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④「コロナウイルスのパンデミックをふりかえって~ある地方開業医の視点~」                      第2章 2020.1の横浜ダイヤモンドプリンセス号のクラスター発生から2023.4の症例発生全数報告の終了まで     3 当院での例外的なゾコーバ投与の経験    

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3 当院での例外的なゾコーバ投与の経験
 
 当院はけっして、多くの患者の診断はしてない。だが、2023.1~2、A県のO市で、75人ほどゾコーバが投与されていて。そのうち33人が当院で投与という特別な状況がうまれた。
 その背景は説明がめんどうだが、既に投与可能とされていラゲブリオ、パキロビット、レムデシビルは、いろいろな投与制限があり、ぼくのところのような小さな開業医では、実質投与できなかったのだが、2022.12に発売されたゾコーバはあまりに、投与数が少ないため、いわゆる「二次募集」がおこなわれ、それに申し込み、1月はじめから投与可能となったのだった。その結果、2023.4に投与制限が解除(どの医療期間でも投与可能)されるまでの約2ヶ月間、A県のO市でのゾコーバ投与の多くが当院での投与がしめる、という異常事態となったのだった。
 
 重症化したときの治療薬の必要性に異論は少ない。たとえ、ラゲブリオ、パキロビット、レムデシビルがシャープに抗ウイルス作用をもつものでなくても、何もないより使える武器は多い方がいい。
 一方、何もしなくても1週間くらいでなおっていくケースで、抗コロナウイルス薬を投与することは意見がわかれるところだ。
 否定派は、必要がない、薬の副作用だけで体によくない、実際はそれほど早くなおす力はない、と言う。これは、抗インフルエンザ薬に関しても同じこと。実際、開業医の中には、抗インフルエンザ薬に否定的で処方しない者も決して少なくなく、それが「異端」とまではいえない現実がある。
 一方、肯定派は、体を早く楽にする、早くウイルス量を抑えれば人にうつしにくくなるので広がりを防ぐ、後遺症予防になる、と言う。
 ともに妥協点をみつけるかのように「重症化リスクのある高齢者や持病のある人には投与を推奨」ということは、インフルエンザ感染でもコロナウイルス感染でもけっこう声高にいわれる。

*インフルエンザでは、幼児小児の脳炎の合併症の話はよくでるが、コロナウイルスでは少ない。一方、コロナウイルスでよくでてくる味覚嗅覚障害、あるいは「慢性疲労症候群」のような後遺症の話はインフルエンザでは少ない。ただ、デルタ株と比べオミクロン株ではこの点に関してずいぶん減ったという印象だ。
*静注薬であるレムデシビルはおいておいて。ラゲブリオはかなり大きな錠剤で1日6錠を5日間服用することは高齢者にはハードルが高い。パキロビットは併用禁忌薬が多い上に、腎機能による投与量の選択に血液検査がいるので、すぐに血液検査の結果がでない開業医では投与しにくい。一方、ゾコーバは、(日本が臨床試験の仕方が下手ということもあって、要領よく試験をして論文にする外国と比べて)エビデンスが弱い=本当にこれ効くの?という声がしばしば聴かれる。
 
 
当院でR5.1~R5.2までのコロナ患者は161例で、32例にゾコーバ投与。
161例すべての症例に、メリットとデメリットを説明し、ゾコーバを投与するかどうかをきめていただき、投与の際は同意書に署名してもらった。

その内訳:
           年齢(平均) 男/女  ワクチン接種回数(平均)
 コロナ陽性全体 161例   34歳     75/86    2.0

   ゾコーバあり32例   26歳    17/15    2.4
  ゾコーバなし129例   42歳     58/71    1.9
 
 
 その投与対象の傾向について、決定木 (有意差とかP値とか回帰分析とかと少し離れ、直感的にみてみた)の手法でみてみたものが下記である。

 *これだけの数の同意が得られたのは、当時、薬代が「無料」だったということはとても大きい。3割負担で¥15000 かかる現在、ゾコーバの処方を希望する方は皆無である。ましてや、¥30000かかるラゲブリオやパキロピットをや。ちなみに、抗インフルエンザ薬は、1/10の¥1500。

第①話ヘのリンク:①「コロナウイルスのパンデミックをふりかえって~ある地方開業医の視点~」                      第1章 コロナウイルスパンデミックは、今まで隠れていた現実を、いろいろ垣間見せ、あぶり|kojikoji (note.com)

第⑤話へのリンク:⑤「コロナウイルスのパンデミックをふりかえって~ある地方開業医の視点~」                      第2章 2020.1の横浜ダイヤモンドプリンセス号のクラスター発生から2023.4の症|kojikoji (note.com)

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