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宇宙の物差しもイノベーションが続く

以前に、周囲の星を摂取して死後に再爆発する超新星の話をしました。

その際に、超新星は明るさが正確なので、宇宙の膨張速度を測る物差しにも使われ、それによって加速度膨張が確認されたという話をしました。

それまでの方法は、宇宙背景輻射(CMBと呼称)のムラの度合いを参考にしていました。

膨張速度の速さは、史上初めて膨張を観測した人物の名前をとって「ハッブル定数」と呼ばれます。

CMB方式では、67 – 68 (km/s)/Mpcという値でした。(本題でないので単位の意味合いは加速度、というイメージで流します)

そして冒頭記事の超新星方式では、約 71 – 75 (km/s)/Mpcとなり、膨張速度が想定より早いとザワザワしたわけです。

ただ、こういった経緯を知ると、まだ超新星方式をうのみにするわけにはいきません。

実際に、他の手法も考案されているようです。

ようは、
CMB・超新星方式のほかに、
・メーザー方式
・重力レンズ方式
も考案されている、という話です。

メーザーというのは、レーザーの可視光がマイクロ波に置き換わったもの、です。(レーザーの説明は割愛)

1つだけ、解説記事を紹介しておきます。

で、メーザーの発生源ですが、この方式ではブラックホールの周囲から間接的に発生するメーザー(的な物質)を物差しにするアプローチです。ただ、まだまだ成功率は低いようです。

そして次が重力レンズ方式です。

まず、重力レンズの発明された経緯は以前にも解説したので引用にとどめておきます。

重力レンズは通常、銀河の方角で見られます。

例えば、銀河が地球とはるか遠くにあるクエーサー(あまりにも明るいため点光源のように見える天体)の間にある場合、クェーサーからの光はより近い銀河の周りにレンズを向けられるため、私たちはより遠くにある天体の複数の画像を見ることができます。

銀河の周りのレンズの経路が異なると距離も異なるため、クエーサーの各画像が時間的にわずかにずれます。
ただ、その差は数十~数百年で、時間スケールからすると物差しとしては、やや実用性に欠けます。
ただ、それが超新星だとすれば、もう少し観察できる可能性があります。

厳密には発見者の名をとって「レフスダル」と呼ばれ、2018年までにこの天体現象は6回確認しています。

その限られた中でハッブル定数を計算したところ、63 – 70 (km/s)/Mpcで、CMB方式とほぼ一致しました。

ただし、まだサンプルも少ないため、精度については検討の予知があるようです。

ちなみに、パイオニアとなったハッブルですが、彼は赤方偏移(各天体の後退速度を間接的に推測)を活用して、当初 500 (km/s)/Mpcと計算しました。

この値から逆算すると、宇宙年齢は約20億年となり、地球年齢よりも若くなってしまいます。

ハッブルは偉大な科学者(元弁護士)ですが、どんな天才でも完璧ではないと(やや私のような)凡人をほっこりさせてくれるエピソードです。

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