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最も目立たない「ニュートリノ」が宇宙創成に関与!?

2021年末に打ち上げられたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、7月に解像度の高い美しい画像を届けてくれました。

これは可視光線と赤外線からの領域で、電磁波全体でみると極めて局所的な範囲です。(下図参照)

出所:https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h30kisoshiryo/h30kiso-01-03-05.html

宇宙は、電磁波以外にもさまざまな情報を我々に届けており、その中で注目されているのが「ニュートリノ」です。

今回は、ニュートリノが今の宇宙形成にどういった意味合いをもっているのかを中心に紹介したいと思います。

まず、「ニュートリノ」と聞くと、その検出に成功したカミオカンデとその立役者でもある「小柴 昌俊」氏を思い浮かべる方もいると思います。
2002年にその功績で、ノーベル賞も受賞されています。

検出したのは1987年ですが、理論的には1930年にヴォルフガング・パウリが初めてその存在を予言しました。

実は当時、専門家の間ではざわざわした空気のなかで提唱されました。
当時発見された原子核崩壊β崩壊と呼びます)後にエネルギーが減少することがわかり、保存則を信じて、欠損分はまだ我々が知らない謎の粒子が発生したのだろうと解釈せざるをえませんでした。
当時のパウリが専門家に宛てた手紙は有名で、下記から読むことが出来ます。(あえて訳を書かないでおきますが、ようは苦渋の決断で予言したが、だれか解明してくれ〰、と言っています^^)

その後に1950年代の実験で存在はほぼ証明され、20世紀末になるとカミオカンデを初めとした検出につながっていきます。

そもそもこの謎の粒子、「ニュートリノ」とは何なのか?

名前のとおり、電気的には中性(ニュートラル)な存在で、ようは「電気を帯びていない電子」と思ってください。

ニュートリノは、今では「3つの世代」と「ペアとなる反物質」と合わせて6種類が知られています。(第4世代の可能性も話題にはなってます)

出所:Wiki「ニュートリノ」

上図の右段に「質量」とありますが、実は当初「質量はゼロ」ではないか?と思われていました。
それを覆したのが、日本の科学者梶田隆章氏で、その功績で2017年にノーベル物理学賞を受賞しています。(故小柴 昌俊氏の弟子にあたります)

実はこの「ニュートリノが質量を持つ」ということが、宇宙創成に重要な意味を持ちます

いきなり何を?・・・とキョトンとしたかもしれません。

以前にも何度か投稿した「ヒッグス粒子」、よく「質量を与える素粒子」とたとえられます。

文中にも注記してますが、ヒッグス粒子はあくまで部分的な対象範囲に絞っており、対象外のほうがはるかに質量割合が高く、かつまだ未解明です。
有効な仮説が、粒子には回転方向という物理量があり、その回転対称性が破れると質量が付与される、というものです。(専門用語で、カイラル対称性の破れ、と呼ばれます)
もっと砕いていうと、右巻きと左巻きの両方の回転が混在して動きが遅くなったわけです。(質量とは運動のしにくさを意味します)

関連でもう1つ、「なぜ宇宙には今の物質しか存在しないのか?」という謎もそびえています。

陽子・中性子など我々が知っている物質には、逆の性質を持つ「反物質」があってもおかしくないのですが(ディラックが電磁気と特殊相対性理論をもとに証明)、なぜか未だに見つかっていません。

「回転対称性の破れによる質量付与」「反物質の消失」という2つの謎は、おそらく「宇宙創成期」に何かがあったはず、と推理されています。

その解明に繋がるニュートリノの話に戻します。

ニュートリノに質量があることがわかりましたが、なぜか上記の「回転対称性が破れていない」、言い方を変えると「左巻き」しか見つかってません。

これは先ほどの、質量付与の仮説と矛盾します。

そこで作られた仮説が、宇宙創成期では「右巻き」型の重いニュートリノも存在した、というものです。
重いためすぐに消滅し、その機構が陽子や中性子といったほかの粒子の「対称性の破れに波及した」という考え方です。

ちょっと流れが込み入ってきたかもしれないので、箇条書きでつなげます。

謎1:陽子や中性子などの質量がどう付与されるのか?
謎2:理論的にはあるはずの反物質はどこにあるのか?

推理1:粒子は回転対称性の破れ(右巻き・左巻き混在となる)で動きにくくなった
推理2:でも質量を持つニュートリノだけは左巻きしか見つかっていないため、以前は右巻きが存在していた
推理3:ニュートリノ右巻き版は(左巻きより)超重かったので宇宙創成期に消滅した
推理4:上記の消滅現象が他の粒子にも影響を与えて回転対称性の破れを引き起こした(質量を付与した)

となると、このニュートリノを人工的に発生させることで宇宙初期に近づけて、その発生数を計算すると間接的な証拠になります。

実は近年の研究でその裏付けが徐々にとられています。

ニュートリノの観測は、日本を初めて海外でも盛んにおこなわれており、宇宙初期の解明にもしかしたら王手をかけようとしているのかもしれません。

ニュートリノはなんでも透過して挨拶すらほぼしてくれない、ある意味地味な存在ですが、そのすごさが少しでも感じてくれたら幸いです。

<主な参考リソース>


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