歌詞がおかしい!「およげたいやきくん」(2)
これは(2)です。まだの方は(1)から読むのをおすすめします。
いわばの かげから くいつけば
それは ちいさな つりばりだった
ここからしばらくは、なぜか哀愁漂う歌詞になっている。
この歌は子供向けの歌のように思うが、なんで急に悲し気な展開になるのかもよくわからない。たい焼きが悪いことをしてその結果ひどい目にあった、というなら子供向けのお話としてよくあるが、このたい焼きは別に悪いことをしたわけでもなんでもない。たい焼き屋のおじさんと喧嘩して海で泳いでお腹がすいたのでエビを食べようとしただけである。それでこの展開は、ちょっと救いがない。子供にそういう救いのないことをわざわざ聴かせる目的はよくわからないが、子供に理不尽な人生の悲哀を教えるためだろうか?
はまべで みしらぬ おじさんが
ぼくを つりあげ びっくりしてた
たい焼きが釣れればそりゃ普通はびっくりするだろう。
しかし、この状況も実はよくわからない。
そもそもこのたい焼きは、たい焼き屋のおじさんと喧嘩していたわけで、この世界では、たい焼きと人間が喧嘩するのが普通であるはずである。でなければ、たい焼き屋のおじさんは、たい焼きが会話をすることにまず非常にびっくりするべきである。悠長に喧嘩している場合ではない。何しろたい焼きがしゃべるのだから一大事である。この驚愕の未知の現象をまずは動画にとって、報道機関にでも送るべきである。喧嘩してる場合ではないのだ。
でも、たい焼き屋のおじさんは、その事態に仰天せずに悠長に喧嘩していたのだから、この世界ではそれが普通だと見なすのが妥当だろう。
とすれば、たい焼きを釣り上げた釣り人のおじさんが、その状況に対してびっくりするというのは、それほど当然でもないのである。
そして、最後である。
おじさん つばを のみこんで
ぼくを うまそうに たべたのさ
これが究極的に気持ち悪い。
さっきまで海水に浸ってぶよぶよになり、塩水で塩辛くなったたい焼きを、このおじさんはなんとそのまま食べてしまったというのである。海はきれいでもなく、いろんなゴミも浮かんでいるし、生臭いにおいもする。そんな海水をたっぷり含んだたい焼き…。
おえー。
とにかく気持ち悪い。
気持ち悪そうに食べたのならまだわかるが、うまそうに食べた、というのも人間の理解を超えている。
とにかく、この歌は本当に気持ち悪い。
こういうふうに書くと、「子どもはいちいちそんなこと考えて歌を聴かない」「子どもはもっと純粋だ」「大人は頭でものを考えようとするが子どもは違う」などという、極めて幼稚なことを言う人間もいるだろう。
しかし、少なくとも自分は、小学生の頃から、この歌をすごく気持ち悪い歌だと思っていた。
素直に歌を聴けば、こういったいろんな疑問が浮かんできたり、気持ち悪く感じるのは、ごくごく自然だと思う。
これに疑問を持たない人たち、疑問を持たないのがいいと思うような人たちは、恐らく、社会に対しても慣習に対しても、何も疑問に思わず、ただただ従属して生きる人たちだろうと自分は思っている。
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