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しっくりくるものに囲まれて働きたいので「そんなこと」にもこだわってしまう話

他人からするとどうでもいいようなことをとても気にしてしまう性格の難がある。

難なのか、個性なのか、良く言えばこだわり、もっと良く言えばセンス、という見方も出来るかもしれない。

とにかく、服も小物も、文具ひとつにとっても、自分にしっくりくるものを使いたい。使用頻度が高いもの、よく目に入るものなら尚更。

とは言っても、私は別にファッションやライフスタイル関連のことについて造詣が深いわけではない。

人間というものはこれまでに触れてきたもので作られるらしいので、私の個性やセンスは何も飛び抜けているわけじゃなく、ちょっとオタクで美容や本やライフスタイル関連のことが好きな平凡な一般人である。いい歳になっても「私は何者なんだろうか」「何者にもなれていないこの世界のモブ……」「いやいや、人は誰だって自分の人生の主人公!」みたいな気持ちで過ごしている。

そんな私なのだが、最近縁あって未経験の仕事に就き、日々奮闘している。今までより「きちんとした」装いや振る舞い、ビジネスマナー、一般常識が求められる職だ。PCスキルもそう。業務知識は今必死になって頭に叩き込んでる真っ最中だが、ファッションに関しては清潔感があって、常識の範囲内で、どちらかというと控えめであれ、といった感じを求められている。

これ、どういうことかと言うと、地味で個性を主張しないことが好まれるということなのである。

今、令和やぞ……と思ってしまうが、クライアントに訪問する機会も多く、それがファッションや美容やクリエイティブな業界ではなくお堅めな企業だったりするので、我々は「目立たない」ことが良しとされるようだ。

ここで名刺入れの話をしたい。

私はこれまでいただきものの赤の革の名刺入れを長年使っていたのだが、美容業界やライターとして働いている時はそれで何の問題もなかった。次に名刺入れを買うならスマイソンのナイルブルーがいいな、なんて思っていたのだが、おそらく今の業種と取引先からするに赤の名刺入れなんてもっての外だし、スマイソンのナイルブルーですら派手な部類に入ってしまう。ずっと憧れだったのに残念すぎる。

しかし、名刺入れを早いとこ調達しなければクライアント訪問デビューの日がやって来てしまう。地場の企業の偉い人にご挨拶とか、人生で初めてなんじゃなかろうか。ライター時代にクリニックの医院長やエステサロン、化粧品会社の広報、個人サロンの経営者といった方たちとはやり取りしたことがあったが、それらの方々とはあまりにカテゴリーが違いすぎる。

私は調べた。好感度が高く、控えめな名刺入れを。

すると、色は黒、紺、茶がベターという記事が多かった。女性ならもう少し色の範囲を広げてベージュでもOKみたいな感じだ。

私は使う小物や身につけるものでテンションやモチベを上げたいタイプの人間である。お仕事用のバッグが黒、これからたくさん着るであろうジャケットはとりあえずベージュと紺を買った。パンツもベーシックなものを数本揃えた。このnoteの記事をアップしたら、とりあえずパパッと簡単にメイクをしてユニクロあたりで黒か紺か灰色のセットアップを調達しに行く予定だ。

そんなファッションなのに、小物まで地味な色とか耐えられない……!! 差し色大好きで、好きなものに囲まれて生きていきたい人間にはこの状況、結構、つらい。つらいが、そんな仕事を熟考の末、今後のキャリア形成や人生の立て直しのために選んだのだ。適応していくしかない。

これらの私の頭の中や感覚を、「そんなことで悩んでるの?」「名刺入れなんて適当でいいじゃん」「くだらないことに時間使ってるなぁ」と思う人もいるかもしれない。実際、これに近いようなことをこれまでにも言われてきた。もうこれは感覚の違いとしか言いようがない。こだわるか、こだわらないか、それだけだ。そして私はこだわる人間なのだ。こだわる人間にとって、適当とか間に合わせとかそういうのはなんだか収まりが悪くて気持ちが悪かったりするものなのだ。それでいて、パフォーマンスにも影響してくる可能性がある。自分の機嫌を良くするという意味でも、これは大事なことなのだ。

名刺入れについて調べに調べた結果、見た目はシンプル、開くとこっそりバイカラーが仕込まれているものを見つけた。ボナベンチュラというブランドのスリーブ付きカードケースだ。



私はグレージュ×イエローに一目惚れしてしまった。元々イエローは大好きな色。そしてグレージュも大好きな色。落ち着いた色味だし、これならばお堅い企業相手にもさらっと出せるし、中のイエローは閉じれば見えないしで◎

しかし、お値段がお値段なので実物を見て買いたいと思い、実際に店舗に足を運んでみることにした。

……ところが。

ショップリストには博多阪急が載っているのに、博多阪急に行っても店舗がないのである。

この時の私の気持ちは、

公式HPを確認したのにそんなことってある??

阪急のフロアガイドのどこを見ても載ってないぞ……ひょっとしてここは阪急じゃないのでは??

じゃあ今私がいるのはどこなんだ!!

