリンと違う……ゴブリンってこんなにバキバキに魔法使ってくる生物なのか!?)

 ルビィは善戦しながらも、徐々にゴブリンに押されてきているのは明らかであった。

 となれば……

実行エグゼ!」

 ユキの魔道具から放たれた氷の礫により、ゴブリンが放っていた魔法マタタクタマの石球をいくつかは掻き消せたであろう。

「ゴ……?」

「……リバイスくん?」

「自分も微力ながら参戦します」

「……」

 ルビィはユキの参戦宣言に、歯がゆそうに唇を噛みしめる。
 ユキに助けに入られるのは悔しいが、現状について彼女も正しく判断できており、拒む程の説得力を持ち合わせいなかった。

 そこからしばらく一進一退の攻防が続く。

 ユキが参戦したことで、多少は状況がましになったかもしれないが、ユキが自認している通り、微力はあくまで微力であった。
 戦況を覆すほどの勢いはない。

 そんな中でもユキは必死にこの状況を打開するための思考を巡らせていた。

(……俺のスプリンクラー戦闘版バトル・エディションじゃ、普通に使ってたら、どう考えても威力不足……超至近距離でぶち込むくらいじゃないと大きなダメージにはならない……なんとか奴に近づくことはできないだろうか……なんとか……)

 と……

「〝ウガツトゲ〟ェ」

「っ……!」

 ゴブリンはその間にも攻撃の手を緩めない。
 ゴブリンの狙いは先ほどから徹底してルビィ。どうやらユキのことは邪魔な羽虫程度にしか思っていないようだ。
 そして、再び、激しいとげの嵐がルビィを襲う。

「っ……〝炎壁フレイム・ウォール〟」

 ルビィも素早い反応で炎の壁を展開しようとする。

 が、しかし……

「「っっ!?」」

(…………炎の壁が……薄い……!)

 魔力の枯渇……強力な魔法を連発していたルビィの魔力がついに枯渇し始めたのである。

「きゃぁあ!!」

 いくつかの棘が壁を貫通して、ルビィへと襲い掛かる。
 それでもルビィは、何とか致命傷を避けるも脚には棘が刺さっている。

 そして……

「〝タケルイワ〟ァ!!」

 ゴブリンはその隙を見逃さなかった。

 強力な魔法で、容赦なく追い打ちをかける。

 巨大な岩石が発生し、ルビィに向かって発進する。

「っ……!」

 ルビィはその方向を見据えてはいるが、素早く動くことができない。
 なんとか這いつくばるように移動するが、巨大な岩の攻撃範囲から逃れることができない。

 あ…………やばい……死ぬ……

 ルビィは強烈な臨死感に襲われる。

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