絶対に真似してはいけません
「それは、自分の仕事から逃げてるってことじゃないのかな?」
絶賛退職活動中。こんなことを、ある人から言われました。
その人も、決して僕のことを「責めたくて」そう言ったんじゃないことは分かってるんです。その人は、「僕を思いとどまらせて、退職の意思を撤回させる」ことが仕事なので、「あの手、この手」を使ってきた中の一つなのです。
退職活動をする中で、強く思ったことが一つ。
「しっかりと決意を固めてから会社に意思を伝えて良かった」
やはり、色んな人と話すと色んな角度からいろんなことを話して頂けるので、事実気付きもたくさんあるのです。だから、しっかり決意を固めてからでないと、恐らく判断が鈍ってしまうことは、往々にしてあるのだろうと思います。
親父も、転職を経験しています。
転職と言うより、「退職」の経験者です。
今日は、「退職の仕方」なんて難しく考えすぎる必要は無い、って噺。
昔々、もう半世紀も前の話。
大学時代、アルバイトで放送局で働いていた親父には、現場にいた所謂「業界人」の華やかな感じが、えらく格好よく映ったそうで。
卒業後は、とある広告代理店に勤めることになったそうです。
しかしながら、ご存知の通り広告業界は一件華やかに見えて、実は地味な作業が九割以上。現実を思い知らされた、と親父は言っていました。
親父が勤めた会社は小さな代理店だったそうなのですが、当時、とても嫌味な先輩がいたそうです。
なんと言うか、いちいち感に触るような言い方をしてきたり、
「あれ?お前名前なんだっけ?斉藤だっけ?山田だっけ?あ、そうそう吉田だ、吉田。(※親父は吉田じゃありません)」とわざと名前を間違えて揶揄ってきたり、陰湿な方だったそうで。
今、こんなあからさまな人がいたらパワハラだのなんだのですぐ問題になるのでしょうが、そこは五十年前。バリバリ年功序列の上下関係全盛時代だったんでしょう。
ましてや、当時の親父は入社したてのペーペー。仕事が一人前にできるわけでもない。所謂、丁稚さんのような見習い扱いで、それはそれは「揶揄われまくった」そうです。
はっきり言って親父は短気です。
ただ、至極冷静にキレて、非常にクレバーな喧嘩をします。勿論非暴力。
日頃から、「カチンときてすぐにワーっといったら負け。そういう時こそ1回冷静になる奴の方が迫力がある」みたいなことをよく言っています。
入社してから暫くの間は、親父も我慢していたそうです。
しかし、その先輩からの嫌みは一向にやまず。
ある日のこと。
「おーい、お前。誰だっけお前?斉藤だっけ?」と同じ調子で揶揄いがはじまりました。
その瞬間、とうとう親父の堪忍袋の緒が切れたそうです。
さぁ、どんな迫力の出るキレ方をしたか、というと、、、。
自分の机にネジで固定されていた黒電話を
両手でガッと掴んで
メリメリメリっと机から引っこ抜いて
電話線を引きちぎり、
それを嫌味な上司の机めがけて
全力でぶん投げた、そうで。
ど・こ・が・冷静にキレる、だ。。。
ちなみに、ぶん投げた直後に、
「明日辞表持ってくらぁ!」と啖呵を切って会社を後にしたそうです。ちなみに、大げさでもなんでもなく、本当にこの日を最後に会社を辞めたそうです。
いない、と思いますが絶対に真似をしてはいけません。
何せ五十年も前の話ですので。
ただ、ここまで痛快な辞め方をした人間が、七十になった今でも現役でのびのび働いている、という事実を見ると、「職を辞する」なんて、長い人生から見たら、一点に過ぎないんだな、と強く思います。
ちなみに。
「辞表持ってくらぁ!」と勢いよく言ったのはいいものの、
辞表の書き方を知らなかった親父。
家に帰った後、じいさんに「辞表の書き方を教えてくれ」とお願いしたのだとか。(じいさんもじいさんで、何も言わずに教えてくれたそうです。中々、剛胆なじいさまです。)
結局親父は、次の日、会社に辞表を出しに行き、その足で一週間ほどスキー旅行に出かけていったのだそうです。
以前、親父からこんなことを言われたことがあります。
「仕事が嫌になったら、『嫌になったから辞める』でいいんだよ。苦しい時や辛いことに耐えなきゃいけない時期もあるけどな。でもそればっかりじゃ物事続かないもの。」
事実、この後親父は紆余曲折あって、別の会社に就職するのですが、なんやかんや、30年以上勤めることになります。
電話を投げつけて会社を辞めて、そこからフラフラしていたら全く説得力の無い言葉ですが、高度経済成長〜バブル〜平成不況のど真ん中でサラリーマンをやってきた人間の言葉です。
もしかしたら、これをご覧になった方の中には、転職しようか迷っていたり、退職したいと悩んでいたり、という方がいるかも知れません。
転職すべきか否か、退職すべきか否か、僕には分かりません。
でも、それで将来のことを心配しすぎるのは、よくないと思います。
昔、電話を投げつけて辞めた人間だって、なんだかんだ生き残ってきてるんだもの。自分だってきっと大丈夫。
そういう風に思ってもらえて、少しでも気が晴れて元気になるなら嬉しいね、と親父は語っていました。
ちなみに、冒頭の「逃げてるんじゃないの?」という問いに対して僕がなんと応えたか。これは、また別の機会にお話しします。
念のため、繰り返しになりますが、
いくら腹が立ったからと言って、電話を投げてはいけません。くれぐれも、真似をされませんように。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?