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管理職になりたての人が陥る罠

 今時は管理職になる事が会社員の成功例ではなくなってきました。管理職=マネジメントが本業=クリエイティブからの卒業=現役からの引退と考え、管理職になりたくないと考える若者が増えてきています。また、メーカーを中心に昇進の方向性として「マネジメントして業績を上げていくマネージャー」か「その道のプロとして唯一無二の存在でいるプロフェッショナル」の2つを選択し、それぞれ平等に評価する会社も増えてきました。一説によると、会社のプロがマネージャーになり、仕事のプロがプロフェッショナルを選ぶという傾向があるそうです。本日は前者のマネージャーに関する内容です。

 マネージャーになる人は誰もが最初は初心者です。待ち望んでいたマネージャーになり、凄く嬉しい気持ちもわかりますし、やる気に満ち溢れる状況もとても理解できます。真面目な新米マネージャーは「今まで自分がマネージャーにされてきた嫌だった事」を思い出し、それだけは絶対にやらないと誓います。そして「自分は最高のマネージャーになるんだ」と思い、それには何が必要かを考えます。そして、自分ならではのマネージャー像を作ることを考え、自分のユニークなポイントを振り返り、その結果「自分は新米マネージャーだ」という点を強みにしようと決意します。

 「自分は新米マネージャーだ」という点を強みにする気持ちもよく分かります。「周りのマネージャーは経験豊富が故に実務を理解できていないし、メンバーの気持ちも把握できていない」「それに対して自分はちょっと前までメンバーだったので、実務もメンバーの気持ちも十分理解している」と考えます。そして、「今の自分なら誰よりもメンバーに寄り添って理解あるマネージャーになれる」と思います。ここまでの経緯は決して悪くないと思います。ですが、このスタンスのマネージャーは罠に陥り易いです。

 例えばメンバーAさんが新米マネージャーも経験した事のある業務に苦戦していた時、新米マネージャーは「こんなの、これこれこうすれば良いんだよ」とアドバイスします。Aさんは満面の笑みで「流石ですね!凄く頼りになります」と嬉しくなります。一見素晴らしいマネージャーとメンバーの関係ですが、これは最悪です。Aさんは同じ業務に躓くたびに、新米マネージャーのアドバイス通りのやり方を繰り返してしまうからです。言い換えると”言われた通りのことだけを繰り返す人になってしまう”のです。新米マネージャーはAさんの業務や悩みを理解できているが故に極力歩み寄って答えを教えてしまったのですが、それがAさんの成長の機会を奪ってしまったのです。

 それでも新米マネージャーもAさんも暫くは良い感じに働けると思います。なんせ新米マネージャーさんはほんの少し前までメンバーだったからです。当時のやり方が突然大不正解になるなんてことはあまりありません。ですが徐々に、そして確実に正解から遠ざかっていきます。理由は常に世の中が進化しているからです。2021年3月末までメンバーだった新米マネージャーの常識は2021年9月ごろには少しずつ通用するのか怪しくなってきて、2022年4月頃には完全に過去の遺産になっています。しかし、2021年4月に新米マネージャーのアドバイスをもらったAさんは、そのアドバイスこそ絶対的な正解と思い、2022年、2023年、2024年とひたすら同じやり方を踏襲します。そして他の部署に異動する際には、後任の人に新米マネージャーから教わったやり方を伝授します。

 それだけマネージャーからメンバーへ伝えた仕事の仕方というのは影響力が大きいということです。それについて、以前以下の様なツイートをしました。

 「今の自分なら誰よりもメンバーに寄り添って理解あるマネージャーになれる」と発想するマネージャーは言い換えると”担当者意識が抜けない管理職”なのです。これがタイトルにもある”管理職になりたての人が陥る罠”です。つい最近マネージャーになった人でも、そんな人が理解している実務やメンバーの気持ちは新鮮なものではありません。そんな過去を意識している限り、今のメンバーには邪魔でしかありません。メンバーを如何に育てるには、今の時代にあった答えを一緒に考えてあげるしかないのです。それについてはこちらのnoteをご覧ください。

 新米マネージャーのやる気に満ち溢れる状況は理解できますし、大歓迎です。ですが、影響力を持ったことを自覚し、身長にメンバーに接することをお勧めします。

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