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時代に葛藤する女性の歌声を聴け!『リスペクト』映画評

評価 ★★★☆☆(3/5)

『ソウルの女王』として知られる
アレサ・フランクリン。

彼女の半生を描いた伝記作品です。


2021年11月6日(土)
新宿バルト9にて鑑賞して来ましたので
その感想をまとめていきます。


この記事はネタバレを多分に含みます。
本編をご覧になっていない方は、
ご了承の上、お読みください。


■1. 映画の詳細情報

●タイトル:『リスペクト』 原題:Respect
●公開:2021年11月05日
●監督:リースル・トミー
●脚本:トレイシー・スコット・ウィルソン
●出演:
 ・ジェニファー・ハドソン
 ・フォレスト・ウィテカー
 ・マーロン・ウェイアンズ
 ・オードラ・マクドナルド
  他
●公式サイト:https://gaga.ne.jp/respect/


【あらすじ】

『ソウルの女王』こと
アレサ・フランクリン。

2018年、彼女は天国に旅立った。

彼女は一体どうやって
ソウルミュージックの女王と呼ばれるまでになったのか?

歌手として多くの人に希望を与えた
彼女の半生を
その生い立ちから描く。


教会の牧師である父、
ゴスペル歌手の母、
その間に次女として生まれたのが彼女である。


幼少の頃から天才的な歌唱力を持っていた彼女。

牧師である父の応援として
教会で歌を披露する日々を送っていた。


やがて時が経ち、
大人になった彼女は歌手としてデビューする。


■2. 勝手解説

ソウルの女王、アレサ・フランクリン。

黒人差別が色濃く残る
1960年代に歌手としてデビューし、
ソウルミュージックという新しいジャンルで
大スターとして有名になった彼女。


1987年、女性アーティストとして初めてロックの殿堂入りを果たす。


2009年、オバマ大統領の就任式にて歌声を披露。


黒人差別という悪しき習慣が残るアメリカという地で
アーティストとして大きな証跡を残した人物です。


生前は、様々な慈善活動に積極的に参加していた彼女。


76年に渡る彼女の人生は
一体どんなものだったのか?


●家族に対する複雑な感情
●黒人という人種に対するコンプレックス
●酒への依存
●愛した人との別れ
●心の中で湧き上がる様々な葛藤


そうした一言では表せないような
多くの感情を抱えた彼女が
大スターへの階段を少しずつ登っていく姿を
描いた伝記映画です。


■3. レビュー 『歌声に酔いしれる2時間26分』


■ 良かった点1 ジェニファーの歌唱力は圧巻

映画の中身は、
冒頭から最後まで
アレサ・フランクリンを演じるジェニファー・ハドソンの
華麗な歌声で満ち溢れています。


ミュージカル映画でその歌声を遺憾なく発揮してきた
ジェニファーの配役は、
『バッチリ』の一言です。


ブルース、ゴスペルなど、
ブラックミュージックの歴史をこの作品一つで
総振り返りできるほど、
様々なジャンルの音楽が流れ続けます。


そうした楽曲を
見事に歌い上げたジェニファー。


さすがとしか思えないくらいの
素晴らしい歌声です。


『彼女の歌声を聴きまくる!』

という体験をできるだけで
この映画を観る価値があると思います。


まさにジェニファーの歌声に酔いしれる2時間26分。


映画の上映時間としては少し長めの作品ですが、
その時間を感じさせないほど
素晴らしい芸術体験でした。


■ 良かった点2 音楽を通じてアメリカの歴史を振り返る


アメリカに限らず、
人種差別というのは世界中で残っている悪しき習慣です。


黒人差別という歴史を持つアメリカ。


2009年に黒人として初めてオバマ大統領が決まったときには
世界的なニュースになりましたね。


本作はアレサ・フランクリンという人物にフォーカスした
伝記映画ですが、
その映画を観るついでにアメリカという国が
『どの程度の黒人差別問題を抱えていたのか?』
ということを勉強することもできます。


