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遺伝子解析と人工知能がタッグを組んで進化を解き明かす
Natureカバーストーリーに興味深い記事が紹介されています。
遺伝子解析とAIという、見方によっては「自然 vs 人工」構図の2つを組み合わせて進化の流れを予測しよう、という試みです。
![](https://assets.st-note.com/img/1647552481548-d3rRoM1X5s.png)
要は、
DNAの配列からどのような遺伝子が引き継がれるかを、DNN(ディープラーニング)を活用して新しい枠組みを構築した、
という話です。
ディープラーニング(深層学習)とは、人工知能第三次ブームの火付け役となった、今主流の技法です。
ざっくりいうと、脳の動きを数学的に模したニューラルネットワークの学習階層を多段階に積み重ねたものです。
元々、2012年に画像認識コンテストで飛躍的な成果を遂げて以降(もはやこの作業だけでは人間の能力を超えたともいわれてます)、音声・言語・さらには創造的な行為(絵画・映画・小説)にまで適用範囲は広がっています。
基礎科学でも、数学・物理でAIを援用した研究発表は目にするようになりました。同じくNatureに掲載された1例を紹介しておきます。
そして今回は遂に遺伝子解析でも、AIを活用しNatureの表紙を飾るほどの成果を生んだということです。
特に「生命科学」の分野なので、単純にそのコントラストが面白いです。
まず、遺伝の流れの基本ですが、DNAは遺伝物質で、RNAを通じてタンパク質を形成します。下記の流れです。
DNA→(転写)→RNA→(翻訳)→アミノ酸
この「転写」の部分をもう少し細かく解きほぐすと、下記の3ステップとなります。(参考:大学生物学の教科書「②分子遺伝学」)
1.開始:RNAが「プロモーターDNA配列」と呼ばれる箇所に結合して、転写開始・終結点と2本鎖のどちらを転写するのかを決定して、DNAを解き始まる
2.伸長:1の元RNAが転写元(鋳型)に沿って伸ばしながら触媒(ヌクレオチド)を付加しつつ新しいRNA転写産物を合成
3.終結:1で決めた終結点に達すると、2で合成したRNAと合わせて転写元DNAから乖離
今回の研究は、1の配合と結果として発現された遺伝子の数千パターンをAIに学習させてできた「預言者」という呼ぶシステムです。
その解析能力が高かったわけですが、これから遺伝子研究分野を飛躍的に向上させる可能性を与えています。
1つは、改めて過去から現在に至る進化系統を解析しなおすことで、人類含めた今までの生物進化の流れと、それを踏まえた今後の進化可能性を予測することが出来ます。
そしてもう1つが、原因と結果の対応関係が分かると、生物を構成する器官を人工的に合成することが容易になります。
近年この分野は「合成生物学」と呼ばれることもあります。
言葉だけ聞くと、フランケンシュタインのような人造人間まで想像する方もいるかもしれません。
合成生物学で私が耳にするのは、環境負荷を抑えたり、エネルギー効率を高めるなど社会課題で研究されることが多いと感じます。(あくまで主観)
1つだけ言葉を説明したサイトを載せておきますが、このキーワードで検索すると、既に結構な記事が掲載されています。
自然の究明にAI(人工知能)というデジタルな手法が使われるのは異質で面白い、と思うかもしれません。
ただ、よくよく考えると、DNAの配列も究極的には4種類の塩基の組み合わせ、つまりデジタルな情報です。
もしかしたら、
自然とデジタルは解像度の違いだけで本質的には同じなのかもしれない、
とぼんやりと考えた今日この頃です。
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