広報はストーリー価値で勝負

マンションメーカー広報15年、PR会社経営15年のPRプランナーが小さな会社の広報PRに役立つ情報を発信しています。

1.リンゴの価格差=ストーリー価値

ここにふたつの赤いリンゴがあります(画像はイメージです)。大きさや色つやはほとんど変わらず、実際に食べてみても、どちらも甘くて、甲乙付けがたい美味しさのリンゴです。

一方のリンゴは1個150円なのに対し、一方は1個850円です。なんと5倍以上の価格差があります。さすがに150円のほうはお得感がありますが、850円のリンゴもすぐに売り切れるほどの人気です。なぜだと思いますか?

150円のリンゴは青森県の農家のリンゴ園で採れ、JAを通じてスーパーで売られているもの。850円のリンゴはこちらも青森県産で、皮膚病の妻や生まれてくる子供のために完全無農薬・無化学肥料栽培のリンゴをつくろうと、ひとりのおじさん(木村秋則さん)が11年もの試行錯誤を重ねた末に採れた「奇跡のリンゴ」と呼ばれ、Webショップで通信販売されているものです。

その差の700円は「完全無農薬・無化学肥料という安心感」と「おじさんと妻の感動的なストーリー」の価値なんですね。

このおじさんのストーリーに共感した人が、知人への贈り物などに「金に糸目をつけずに」選ぶから、5倍以上の価格でも売れていくわけです。

「奇跡のリンゴ」は、本にもなり、阿部サダヲさん主演で映画化されたので、ご存知の方も多いでしょう。ストーリーはこちらを参照してください。

2.「使ってもらえばわかってもらえます!」って?

さて、話は変わって…。数か月前のこと、一人の女性からPRの相談を受けました。

その方はインテリア関係のお仕事をされていて、上質な素材を使った寝具カバーなどのファブリック製品を企画・販売する事業を始めたばかりでした。

商品を見せてもらうと、確かに肌触りが良くて高級感が伝わってきました。価格はというと、普段、「Nトリ」や「M印良品」の製品を見慣れた者からすれば、ちょっと手が出そうにない「結構なお値段」でした。

さらに聞くと、この布は混じりけのない「○○糸100%」で織られており、風合いや肌触りが良いのはもちろん、何度洗っても生地の張りが失われず、綿のシーツなどより数倍長持ちするのだそうです。また、国内産の生地を国内で縫製しているので原価が高いのだとのこと。

彼女はこの商品の発売に先立ち、シャレたネーミングとロゴデザインを考え、小規模事業者向けの補助金を使って、センスの良い写真の入ったパンフレットを作っていました。

これを東京で人気の高いセレクトショップに置いてもらい、富裕層の方々に向けて販売したいのだそうです。「いちど使ってもらえれば、必ずその良さを分かってもらえる自信があります」と。

3.品質の高さだけでは売れません。

私はその場ですぐに「残念ですが僕はこの商品、このままで売れるとは思いません」と伝えました。以下、私が彼女に伝えた言葉です。

「長く使って初めてわかる価値は、長く使われない限り伝わらないんですよ。素材や品質、製造技術の高さだけ訴求しても、良さがイメージできません。買って使ってみないと価値がわからないモノには、富裕層の人だってお金を払わないです

モノの良さの紹介だけじゃなくて、人にまつわるストーリーはありませんか?ご両親の話やあなた自身の生い立ち、インテリアに興味を持った体験談、○○糸の魅力を知ったきっかけ、寝具について人の何十倍も勉強したこと、そんな話のタネを探してみましょう」

「他のどこにもない商品で、その価値を認める人にだけ買ってほしいというのであれば、その価値にふさわしいストーリーを詳しく語って、使わなくてもその価値が理解できるようにしてください

零細事業者が大手と同じ土俵で勝負しても勝ち目がないことは明白。やるべきなのは、少数でも良いので人の心を動かし「いいな」「高いけど欲しいな」と思わせるストーリーを、経営者自身が語ることです。

商品のバックグラウンドや、秘められた苦労話、心温まる話、感動的なエピソードを語ることで、お客様がその商品に感情移入するようにして、価格が高くても思わず買ってしまうように仕向けることが大事なんです。

4.共感を呼ぶストーリーが、そこにはあった

そこで、「その寝具に込めた思いや、ご自分の生い立ちから今日までのストーリー、商品化までの苦労話などを思いつくままに、できるだけ多く書いてきてください」と宿題を出したんです。

そして後日、送られてきた回答は、読みごたえがありました。苦労話も、多くの女性が共感しそうな物語になっていましたし、商品化までの道のりは、思わず笑ってしまうような失敗の連続。

商品の素材や価格、美しくデザインされたパンフレットからは見えてこない、納得できる価値がそこには読み取れました。

5.人が主役のストーリーを語ろう

そうして、まずは自社のwebサイトを作りたいとのことだったので、その中に自身のプロフィールや、商品化に至る紆余曲折のストーリー、製品にかける思いの丈を、読む人を惹きつける文章にして載せていくことを勧めました。

販売ルートも、都会のセレクトショップから、web上のショッピングサイトを中心に考えているそうです。広報展開はwebサイトの完成後になりますが、今からの展開が楽しみです。

モノを売るときにはぜひ、商品の価値訴求に加えて、人が主役のストーリーを語ってください。

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