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「猫ひねり問題」に魅せられる科学者

人類が持っていない能力を持つ生物は数多くあります。
そのなかで、我々にとって身近な「猫」について何百年も議論されているトピックをご存じでしょうか?

猫ひねり問題

と言われます。
初めて聞いた方のために説明すると、猫が高所から墜落すると自身で身体をひねって無事着地します。

なぜこれが謎なのか?
いわゆるニュートン力学に従う限り、落下、つまり無重力状態では回転という力を生むのはできないはず、だからです。

ちょっとこれは無重力状態を経験がないのでわかりにくいかもしれません。例えば、作用・反作用の法則、という言葉を昔習ったと思います。
力を与えると反対の報告に同じ力が働きます。例えば、壁を押すときは壁から同じ力で押されてるわけです。
それが無重力状態だと押しようがない、というイメージで何となく難しさがわかるでしょうか?

それで、最近、それをタイトルにした書籍が発刊されました。

超一流の科学者、とありますが、歴史的には、法則の名前にもなっている「マクスウェル」や「ストークス」がこの難問に取り組んできたことで知られています。
前者は電磁気学を完成させた大家で有名だと思います。ストークスもそれに匹敵するほど流体力学を中心に著名な方です。
過去にはニュートン、未来には量子物理学のディラックや宇宙物理学のホーキンスも就任したルーカス記念数学教授にまで上り詰めた方です。

そういった過去の偉人の挑戦だけでなく、現代の一線の科学者も各専門を駆使してその仮説を提示した、知的好奇心のあふれる本です。

実は近世までは、猫が落下する直前に壁(または落とそうとする人間)をけって回転力を得ていたのでは?という声もあったのですが、連続写真をとることでそうではないことがわかりました。

いったんは猫の柔軟性で各部位で別回転をすることで、差し引きゼロにする巧妙な動きをしているのだろう、ということで落ち着きました。

ところが、それだけでは、なぜこういった回転を猫ができるのかを解明するには不十分でした。
そこになんと、20世紀前半に発表されたアインシュタインの一般相対性理論が絡んできます。

落下中は無重力、つまり重力効果は打ち消されます。これは一般相対性理論着想となった「等価原理」と呼ばれます。

ところが上下の方向は重力の変化を検知することがわかってきたため、猫が無重力状態で重力の方向をもし認識しているとすると、この等価原理とぶつかる、という奇妙な話がまじめに浮上してきました。

そういった背景で生まれた仮説が「落下前の重力を記憶している」というものです。

本の中ではさらに話は続き、猫をもとに宇宙の無重力状態で人間がどのように宙返りができるのか?に発展していきます。
が、本の紹介はここまでにしておきます。その面白さが少しでも感じられたでしょうか?

なお、本にも注意書きがされてますが、くれぐれも猫を故意に高いところから落下することはやめましょう。

猫以外にも、ある意味人間以上の能力を備えた動物は結構います。そして今回の「猫ひねり問題」のように、そこから科学技術が発展することもあるのはとても興味深いです。

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