そんなわけで、阪急〜アミュプラザ間をぐるぐる歩き回り、お店に辿り着けず、脚もいい加減に疲れたので「もうどこかでそれなりにきちんとした名刺入れを買って帰ろう……」と諦めモードになったのである。

一応阪急のホームページでも確認してみたが、どこにもショップの記載はなかった。もしかしたらフロアガイドに空きスペースらしきものがあったから最近撤退したのかもしれない……。ネットで調べても結局のところ何も分からず、お店にたどり着けなかったという事実だけが残った。

ネットで注文しても、おそらく届く前に名刺入れが必要になるタイミングの方が早くやって来てしまう。

そんなわけで、私は「妥協」せねばならなくなった。それでも、どうせなら気にいるものをと思っていたのだが、条件に合ってなおかつ自分が気にいるものとなるとなかなか巡り合えない。しかも、百貨店やバラエティショップ、文具店をハシゴして疲れもピーク。すでに1万歩以上歩いていた。

ここにも気にいるものがなかったらどうしよう……そんな思いで最後に行った百貨店で名刺入れを見せてもらう。他店舗と違ってスタッフさんがズラーっとケースの上にあらゆるブランドの名刺入れを並べてくれたのがなんとも壮観で、「選び放題だ!!」とこれまでだだ下がりだったテンションが一気に上がった。それと同時に、これだけしてもらったらここで何かしら買わないと……という気持ちにもなった。あと、ちょっとばっかしスタッフさんからの圧も感じた気がする(あくまで個人の感想です)。

そんな思考と疲れと焦りの中で選んだものは、見た目も触り心地も良いものだったのだけど、私が持つにはブランドの対象年齢の層が少し若い気がした。ちらっとそんな気持ちが過ったのに、「ここでいい加減決めなければ!」という思いに駆られて、買ってしまった。黒の革の名刺入れを。グレージュ、どこ行った。

予感はあったが、案の定というか、素敵なデザインできちんとしたものなのに、自分に馴染まない現象が起こった。ショッパーをぶら下げて帰りながら、私の気持ちはちっともウキウキしていなかった。それに、心の中の小さな私が抵抗しているのがわかった。グレージュが良かった。せめてベージュかキャメルでしょう。だから私はそんな自分に言い聞かせるように「これだっておしゃれじゃん!」「素敵じゃん!」「内側にブルーが入ってて可愛いじゃん!」と訴えた。訴えたのだが……ここで採算度外視の私が出てきてこう言った。

「そんなに言い訳を並べるってことは、本当は心から気に入ってないんでしょ。今日買った物はスペアにすれば?」

いやいや、見せてもらった中で一番好みのものを選んだよ! 他にグレージュやベージュのものもあったけど、柄とかロゴの主張が私の好みじゃなかったし……! それにあと数日後にはクライアント訪問を控えてるし悠長なこと言ってられないんだって!!

……でも、スペアにすればいいのか。
そっか!! その手があった〜〜!!

そんなわけで、私はその日の帰り道にネットでボナベンチュラのスリーブ付きカードケースをポチッと購入したのだった。






ここまで読んでくださった方の中には、呆れてる人もいるかもしれない。私の計画性のなさを笑う人もいるかも。だから私は今回のことをリアルでは「わかってくれる」人にしか打ち明けないつもりだ。だってこのこだわりを軽んじられたくない。馬鹿にされたりしたら傷ついてしまう。日本の片隅には私のような人間もいるのだ。

今、私の手元には二つの名刺入れがあるわけだが、気分や訪問先によって名刺入れを使い分けるのもいいし、用途によって使い分けるのもいいかな、なんて思っている(あ、クライアント訪問デビューは無事終わりました)。

ちなみに、今もこのこだわり癖であれこれ見て回って未だに購入に至ってないものがある。シャーペンだ。日頃はフリクションを愛用している身なのだが、多くの書類を扱う仕事になって、シャーペンも持っていた方が何かと便利そうだ。

そこでロフトやハンズや文具店をいくつか見て回ったのだが、なかなかピンとくるものに出会えない。シンプルなタイプで色は白やベージュ、あるいは文具だから好きな色でもある水色やラベンダー系の色でもいいかなと思っていたのだが、なかなか好みのものが見つからない。特に急いで必要なわけでもないし、もう少し見て回ってそれでもこれだというものが見つからなかったら最終的には無印かな、と思っている。私の中で無印良品とユニクロはいざという時の駆け込み寺と化している。ありがとう。

休職から退職、転職をして毎日がとにかくめまぐるしい。毎日ひとつひとつ新しい仕事に向き合って、自分の中に刷り込ませていく作業で今はまだ手いっぱいだけれど、幸いなことに丁寧に教えてもらえているし、先輩が歩み寄ろう、理解しようとしてくださるのがありがたい。

それに、投げっぱなし、やりっぱなしの環境ではない。変にプライベートを詮索されることもなく、メンタルも安定している。これからたとえば仕事で何らかのミスをしたり、目標などの負荷がかかってくるとどうなるかわからないが、今のところは何とかやっていけている。それだけで、ちょっと自信になったりする。

私の人生の立て直しが、このままどうにか上手くいきますように。

日々前向きだったり、後ろ向きだったり、鳥になりたくなったりしながら、今日もなんとか、生きてます。

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