作中でもそうですが、
ちょっとした意見のぶつかり合いをするだけで、

『お前は、俺が黒人だから馬鹿にしているんだろう!』

といった形で
勝手に人種のことを持ち出して喧嘩になる
といったシーンがあります。


やはり、


あるコミュニティに所属する人間から
一度でも差別的な扱いを受けてしまうと
そのコミュニティに所属する人間すべてが
悪い人物化のように勘違いしてしまう


という現象が、人間にはあります。


コレを
『外集団同質性バイアス』
と言います。


自分の所属するコミュニティ以外の人間は、
みんな同じように感じてしまう偏見のことです。


肌の色が違うというだけで
心の衝突が起きてしまうほど
アメリカという国が抱える
黒人差別問題は根深いものなのでしょう。


■ 良かった点3 『男性に対する恐怖』を描いた作品でもある


本作は、
黒人女性歌手として大活躍した
アレサ・フランクリンの伝記映画です。


その伝記の中には、
「黒人に対するコンプレックス」

に加えて、

女性が『男性に対して感じる恐怖』


というものも描かれています。


●父には逆らえないという精神的苦痛
●夫による暴力の支配
●幼少期に望まない妊娠をしてしまったという過去


そうした『男性が女性に対して与えるトラウマ』
を抱えながら、


複雑な感情を少しづつ乗り越えていく
アレサの姿を観ることがデキます。


どの国においても
女性と男性という生き物の間では
何かしらのぶつかり合いがあるものなんですね。


この記事を書いている私自身は男です。


もちろん、
普段は女性に対して暴力や攻撃的な態度なんて
取っていませんが、


自分自身では女性に対して恐怖を与えるような
自覚がなかったとしても


結果的には相手の女性は怖がっている
ということがあるのかもしれない、

と考えさせられました。


そうした、人種や肌の色だけではない、
『性』という壁についても
考えさせられるという
映画でもあります。



■ もっと見たかったところ1 楽曲を一曲分シッカリと歌う場面が欲しかった


前述にもあるように
ジェニファーの歌声は天下一品です。


であるからこそ、
その歌声を1曲分しっかりと聴ける場面が欲しかったなと。


作中では、
様々な楽曲が流れますし、
ジェニファーの歌声を聴ける場面は
たくさんあります。


しかし!
その楽曲一つ一つを
最後まで聴ける場面がありません。


それがなんとも『惜しい!』と思ってしまいました。


ジェニファーの歌声が素晴らしいからこそ、
一曲くらいはシッカリと最初から最後まで
歌いきって欲しかったです。


■ もっと見たかったところ2 ライブシーンの一つひとつが短すぎる


コレはもっと見たかったところ1にも関連しますが、
作中で描かれるライブシーンが
短すぎるように感じます。


本作と同じように
アーティストの半生を描いた映画といえば、
『ボヘミアン・ラプソディ』が代表例でしょう。


ボヘミアン・ラプソディでは
ラストシーンで
ライブエイドでのパフォーマンスを再現した
ライブシーンが15分かけて丁寧に描かれています。


クイーンが現代に蘇ったような錯覚を起こすほど
素晴らしい再現度の映像です。


そうしたシッカリとたライブの再現映像を
もっと見たかった!


ジェニファーを歌声で
作中のライブ上でも
アレサ・フランクリンを堂々と長尺で
蘇らせてほしかったな!
と思ってやみません。


●4. まとめ 『音楽を観に行く』という映画


アレサ・フランクリンの半生を描いた本作。


アレサを演じるジェニファーの歌声を
堪能できる一本です。


最初から最後まで
音楽に満ち溢れた本作は、
まさに映画を通じて
『音楽を観る』
といった感覚になります。


描かれているアレサのファンの方は
もちろん見たほうがいいですし、


ソウルミュージックに全然興味ない
って方も、
ジェニファーの歌声に心動かされるのは間違いないです。



一方、
『ボヘミアン・ラプソディ』という
ミュージシャンの半生を描いた傑作が生まれてしまったからこそ
その作品と比べてしまいます。


ボヘミアン・ラプソディと本作を比べると
どうしてもライブシーンが短すぎる。


何度でも言いますが、
ジェニファーの歌声が素晴らしいからこそ、
もっと丁寧に長尺のライブシーンが見たかったです!


という感想を書き終えて
筆を擱きます。


最後まで
お読みいただきありがとうございました。


ではまた!

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