脳の大統一理論!?:自由エネルギー原理とは
前回、LLMが数学の未解決問題を解いた話をし、そこから人間の脳の解明にもつながるのでは?、と結びました。
現時点で、脳の知性を解明する有力な理論は出てきていません。ただ、意識については2つほど有名なものはあります。過去に触れた記事を載せておきます。
ただ、これはあくまで脳の1機能である「意識」に意識を向けたものです。
実は、脳がかかわる活動には共通原理がある、とする野心的な仮説があります。多様な活動を1つの原理で説明できるため、比ゆ的に「脳の大統一理論」とも言われます。
正式には「自由エネルギー原理」とよばれる仮説で、2006年に神経科学者フリストンが提唱しました。
難解な理論で自分自身がうまく咀嚼していない、というのが本音ですが、自分の理解のために砕いて書いてみます。
まず、脳内と外界(脳の外)を2つに分け、常に脳内では生成モデルと呼ばれるものを更新続けます。最後にふれますが、このあたりはやや最新のAI手法(LLM)と似ています。
こういった環境設定のもと、常に脳は外界から情報を受け取り、そこから予想されることとと、生成モデル最新バージョンとを比較して補正します。
この原理が野心的なのは、そのプロセスをベイズ推定という確率統計の分野で定義し、そこから導き出される「自由エネルギー(コスト関数または予測誤差)」を最小化するように活動している、と提唱しました。
ベイズ推定は、よく「主観的確率」とも呼ばれる推定方法です。
1つ例を出します。飼い犬(外界)と犬とのやりとりです。
飼い犬が手を出して餌らしきものをかざすと、そこから予想されることと、それまでの経験に基づく生成モデルとを比較して、喜びととともに舌を出すという行動をとります。
その行動の結果、外界の反応を見てまた生成モデルを補正し、次の行動につなげるわけです。なかなか忙しいですね。。。
今回は原理だけにとどまって書きましたが、これが知覚だけでなく、意思決定・推論・運動まで説明がつくという驚きの拡張性を見せます。(統合失調症の研究まで)
数学的な処理が高度(自分がついていくのが難しい理由・・・)なのでまだ普及にまでは至ってませんが、現時点ではまだ候補として残っています。日本語の数式を使わない一般向けの本も登場してきました。
個人的に興味深いのは、これがLLMとの類似性がある点です。
LLMもソースは言語ですが、それを多次元の数字群(ベクトル)に変換する仕組みを見出し、その数学的な定義で解釈することで知的な処理を実現しました
今回も、外界をデータ化してベイズ推定できるように持っていくところが似ています。もっといえば自由エネルギー(予測誤差)最小化も、AIの「強化学習」に似ているように見えます。
人工知能(LLM)と脳の研究がクロスして、相互に影響を与え合える時代になっているのでは?と期待が高まる今日この頃です。