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新しいレンズを使った地球外文明通信

SETI(地球外知的生命体探査)は、いつでも人類全体から見たロマンをそそります。
最近こんな新しいチャレンジが行われているそうです。

宇宙の情報は、歴史的には望遠鏡、つまり可視光から探る時代が長く続きました。
その後に「電波」領域での探索も盛んにおこなわれて、さらには宇宙で発生する宇宙線や重力波なども活用する「マルチメッセンジャー天文学」も注目されています。

ただ、SETIの観点ではもう1つの考え方があります。

それは、地球外知的生命による人工的な通信の痕跡を探そうという試みです。

我々人類でも、太陽重力をさながらレンズに見立てて、系外惑星の解像度を高めようというアイデアも唱えられています
冒頭記事でも紹介されてますが、太陽から離れたところに太陽光圧で動くソーラーセイル型で稼働する複数の小型宇宙望遠鏡を送り込む計画とおもってください。

我々が思いつくのなら、他に知的生命体がいたら同じことを思いつくだろう、というのが今回の冒頭記事の発想です。

既に探索は行われており、結果として今回の仮説に基づく調査では見つかりませんでした。

ただ、実は2017年に、「これは知的生命体による痕跡ではないか?」という話題の恒星間天体が見つかったことがあります。

オウムアムア」と呼ばれる天体で、下記にそのイメージと軌道図を載せておきます。

Credit: ESO/M. Kornmesser - http://www.eso.org/public/images/eso1737a/, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=64243274による
Credit : NASA

なかなか異様な形状だと思いませんか?通常の天体はより球面に近く、ここまでの棒状はなかなか観測例がありません。

そして何より注目を集めたのが、2つ目の軌道図です。

太陽系外からきて太陽を中心とした重力の影響を受けて系外に去っていく、一見普通の彗星に見えます。

ところが、この軌道計算を行うと、なんと太陽系脱出速度よりも早い双曲線上の動きをしていることがわかりました。
つまり、重力以外に知的生命体によるサポートを受けているのではないか?という仮説です。

実はこの天体を調査して、異星人の宇宙船ではないか?という仮説を唱えた一般向けの書籍も2022年に和訳版が登場しました。

なかなか過激なタイトルがつけられているので誤解を与えるかもしれませんが、著者はハーバード大の天文学では有名な方です。

この方は冒頭記事文中にも登場するSETI「ブレークスループロジェクト」にも立ち上げ時から関わっています。

その計画の1つをシンプルに言うと、地球からのレーダー照射で推進する探査機(通称「ライトセイル」)の実現です。

今時点の候補天体は、同じく冒頭文中に登場した「アルファ・ケンタウリ」です。地球からたったの4.3光年の距離にある注目のハビタブルゾーンで、理論上は20年で到着することができます。

そして、このオウムアムアも他の知的生命体が開発した「ライトセイル」ではないか?という大胆な仮説です。

書籍では1つ1つの科学的事実から消去法で、知的生命体による建造物である、という推理を繰り広げており、シャーロックホームズの有名なセリフまで引用しています。念のため再引用しておきます。

「全ての不可能を消去して、最後に残ったものが如何に奇妙な事であっても、それが真実となる」

出所:「オウムアムアは地球人を見たか?」

おそらくそのロジックは気になる方もいるのでどこかで要約して紹介したいと思います。
もしすぐに知りたい方は、SETIの歴史なども後半に紹介されているため、上記書籍の一読をお勧めします。

著者を弁護するにはまだ判断材料が少ないですが、ただ、自然科学は過去の常識を超えてきた、のはある意味事実です。

産業界においても、イノベーションを説明する有名な話があります。

フォードが自動車を発明していない馬車の時代では、どんな移動手段が欲しいですか?と聞いても「足の速い馬」という回答が返ってきます。

その時代時代に縛られた目に見えない常識的観念が邪魔をして、自動車という発想が意外に思いつかないわけです。おそらく既にそれを享受している我々からみたら信じられないと思います。

自然科学の世界ではそれを「パラダイム」という言葉で表すことがありますが、まさにその「パラダイムシフト」を経て今日があるわけです。

否定するのは簡単で楽ですが、まずは理性的な視点で物事に取り組める観察眼を養いたいと、今回の記事を読んで改めて思いました。

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