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『絵本』 オニの おれい 【日本霊異記】より


オニのおれい
【日本霊異記】より、再話・絵/中田弘司

むかしむかし、
かわの むらの むすめが
おもい びょうきになりました。
りょうしんは、 はやく なおるように
びょうきを はこぶ やくびょうがみに
たくさんの ごちそうを そなえました。


でも、やくびょうがみは やくめがおわって
もう いえには いませんでした。
そのひの よる、 エンマさまの つかいの オニが
この いえを さがしまわって
おなかを ペコペコにして やってきました。
たくさんの ごちそうを みつけると
がまんが できずに、 すぐに たべてしまいました。


おなかが いっぱいになった オニは、 むすめを おこし
「おまえを エンマさまの ところに
つれていく ために きたが、
つい ごちそうを たべてしまったので おれいを しよう。
おまえと おなじ なまえのものが
どこかに いないか?」といいました。
「それなら となりの やまの むらに います」
むすめは びっくりしながら こたえました。
「よし、 その ばしょを おしえてくれ」


オニは、つぎの あさ はやく
おしえられた やまの むらへ いきました。
むすめの なまえを たしかめると
もっていた ノミで むすめの ひたいに つきさしました。
そして、スルスルと たましいを ひきずりだすと
エンマさまの ところへ つれて いきました。


エンマさまは ちょうめんをしらべ、
かこが みえる かがみを のぞくと、
おにを よびました。
「この むすめは わしが
よんだ むすめではない。
かわの むらに おなじ なまえの ものが いるはずだ。
その むすめを つれて まいれ〜!
それまで、 この むすめは あずかっておく!


「あー、 やっぱり ばれちゃったか」
おこられた オニは、おなじ みちを もどります。
どうしようかと こまりましたが
かわの むらの むすめに
しょうじきに はなしました。

なきさけび いやがる むすめに
オニは あやまり、いいわけをして
なんとか タマシイを ひきずりだすと
エンマさまの ところに つれていきました。


こんども、 エンマさまは ちょうめんを しらべ
かこが みえる かがみを のぞきました。
「よし この むすめだ、 よくやったぞ。
では、 まちがって つれてきた
やまの むらの むすめを いえまで おくってやれ!」


ところが、 やまの むらの むすめの いえでは
そうしきが おわり、もう からだを やいていました。
だから タマシイの もどる からだが ありません。

こまった オニは
「しょうがないなあ」と
かわの むらへ いき
かわの むらの むすめの からだに
やまの むらの むすめの タマシイを
いれてしまいました。
すると、むすめは いきかえり、
かわの むらの りょうしんは おおよろこび。


ところが、 いきかえった むすめは
「ここは わたしの いえでは ないわ!」
と、おおきな こえで いうと
スタスタと やまの ほうへ あるきだしました。
オロオロと りょうしんは おいかけます。
アレレレと  オニも きづかれないように
ついていきました。


やまの むらの むすめの いえに  つくと
むすめが いいました。
「ここが わたしのいえです!」
やまの むらの むすめの りょうしんは びっくりして ききました。
「わたしたちの むすめは もういないのに
いったい あなたは どなたですか?」
むすめは いままでの ことを
はなしはじめました。


そのはなしをきいて、かわのむらの りょうしんと
やまのむらの りょうしんは はなしあい、
いきかえった むすめを おたがいの むすめと しました。
やまと かわの あいだに あたらしい いえを たて、
むすめは、4にんの おやと
いつまでも しあわせに くらしました。

ほっとした オニは、
エンマさまに
すべてを ほうこくすると、
やっぱり おこられて
しまいました、とさ

おしまい。


実は、仕事の終わった疫病神に道を聞いていたのです(笑)









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