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立憲は共闘で議席を減らしたのか?(2) ―立憲関係者、野党関係者必見―

これは(2)です。まだの方は(1)から読むのをおすすめします。


立憲と共産との共闘は立憲にとって間違いだったのか?

 次に、小選挙区と比例代表に分けた過去の獲得議席を見てみよう。

表3:立憲民主党・旧民主党の衆議院選挙での議席の推移(小選挙区・比例)

議席数(小選挙区・比例)


 これを見れば、過去4回の旧民主・立憲の比例の獲得議席は、それぞれ30議席, 35議席, 37議席, 39議席となり、あまり変化していないことがわかる。一方、過去4回の小選挙区での獲得議席は、それぞれ27議席, 38議席, 18議席, 57議席であり、今回は過去4回の中で群を抜いて最高である。特に前回2017年は、18議席と大きく落ち込んでいる。2017年は希望の党と合わせても小選挙区では36議席しかとれなかった。それが2021年は57議席も取れている。これは、共産党との共闘がなければ決して得られなかった議席である。今回、共産党ともし共闘していなければ、立憲の議席は、さらに最低でも20議席は少なかったであろう。もしかしたら、30議席少なかったかもしれない。今回、東京や千葉などを含め、小選挙区でそれなりに健闘できたのは、共産党との共闘をしたからである。

 過去の推移から見て、特段票が逃げている様子は見られない。
 

立憲に風が吹く状況だったか?

 冷静に立憲民主党をめぐる今回2021年の選挙の状況を考えてみる。

 一つ目には、今回は立憲民主党が特に脚光を浴びる状況ではなかったことである。前回、立憲民主党は、小池氏によって排除された枝野氏が立ち上げたことでかなりのブームとなった。三春充希氏による各社平均の支持率は一時的に約14%に達した。しかし、今回は違う。立憲民主党の支持率は、過去数年間、安定して7-8%程度(選挙時のブーストが起きた極大値でも10%程度)である(三春氏による各社平均値)。この支持率では、比例の得票率が旧民主党などと変わらないのは当然である。(なお、三春充希氏は、本記事よりはるかに詳細な選挙に関する定量的分析を行ってnoteで公開しており、おすすめである。)

 また、二つ目には、菅首相が選挙の直前に交代し、新たに岸田政権が誕生したことである。これにより、前政権への批判の相当程度がチャラになり、内閣支持がいわゆるご祝儀相場という状態のまま選挙戦に突入してしまった。河野太郎が首相になるのに比べたら、このご祝儀相場がそれほど高くなかったのは確実であるが、それでも、発足直後の内閣と闘うことになったのは野党にとって大いに不利である。

 また、三つ目には、総裁選でメディアが1か月間も毎日のようにその様子を報じた。これは大きな宣伝効果があるのは当然である。

 これにプラスして、四つ目には、この時期にたまたまコロナ感染者数が激減し、国民のコロナ対策へのそれまでの不満が一気に小さくなり、選挙前までの政権への批判的な雰囲気がなくなったことである。


 選挙情勢調査などでは、自民が議席を大きく減らし、立憲民主党がそれなりに増やすという雰囲気だったため、立憲民主党が大きく負けたかのような空気感になってしまったのだが、これらの背景を考えれば、立憲民主党はなかなか健闘したともいえる。一般的に、野党は、現政権に対する大きな不満が国民の間になければ、なかなか選挙で大きく勝利することは難しい。

 繰り返すが、立憲が共産と野党共闘していなければ、立憲は議席をもっと大きく減らしただろう。


 立憲が議席を減らしたのは、共産と共闘したからではなく、立憲にとって不利なこうした背景やタイミングの悪さがあった中で、立憲が過去4年間、単体としての支持を十分に広げてこられなかったためであろう(認めたくないかもしれないが、それが事実であり、それが大きな問題であろう。今これに向き合わないと今後もっとひどいことになるだろう。)。

 (ただし、実際にはこれはなかなか難しいことのようにも思える。それは、日本の国民の中でリベラルな考え方を持つ層はそもそも3割に満たないであろうからである。)


(3)に続く!


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