ずっと欲しかったサントラを買った

昔からずっと欲しかったゲームのサントラがあった。しかしその時の懐事情や店舗の在庫状況や私の精神状況などにより、買い損なうこと10年ぐらい。ようやく手に入ったそれをプレーヤーにセットし、満ち足りた気持ちでイヤホンを着けた私の耳には待ち望んでいた音楽が爆音で響いた。心地よい音ではなく、爆音で、だ。

めっちゃ耳痛いんですけど? 誰の仕業?

痛む耳に顔をしかめながら、私の楽しみに水をさした諸悪の根源を探しだし(父だった)締め上げた後に、再びイヤホンを、今度はおそるおそる耳に着ける。「全部話しておきたいんだ」程よい音量で流れ出した台詞に思わず拳を握る。短くもこちらの記憶を揺さぶる台詞が終わり、続いて流れるのは『ザナルカンドにて』。もう駄目だ。涙腺をぶん殴られた私は真顔で泣いた。

ここまででなんの作品のサントラかわかった人は握手をしましょう。名作ですよね。音楽も素晴らしかった。リメイク版やりました? もとから綺麗な映像がさらに綺麗になってて感動しますよ。

と、うっかりタイトルを言い忘れて語りだしそうになる程好きなこの作品の名前は『FINAL FANTASY X』だ。私が子供の頃にプレステ2で発売された名作ゲームである。ゲーマーには遠く及ばないがそれなりの数のゲームと共に成長してきた私が、一番好きな作品をあげて、と問われた時に迷わず答える作品。ちなみに続編の『FINAL FANTASY XーⅡ』も雰囲気はがらっと変わるが、ストーリーが良く、トゥルーエンドにたどり着けた時の感動は素晴らしい。

『FINAL FANTASY X』。映像、ストーリー、音楽、ゲーム難易度、全てが私好みだが、特に推したいのはストーリー。涙腺弱めの私だが、何故かゲームでは泣いたことはなかった。それがこのゲームでは終盤に向かって感情が揺さぶられ、ぼろぼろに泣いた。しばらくは主人公のティーダという名前を聞くだけで熱く込み上げるものがあった。

最初は父がプレイするのを横で見ていた。父のゲームを眺めているのはいつものことだったが、泣いたのは初めてで父は狼狽えた。少し年を重ねて、次に自分がプレイした時。結末を知っているがために切なさを増した序盤から中盤をこえ、ラストダンジョンを攻略し、後はラスボスを倒すだけ。そこまでいって、私は逃げた。物語を終わらせたくなくて、エクストラダンジョンでひたすらキャラクターたちを強くした。これ以上強く出来ないところまでやりこんで、そこで諦めた。物語を私の手で終わらせよう、と。強くなったキャラクターたちは、あっけない程簡単にラスボスを倒し、夢から覚めて、物語は終わった。美しい物語だった。

当時のゲームでは最高レベルの映像美もその美しさをよく助けていた。あれから技術はどんどん進歩していったが、私はこの作品以上に美しいものをまだ知らない。それにたとえどんなに優れた作品に出会ったとしても、私のゲーム体験においてこの作品はずっと、ずっと輝き続けるだろうと思う。

サントラはとりあえずディスク全てを聴き終えた。二回目はどうせなら本編をもう一度クリアしてから聴いてみたい。今度はエンディングから逃げ出さずに駆け抜けようと思う。せっかく手に入れたサントラだ。何度だって素敵な音の波に浸りたい。




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